市民の会が東京高裁判決の報告会

安曇野市に上告せぬよう求める/「三郷ベジ」住民訴訟

《「三郷ベジタブルの経営改善を望む市民の会」の横地泰英さんのレポート》

 安曇野市のトマト栽培第3セクター安曇野菜園(旧三郷ベジタブル)をめぐる住民訴訟について、東京高裁判決の報告会が6日夜、安曇野市であった。控訴人・小林純子市議、代理人の中島嘉尚弁護士らが、3金融機関と市が結んだ損失補償契約を無効とする高裁判決の意義と、3年間にわたる訴訟の取り組みを説明。安曇野市が高裁判決に従い、上告せぬよう求め、市民がその意思表示することを呼びかけた。

 中島弁護士は「自治体と金融機関の補償契約が財政援助制限法3条に違反し無効であることを、これほど明確にした判決は珍しい。裁判長が『正面から判断した』とわざわざコメントしたのも判決への並々ならぬ熱意を物語る。市は判決を尊重し、従ってほしい。損失補償契約に支払いをやめて、金融機関が提訴してきたら、争えばよい。トマト事業はもともと旧三郷村村長が始め、そのあとの合併で安曇野市になった。三郷村以外の自治体には『なんで私たちが背負わなければいけないの』という住民感情がある。宮沢市長は、払うなと言われるなら、払わなければよい」とのべた。

 高裁判決は、損失補償契約が営む機能は、保証契約と実質同じだから、財政援助制限法3条が適用されるという住民側主張を認めた。法律に反せば無効となる。中島弁護士は「訓示規定だから無効ではないという主張に対して、効力規定だとしている。ただ、すべて無効かというと、有効な契約もある。公益性のある事業の損失補償で、銀行も公益性を認めて融資した場合だ。たとえば、鉄道事業を3セクにし、自治体が地域の足を守るため損失補償契約をする場合などは有効になりうる。では、安曇野菜園は公共性があるか。判決は公共性を認めていない。損失補償契約は無効、違法な支払いはできない。従って我々の支払い差し止め請求は理由がある」と分かりやすく説明した。

 判決は、金融機関へも反省を迫るものだ。だが判決は、金融機関が支払い請求訴訟を起こすことについてまで、既判力は及ばないとしている。中島弁護士は「請求が認められるのは、信義則に反する場合であり、信義則の中身とは、公共性についての銀行の理解だ。財政援助制限法で禁止されていることを知っていたか。融資する側の責任も問われる。請求は認められる場合も認められない場合もあるだろう。自治体は、任意に払ってはいけない。強制執行を受けてから払いなさいということだ」と解説した。

 これに先立ち、控訴人の小林純子市議が報告会冒頭であいさつし、住民監査請求から1審提訴、控訴にいたる4年間の流れ、経緯を説明。市民の支援に感謝した。「市議になって一番大事に考えていたのは、どう働いたら、何をしたら市民のためになるか。菜園も、どうしたら市民のためになるか考えました。でも、このごろになって気付きました。市民のためなんてカッコイイものではなくて、自分のためだったんじゃないか。まるで捨てるように税金が無駄遣いされ、まちの暮らしが停滞するのを見過ごしてしまう、そんな自分が嫌だから、なんとかしたいから頑張ったんだと。自分のためが市民のために役立つならうれしい。そう思います」と心情を語った。

 諌山憲俊・市民の会代表世話人は、住民訴訟への支援を感謝。これまで計86万円のカンパを受け、訴訟費用すべてをカンパでまかなえたことを報告。「浄財だけでやりとおし、いい前例をつくれた。全国で3セクは行き詰まっている。どんどん裁判になるだろう。貴重な判決になる」と述べた。

 報告会は穂高の安曇野市中央図書館で急きょ開かれた。約30人が参加。安曇野市議も8人が参加し、質疑にも加わった。
(報告・横地泰英)