(問1)訴訟費用の申し立ての手続きと、金額が10万8020円に確定した経過について
(問2)住民訴訟で敗訴した市民に自治体が訴訟費用を請求することは、これまでほとんどなかったにもかかわらず、安曇野市が例外なく請求する方針を打ち出したことについて
(問3)安曇野市がこの裁判に費やした721万円と訴訟費用10万8020円請求の関連性について
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(答弁の概要)判決に「訴訟費用は被上告人の負担とする」とあるとおり、代理人弁護士と相談して請求することにした。裁判所に訴訟費用として15万6500円の確定処分の申し立てをした。計算ミスがあったため10万8020円に減額されて裁判所からの処分が決定。
請求できるにもかかわらず請求しないのは権利の放棄で、地方自治法の『公金の徴収を怠る事実』に該当し、税金を無駄にすることになる。
「請求は全国でもまれ」ということであっても、そこは基本的に「各自治体の判断」であり、市長の権限の範囲であるので安曇野市の方針とすることに問題はない。例外なく請求していく。
裁判費用の721万円には、弁護士費用や成功報酬も含まれている。訴訟費用10万8020円は、裁判費用として法律で決められた範囲での印紙代、旅費日当、書類作成費などである。
(再質問 問1)答弁にもあったとおり、判決に「訴訟費用は被上告人の負担とする」と書いてあるのであって「支払え」と書かれているのではありません。「訴訟費用は被上告人の負担とする」という判決だけでは、支払い義務を負わせる事は出来ません。
裁判所に改めて「訴訟費用確定処分の申し立て」をしなければ、請求できませんし支払い義務も生じません。この確定処分の申し立ては、裁判所へ行いますから、別途手続きの費用がかかります。
したがって、自治体は訴訟費用の請求にあたって、裁判の経過を踏まえ自ら正すべき点はなかったか、訴訟費用を請求することで争いを蒸し返すことにならないか、請求できる訴訟費用とその手続きのために要する弁護士費用との兼ね合いはどうか等を考慮して、訴訟費用を請求するかしないか検討し、そのほとんどが請求しない道を選んできた経過があるのです。
つまり、「訴訟費用は被上告人の負担とする」と判決に書かれていても、請求するかしないかは市長の権限の範囲であり、「請求できるにもかかわらず請求しないのは権利の放棄で、地方自治法の『公金の徴収を怠る事実』に該当する」「住民監査請求を起こされるかもしれない」という心配はまったくないと思いますが、そうではありませんか?
(再質問 問2)前例、慣例を重視する自治体が、全国でも前例が極めて少ないなか、なぜ安曇野市は例外なく請求することにしたのか。
「前例、慣例」ということでいえば、この前にも述べたように、自治体は住民訴訟の意義に配慮して、訴訟費用は請求しない道を選んできた経過があります。全国市民オンブズマンの活動に関わる多くの弁護士や県下の法曹関係者に聞いたところでは、訴訟費用額確定の申し立ては、メリットがあまりないことから住民訴訟に限らず通常事件でも、ほとんどなされないとのことです。
安曇野市が訴訟費用を請求することは、自治体行政の常識からも外れているだけでなく、裁判の常識から外れているといえますが、それでも請求するのですか。
(再質問 問3)市長は裁判費用が721万円もかかった。貴重な税金を費やしたということから、わずかであっても取り戻せるものは取り戻したいと言っていますが、そもそも721万円もかかった事情については説明がありません。訴訟費用が10万8020円と算定された事情はわかりましたが、裁判費用が721万円もかかったのはなぜか。
上告したことにより結果として500万円もの裁判費用がかかりました。上告の申し立ては受理されず、一度も法廷は開かれなかったにもかかわらず、弁護士に成功報酬が支払われたことにより500万円ものおカネがかかってしまったのです。
JAあづみは昨年5月20日、安曇野菜園から損失補償の債務が返済された直後に、上告の補助参加を取り下げました。なぜならば、借金を返してもらいさえすれば損失補償自体が消滅するので、わざわざ高い費用を払って上告する必要がなくなったからです。
安曇野市も同様に損失補償の支払いの必要が無くなったのだから、そこで上告を取り下げていれば、裁判費用が721万円にもふくらむことなかったはずです。
市としては、訴えられたら受けてたつしかないのだから裁判費用は「必要経費だ」と言います。ならば、市民の側も、地方自治法に認められた住民訴訟の権利なのだから、訴訟費用は自治体が負担すべき民主主義の必要経費と考えるのがスジではないでしょうか?市長はどうお考えですか。訴訟費用は自治体が負担すべき民主主義の必要経費とはいえないとお考えでしたら、その理由も含めてお答えください。
以上、様々な観点から質問しましたが、なにを聞いても同じような答えが返ってくるだけで「暖簾に腕押し」。「訴訟費用は自治体が負担すべき民主主義の必要経費ではないか?」については、その問いの意味さえわからなかったようです。
◆安曇野市・訴訟費用請求の七不思議
1、判決に「訴訟費用は○○人の負担とする」書かれただけでは、訴訟費用の請求はできないのに「判決文」にこだわる不思議。
2、勝訴すれば市民に訴訟費用を請求し、敗訴すれば市民の税金で訴訟費用を支払う。勝っても負けても、訴訟費用は住民負担にしてしまう不思議。
3、日ごろ前例、慣例を重んじているのに、全国でも極めてまれな訴訟費用の請求を例外なく行うことにする不思議。
4、住民訴訟となるには「それなりの正すべき点が自治体にもある」という認識が微塵もない不思議。
5、代理人弁護士が訴訟費用の計算を間違える不思議
6、判決が下って一件落着したものを、わざわざ訴訟費用を請求して反発を招く不思議。
7、市から報酬をもらっているんだから「小遣い銭程度の訴訟費用はさっさと払え」という不思議。