市民派議員アクションフォーラム(その二)

女性学の上野千鶴子が提示する自治体政治の未来

 つづきは上野千鶴子さんってだれ?からいきましょう。1948年富山県生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科教授。専攻は女性学、ジェンダー研究。広い視野から資本主義社会で性差がはたす役割を論じる。社会の動きを鋭くとらえ、明快に説く理論家。
 フェミニズムの旗手と言われ続けて久しいですが、最近では高齢社会問題でも登場することが多いですね。著書に『近代家族の成立と終焉』『ナショナリズムとジェンダー』『差異の政治学』など。 私は『スカートの下の劇場』(1989)で”目の前が開けた”感じがして、それ以来の上野ファンです。
 上野さんは「現在国が一律に進めようとしている合併はおかしい。合併して大きくなる時代ではない。自治体もリストラが必要、アウトソーシング=事業(行政の仕事)の外部委託ではもはやなく、事業体委託だと。住民が必要とする事業ごとにプロジェクトを組み、公募方式、実行委員会方式で進める、必要な人材はその時々に採用すればよい、そして事業が完了したら解散する。その結果、自治体の基本的機構はダウンサイジング=スリム化・小規模化できる。そんな自治体のリストラ=再構築に欠かせないのは、地域に存在するニーズとリソース(人的な資源やスキルや情報)を効果的に組み合わせることができる能力を持った職員。デスクワーク(役場)と平行して、一層フィールドワーク(地域)に長けたプロデューサー型の自治体職員が求められる」また、「早晩、県も無くなるだろう、その先は道州制かといえばそんなものではなく、自治体連合の時代が来るだろう。自治体連合は隣近所だから一緒にという発想ではなく、各自治体の特徴、得意な分野、苦手な分野などを考慮し、相乗効果や補完効果が得られるような相手を選べばよい」など、実に説得力のあるお話をされ、目からウロコが何枚も落ちた気がしました。
 穂高町はといえば、住民の行政依存の傾向と、それに対する行政の住民不信が無いとはいえず、この住民と行政の関係を変えるためには、そのようなプロデューサー型の職員がぜひとも必要。穂高町が町村合併の押しつけをハネ除け「小さな自治体」として、自治の質や行政水準を低下させることなくやっていくには、それが大きな課題になると思います。
 写真は上野千鶴子さんの近著(中西正司さんとの共著・岩波新書)、今回のフォーラムでも話題になった”当事者主権”の本です。おすすめ!