歯切れ悪い市側書面、三郷ベジ訴訟大詰め

三郷ベジタブル関連住民訴訟控訴審第3回口頭弁論に向けて

 明日3月10日は三郷ベジタブル関連住民訴訟の第3回口頭弁論で、東京高裁へ行かなければなりません。ところが、今日は大雪注意報が出るありさまで、高速道で行けるのか、電車で行った方が確実か、いやもしかしたら両方ともアウトかもしれない、などとヤキモキしているところです。開廷の時刻は午後4時なので、出発は午前10時か11時でも何とかなるのが救い、とにかく天候の回復を願うばかり。
 
 さて、それはそれとして、第3回口頭弁論へむけて、控訴人(小林純子)と被控訴人(安曇野市)の準備書面が出そろったので、「三郷ベジタブルの経営改善を望む市民の会」の横地泰英さんにまとめていただきました。

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◆説明できぬ指定管理/歯切れ悪い市側書面/三郷ベジ訴訟大詰め
 東京高裁で3月10日に開かれる三郷ベジタブル関連住民訴訟の第3回口頭弁論へむけて、控訴人・小林純子市議のと被控訴人・安曇野市の準備書面が出そろった。対照的な内容で、控訴人側のていねいな論旨展開に対し、被控訴人側準備書面は、説明不足でバランスの悪さも目立つ。議会などで十分な説明をしないできた「つけ」を露呈し、被控訴人の準備書面への反論を手掛かりに「指定管理」の論理を展開しようとしている。前回準備書面では、使用料の不徴収や指定管理委託料の支払いなど、市民負担の増大すら匂わせたが、今回はさすがにできなかった。無理な説明で自己矛盾に陥ることを避けたようだ。

 被控訴人(安曇野市長)は公の施設使用料が条例で規定されていないという、行政訴訟の骨格部分について、準備書面(2)で「本件施設の使用は指定管理者とされた者が行う管理・占有に基づくものであり、三郷ベジタブルが本件施設でトマトの生産販売していることを、公の施設の利用の問題であるとする控訴人の前提自体が誤っている」と主張。指定管理の中身については、具体的な説明を避けた。前回準備書面(1)では、「使用料の徴収を行わないことも行政裁量で認められる」「指定管理者(行政)が施設管理の費用を全額負担するか、全く負担しないかなども行政裁量で決まる」など相当に刺激的な部分があったが、今回はなかった。もともと三郷ベジの指定管理について、これまで議会などでこのような説明をされたことはないのだ。

 準備書面(2)はさらに、「旧三郷村が当該議会において、三郷ベジタブルが6億8千万円余に利子分を加えた金額を旧三郷村に10年間で支払う、年間7200万円が施設の使用料となり、これを『賃料』として説明したこと…を了解して補正予算案を議決したことは否認する」とした。この否認のミソは、「当該議会において」という部分にある。行政から使用料や賃料についての説明があったことは、1審準備書面で控訴人側から提出されているが、15年3月の三郷村議会の議事録自体が判然としない。被控訴人側はそこをとらえて使用料や賃料の説明内容まで否認してしまった形だ。

 施設使用料の支払い猶予や減額については、「平成20年1月23日の市議会全員協議会において被告理事者から議員に対し経営改善計画書を説明し、質疑応答を含め2時間以上の協議を行っている」と、説明を尽くしたかのような表現をしている。議会本会議ではなく全員協議会であることで、すでに底が割れている。

 この全員協の議事録はまさに控訴人の1審準備書面にあり、そこで西山馥司・前副市長(旧三郷村長)は三郷ベジタブルの設立について「国のほうの補正予算債がつきまして、3億2千万円というの。…6億8千万円というのは、起債返還額の10年間、約7億円だというようなことで、年7千万円だと。大丈夫かといったら大丈夫だと」と年間7千万円の施設使用料が設定された経緯を語っている。15年3月の旧三郷村の選択は、指定管理の中身を審議することではなく、甘い経営見通しに乗っかっただけであることを、はからずも示しているのだ。

 準備書面〈2〉は、三郷ベジタブルが施設を管理・占有する根拠は法244条による指定管理者の地位に基づくものである、とする。したがって被控訴人との法律関係は賃貸借関係に基づくものではないから「賃料」ではなく、公の施設を利用しているわけでもないから「使用料」でもない、と主張する。賃貸借契約を結んでいるのに賃貸借関係でないという法律論を、公判で行政が主張していることを、どれだけの安曇野市民が知っているのだろうか。

 「使用料」については、さきの平成20年1月23日の市議会全員協で示された三郷ベジタブル経営改善計画の冒頭で西山・代表取締役が「売上確保と経費節減により安曇野市への施設利用料支払いを可能とし、未払い分となっている利用料を本計画により支払います」と約束している。施設を利用し、その料金を支払うと説明しているのだ。三郷ベジタブルについては、ずっとそう説明してきた。それを変えて「指定管理」に重心を置く舵を切った。09年12月21日の控訴審第2回口頭弁論に提出された被控訴人準備書面(1)からである。

 三郷ベジタブルの経営問題には10年にわたる経緯がある。もともと粗雑であいまいな計画であり、その受け入れ決定、経営の中身もラフであいまいだった。意図的にあいまいにしていたふしも濃い。賃貸借契約、使用料、経営改善計画による猶予や減額、市議会全員協による是認。いっこうに改善されぬ経営不振。膨らむ赤字。その赤字すらもあいまいさを増している。

 20億円の事業。破綻処理にはそれ以上の費用がかかる。すべて税金である。

小林純子2010年2月12日提出準備書面

安曇野市2010年3月10日提出準備書面