政務調査費は本来どのように使われるべきか

議会改革検討委員会・政務調査費分科会で議論されていること

安曇野市議会の政務調査費マニュアル
安曇野市議会の政務調査費マニュアル
 22日には1ヶ月にも及んだ3月議会が閉会。ほっと一息したいところでしたが、安曇野市の諸課題はもちろんのこと、3.11東日本大震災の被災者支援のこと、原発事故など緊張が解けぬまま、28日には議会改革検討委員会がありました。

 この委員会は1年半ほど前に特別に設置されたもので、【議員定数】と【政務調査費】の二つの分科会に分かれています。私は政務調査費分科会に属し、これまでに5回の委員会を重ね協議を重ねてきました。議論の中心は(1)月額7,500円(年額9万円)の金額は妥当か、(2)政務調査費の使途は適正か、の2点。
 そもそも政務調査費とは何ぞや、本来どのように使われるべきか、さすれば我が安曇野市議会の実情をどう見るか、ということから始まって検討を進めてきました。県内の市町村議会の政務調査費の現状や、全国的に多発している問題事例(住民監査請求や訴訟)も知ったうえで、税金から交付される政務調査費のあり方を模索した1年間でした。

 今回の委員会で、やっと一定の方向でまとまりそうなところまで漕ぎ着けました。基本的には、「税金の使い方として市民の納得を得られるもの」であること。そして、納得を得るためには政務調査費の情報公開が前提であること。
 具体的には、政務調査費をどう使っているのか、議会事務局へ行けばいつでも見られるようにしておく、ということになります。それも収支報告書だけでなく領収証まで公開することにしておけば、常に市民の目にさらされ、評価も批判も直接に議会に届き、政務調査費の適切な行使につながる。その取り組みが真摯になされていけば、市民の方から「もっと政務調査費をつけてもいいのでは」という声もあがろうというもの。だから、政務調査費の金額が多いか少ないかの議論は後からついてくる、という考え方です。
 なかには「市民のためになる良い政策提案をするための調査活動には、それ相応の費用がかかる。現状7,500円では足りないことは明らか。増額してもらい、さらに活発な議員活動につなげたい」という、いわゆる正論もありましたが、少数にとどまりました。

 こうして議論の方向は定まったものの、5回の委員会を通してずっと引っ掛かっていたことがあります。それは、基本中の基本「政務調査費とは本来どのように使われるべきか」ということです。じつは、地方自治法にも条例にも「議員の調査研究に資するため必要な経費」とあるだけで、具体的な規定はありません。「議員たるもの適切に使うはず」という性善説が前提になっているので、よく言えば柔軟な対応が可能、悪く言えばイイカゲンな扱いをしてもお構いなし。仮に使途の適不適を問われたとしても、最終的には裁判所の判断をまつしかないというもの。
 
 安曇野市議会では、県議会の「政務調査費マニュアル」(注1)をお手本に運用していますが、このマニュアルに基づいてもなお市民の目から見たら疑問点があるので、さらに細かいところまで決めておこうということになりました。その議論のなかで最も判断が分かれたのが「会派や議員個人で発行している通信(私の場合は「種まき通信」年4回発行)に政務調査費が使えるか」という問題です。
 議会では議事録も公開し、市議会だよりも発行しているので、議員個人の通信で定例議会の報告などしても重複した情報提供となり、わざわざ政務調査費を使って発行するのは適切でない。とか、現在発行されている通信(注2)は議員活動の報告というより、個人的なピーアール、はっきり言って選挙向けの売名行為、政治活動(注3)だから、政務調査費を使うのはおかしい。という意見が多数を占めました。

 市民に向けて、議員一人ひとりが「わたしはこう考えて活動をしています」、「こんな調査をして政策提案につなげました」など、情報発信することは議員の重要な仕事であると考えている私には、通信発行に政務調査費は使えないとは理解しがたいものがあります。それも、通信を発行していない議員から言われるのですから、よけいに訳が分かりません。
 私は、このホームページでも広報活動をしているわけですが、紙媒体で作る通信が政務調査費の対象にならないとすれば、インターネットで広報することにも政務調査費は使えないということになります。これまでは、このホームページのサーバーやシステム(注4)の費用の一部は政務調査費で賄ってきましたが、それもダメということになりそうです。

 年額9万円の政務調査費の範囲では、当然ながら調査そのものに重点を置いた使い方を優先すべきなので、議員個人の情報発信は自費で行うことにやぶさかではありませんが、しかし、そのことを口実にして議員の情報発信が停滞するようなことがないようにしなければなりません。「9万円ばかりのカネじゃ、通信の発行なんかできるわけない」という言い訳が通るようになっては、市民にとってはマイナスになってしまいますから。

(注1)田中知事時代に県の情報公開が一気に進み、県議会でも政務調査費の使途に不正なものが多数あることが発覚した。このため、長野県議会では政務調査費の使途の明確さと透明性を高めるため「政務調査費マニュアル」を策定した。

(注2)このところ通信を発行しているのは、わたしの知るかぎりでは共産党安曇野市議団、会派平(たいら)、相田議員(無所属)、小林純子(無所属)です。

(注3)このように政治活動と選挙運動と混同して理解している人は残念ながら多い。

(注4)ホームページ作成・管理、スケジュール管理、メールマガジン、メーリングリスト等の機能を有するシステムを利用している。