安曇野市のトマト栽培第3セクター安曇野菜園(旧三郷ベジタブル、村上弘志社長=副市長)を、北海道の民間農業生産法人エア・ウォーター農園が購入、指定管理者に指定する案が2011年2月15日、安曇野市議会で可決された。
この議案が可決されたことについて、宮沢市長は「大変喜ばしいこと」と安堵感をにじませました。議会も「よかった、よかった」「助かった」という空気が支配的で、「小林さん、まだ反対するのか」「ここまで来たら、しょうがないじゃないか」と言葉を掛けられました。けれども、私はこれで一件落着とはとても思えず、「どこまで続くぬかるみぞ」の思いが強いです。
この議案に反対するのは私だけかも知れないと思っていたが、ぱっと見3人ぐらいは起立(賛成)しなかったもよう。全会一致で議決したわけではない、ということが先々重要性をおびてくるかもしれません。
以下、2月15日の臨時議会での私の反対討論(概要)です。
安曇野菜園の売却益3億800万円で、すべての債務は解消する。また県の農業開発公社から借りている農地も1億5074万円でエア・ウォーター農園に購入してもらえる。安曇野菜園としても市としても好条件の契約内容である。
しかし、トマト栽培施設は市の所有のままであるのに、土地がすべて(一部個人所有はあるが)エア・ウォーター農園のものとなれば、指定管理者制度を用いてトマト栽培事業を続けることには不安が残る。
上下の所有が分離されてしまう、栽培施設自体も市所有のガラス温室とエア・ウォーター農園が買い取るその他部分とに分かれてしまう。指定管理者としての管理運営がうまくいっているうちはいいが、なかなか軌道に乗らない、儲からないとなれば、指定管理者の解約・取り消しもありうる。そうなったときに、このような分離分割された状態ではトラブルのもとになる。
指定管理の協定書を見ても、土地の利用や施設の修理、改修などの費用負担など、不確定要素が多すぎる。たとえば、これまで訴訟の原因にもなっていた「支払う気がなかった施設使用料」(納付金)については、「市は指定管理料を支払わない」が、エア・ウォーター農園も「市に納付金を納めない」と書かれている。そのまま受け取れば、安曇野市の財政負担は発生しないことになるが、これはあくまでも「指定管理者基本協定書」であって議会の議決なく変更することができる。
旧三郷村ではこの協定書すら作らず、これまた議決のいらない賃貸借契約により施設使用料を定めていた経過がある。当初7138万円だった使用料は安曇野市長の決済で2500万円に減額され、今後はゼロとなったが、議会・市民には「減額しました」「タダにしました」という報告だけですまされてきた。
民間経営に期待するところが大きいと思うが、このまま指定管理者制度でやっていくことは、けっしていいことではない。これまでと同じ「問題の先送り」になる。指定管理者制度とは、正確には「公の施設の指定管理者の指定制度」であって、そもそもトマト栽培施設が「公の施設」なのかという問題もある。
今回、指定管理者に選定された会社がトマト栽培に大きな意欲を示していることを考えると、施設を市の所有として残すのではなく、すべてを無償譲渡し(注1)市から完全に切り離すのが最善と考える。
(注1)トマト栽培施設は国の補助金10億円を入れて建設したものなので、有償で譲渡する場合は補助金を返還しなければならない。無償譲渡ならば、市は補助金を国に返還しなくてもよい。ただし、譲渡を受けた会社は資産贈与とみなされ課税の対象になるので、おいそれとはいかない事情もあるだろう。