菜園の清算は先送り/「まず譲渡先探し」

安曇野市長、あいまい答弁繰り返す

《「三郷ベジタブルの経営改善を望む市民の会」の横地泰英さんのレポート》

 安曇野市議会は2010年9月17日、一般質問で小林純子市議が第3セクター・安曇野菜園(旧三郷ベジタブル)の処理問題について質した。市と金融機関の損失補償契約を違法・無効とする東京高裁判決を受けて、小林市議は「譲渡先が見つからぬかぎり、菜園は清算しかない。8期中(来年8月まで)の処理も考慮すべきだ」と迫ったが、宮沢市長は「倒産すれば、一気に14億円を超す負担がのしかかる。財政上きびしい。いまは状況打開に全力を上げる」と具体的な展望が見えない答弁を繰り返した。

 この質疑は、前日に宮沢市長が、安曇野菜園が市に払う施設使用料(年間2500万円、26年間で計7億5900万円)について、全額免除を検討することを表明したことを受けて行われた。小林議員は「菜園の経営不振が表面化して3年。これほどの危機感で真剣な議論をしたことはなかった。市は100人の雇用確保を強調し、上告は仕方ないと言う。しかし経営不振は4年前からで、損失補償契約に基づき借金しては資金繰りをしてきた。破綻処理を先送りすれば、それだけ赤字は増える。高裁判決がでたことと何の関係もない。市長は6月議会で菜園経営が失敗だったことを認めた。先は清算しかない」と追及。市長は「経営はたしかに以前から厳しい状況だった。なんとか譲渡先を探す努力をしている。見通しが立ったとはいえない」と繰り返した。
 小林議員は「上告すれば、宮沢市長・村上副市長は、平林・西山前執行部の責任を背負い込む。上告は、最も責任を負うべき人に追及が及ばぬことになりかねない。申立て受理には時間がかかるかもしれない。今からでも遅くはない、取り下げるべきだ」と指摘し、この問題追及を終えた。

「情報公開の目的失落」/市長、本庁舎プロポーザルで陳謝
 小林純子議員はつぎに、本庁舎建設の基本計画策定業務で、担当部局の責任者が企画競争(プロポーザル)の委託事業について公正性・透明性が疑われるずさん処理をしたことを取り上げた。「原本を偽って改造した企画提案書を情報公開した。改造は全体で10数カ所に及ぶ。職員も認めた。これは公文書偽造であり、市民の信頼を裏切り、情報公開制度の根幹を揺るがす」と強く迫った。宮沢市長は「職員に聞き取り調査をした。全く初歩的な事務の誤りだった。情報公開制度の目的を失落し、もうしわけない」と陳謝、文書管理を適正化し、情報公開制度に適切な対応をすると約束した。

 しかし、小林議員が「処分は受けているのか」と追及すると、「過日処分した」とラフな答弁。小林議員は「指導的な処分でお茶にごしか」と突き放し、「改造し原本を偽った。墨塗りという(個人情報保護の)方法を知らなかったことはあり得ない」と、職責を含めて踏み込み、その後の審査方法や採点表の扱いがいい加減なものであり「官製談合を疑われかねない」と公正性、透明性の確保について質した。市長は「業務当局にガイドラインを定め、より公平、公正なプロポーザルにすることを指示した」と説明。二木企画財政部長は「これまで担当課ごとに要領がばらばらで、審査会もなかった。プロポーザル実施ガイドラインを策定する」と述べた。小林議員は「プロポーザルが、かなりテキトーにやられている印象だ。氷山の一角かもしれない」と指摘した。

 この後小林議員は、市本庁舎建設基本計画が11月中に示され、その後市民へ配布されることに関わって「市は本庁舎建設の住民意思は確認済みとしているが、少なくとも2008年12月アンケートでは、建設の賛否を問うていない。基本計画を知らせるのに併せて市民アンケートをしてはどうか」と最後の質問をした。
 宮沢市長は「合併協議会当時から、本庁舎は建設する方向だった。審議会でも必要性が叫ばれ、前議会の特別委でも同様に必要性が指摘された。過日は反対請願も委員会で不採択だった。必要最小限の庁舎は必要だ」とこれまでの経緯を述べた上で「執行部と議会の2元代表制が一致しているのは民主主義の原点。アンケートするつもりはない」と言い放った。

 市長の答弁はどの問題でも、事柄の本質、問題の核心に迫らず、逃げの姿勢が目立った。本庁舎建設と3セク処理がもたらす財政硬直化、欧米・日本の深刻な景気停滞の影、地球規模の資源問題など、わるすぎる状況下に80億円にのぼる巨費負担が「大丈夫だ」と理解できる説明はついになかった。(報告・横地 泰英)