安曇野菜園第6期は黒字転換ならず3900万円の赤字

前年対比で約2856万円の損失増加

▲市民タイムス記事 2009年11月26日
▲市民タイムス記事 2009年11月26日
 安曇野市のトマト栽培第三セクター「安曇野菜園」(旧三郷ベジタブル)の第6期決算について、09年11月25日開かれた安曇野市議会全員協議会で報告されました。この前の第3四半期の経営状況の報告があった時点で、安曇野ルビー導入によって黒字化する計画は実現不可能、3800万円の赤字決算となる見通しとの話でしたが、はたして第6期決算は3908万円の赤字、前年対比で約2856万円の損失増加。トマト生産・売り上げともに、またしても計画を下回り、借金はさらに増えました

 新たに社長に就任した村上副市長は、安曇野菜園がこれまで出し渋ってきた経営実態について、徹底して情報開示すると明言。宮澤市長も菜園の監査に外部監査を入れる考えを示し、経営の透明度を高めることが会社再建に重要と強調しました。

 開業以来5期赤字決算で破綻寸前のこの三セクを再建するために、「徹底して情報開示する」「経営の透明度を高める」、これが重要だと言われてもピンとこない人も多いでしょう。そんなことは経営改善の基本のキで、現状を正しく認識していなければ打つ手も見えてこない。当り前のことだからです。

 しかし、それが全くできていなかったのが安曇野菜園です。
 3年前に経営危機が発覚したのは、仕掛品に2億4000万円を過大に計上し資産を大きく見せかけ、ムリヤリ黒字決算にしたからです。「黒字なのに、どうして施設使用料が払えないんだ、おかしいじゃないか」となったわけです。そんな粉飾まがいの決算書をもとにして作った経営改善計画書など、「絵に描いた餅」でしかありません。
 市と議会に対しては、4半期(3か月)ごとに実績報告するという約束もしたのですが、締めから2カ月以上たたないと報告が上がってこない。そんな遅い報告を聞いて評価したところで、もうすでにトマトの現場は次の段階に移ってしまっている。対策はいつも後手後手で、経営改善どころか混迷の度を深めるばかりでした。
 三郷村時代にこのトマト事業を計画・推進した村長と商工課長が、安曇野市の副市長と産業観光部長となり、自己保身の心理からか、現実を直視することができないまま、経営改善の「掛け声」だけに終始した3年間でした。副市長を任命した平林前市長も、また、同じでした。

 宮澤市長、村上副市長(菜園社長)が「情報開示を徹底する」と確約したことは、「何をいまさら」という感は否めませんが、これまで出来ていなかったのですから、やはりそこから始めるしか道はありません。これは、第7期にして初めて、経営の実態・現実を直視する決意をしたということです。この決意があればこそ、そう時間はかけずとも、自ずと安曇野菜園存廃の結論は導き出せるのではないかと思います。
 ところで、西山前副市長は常勤の取締役・相談役として残りました。この人事には否定的な意見も聞きますが、私はこれでよかったと思っています。西山氏が副市長を退職したことで、自動的に安曇野菜園会長職も退くことになれば、今後いっさい安曇野菜園とは無関係となり、責任問題がうやむやになってしまうからです。(待遇についてはこれから検討するとのことですから、要注意ですが)

 なお、監査報告(下記リンク先の決算報告書の最後のページにあります)の監査役所見には、納得しがたいものがあります。
 一つには、「監査した結果は、出納事務等何れも適正かつ適法であった」という点。栽培技術者でありS物産(トマト販売)の役員である者が常務取締役となっており、役員報酬に相当する金額を販売手数料として受け取っているのですが、これは税法上の問題があるのではないか。そうでなくとも、不透明な契約関係は適正とは言い難いものです。
 二つには、「増資等を含めたキャッシュフローの抜本的な改善が必要と思われます」という点。これは安曇野市が増資するということだと思いますが、増資はいけません。増資を許したら、また甘えが出て経営はたるみます。増資した分は負債の穴埋めに消えるだけでしょう。
 三つめには、「極めて厳しい状況となっています」と言っているだけで、具体的に第8期目から支払うことになっている施設使用料2500万円や、3年後に県の農業開発公社から土地(現在は借地)を買い取るための費用1億7000万円余が必要といったことにはふれていないこと。

安曇野菜園株式会社第6期決算報告書