福祉教育委員会視察報告

2015年8月24日 21時04分 | カテゴリー: 活動報告

~心病む人たちの居場所「クッキングハウス」について報告します(1)~

クッキングハウスは安心して食べられる自然派家庭料理のレストランとして地域に定着

 福祉教育委員会では7月28日(火)から30日(木)まで二泊三日の日程で、下記のような内容で視察を行った。

第1日目 東京都立川市(2015年7月28日)
 ・健康会館の取り組みについて
・地域見守りネットワーク事業について
第2日目 東京都調布市(2015年7月29日)
 ・「クッキングハウス」精神障害者の社会参加等について
 ・「こころの健康支援センター」発達支援障害者支援事業(成人期) について
第3日目 東京都東大和市(2015年7月30日)
 ・学力向上の特色ある取り組みについて

 そのうち、二日目の視察地である調布市の「クッキングハウス」について、報告する。

《はじめに》
 昨年度の福祉教育委員会の視察では、釧路市の生活保護自立支援プログラムを主たる課題として研修してきた。そのとき「北海道へ行くなら、浦河町にある社会福祉法人『浦河べてるの家』も視察したい」と考えたが、旅程の厳しさから断念せざるを得なかった。
 『浦河べてるの家』は精神障害等をかかえた当事者の地域活動拠点として、その取り組みが注目されている施設で、私は以前より強い関心を寄せていた。今回訪問した調布市の「クッキングハウス」は、心の病・精神障害等のため孤立しがちな人たちが、食事作りを通して交流する場=居場所作りから始まって、この『浦河べてるの家』の活動に触発されさてさらにその活動を充実させてきた施設だと知り、一石二鳥の視察地と期待して訪問した。

 7月29日午前11時から、レストラン「クッキングハウス」の2階にある「クッキングスター」と名付けられた生活支援・就労支援の場を訪ね研修した。 クッキングハウス代表の松浦さんのお話と、実際にこの施設で活動している統合失調症のNさんのお話を聞き、昼食は同施設のレストランで評判の玄米定食をいただいた。午後は2時過ぎまでSST(ソーシャルスキルトレーニング)の実践に関するお話や、質疑応答、懇談まで、充実した研修となった。
 松浦さんがクッキングハウスを設立して28年。「志一つでここまでやってきたことが、これだけ評価されるということは、いかに日本の精神科医療や福祉が遅れていたかということを物語るもので、まだまだこれからです。」という言葉が心に残った。

1、 クッキングハウスとは、その成り立ちについて
 (研修項目1)代表がこの事業を立ち上げるきっかけとなったことは何か。
 代表の松浦幸子さんは精神科ソーシャルワーカー。松浦さんが仕事を始めた1980年代当時は、精神科病院に入院している患者の多くは、いわゆる社会的入院(病気になったことで、離婚したり仕事を辞めさせられたりなどして、生活の場に戻れず病院で暮らしている状態)であった。病状がよくなって退院できたとしても、行き場がなく、適切なケアも受けられないため、病気が再発し再入院するという状況を目の当たりにして、なんとかしたいと考えたことが、そのきっかけであった。

・心の病気になることは特別なことではなく、誰にでも可能性があることとしてとらえ、「病を持ちながらも地域で自立して暮らしていけるようにしたい」という思いが募り、1987年、もう1人のワーカーと50万円ずつ出資して、12畳のワンルームマンションを借りて、心の病気にかかった人達が孤立して暮さなくてもいいように、食事作りで交流する場を作った。ご飯を食べながら、「おいしいね」という言葉がでると、食べながら話を聞いたり聞いてもらったり、いいコミュニケーションが生まれるきっかけになると期待した。

(研修項目2)レストランで働くことにより、メンバーやスタッフ、そして地域にどのような変化がみられたか。
 開業5年後の1992年には、心の病気をした側からもっと積極的にできる社会参加をと考え、玄米食のレストランを開いた。できるだけ安全な食材を使うことを心がけたメニューは、美味しく体によいと市民にも大好評で受け入れられ、精神障害者と地域住民の自然な交流がひろがり、心の相談もできる「不思議なレストラン」とよばれるようになった。

・10年後の1997年には、クッキングハウスは3箇所となり、心の病気をしたたくさんの人たちや、その家族のための重要な場として位置づくこととなった。また、3箇所目の施設である「クッキングスター」は、クッキングハウスのような心の病気をサポートする場を全国各地でつくるためのモデルとして、情報発信の場となっていった。

・施設が移転したり増設したりする間には、施設建設への反対運動もなかったではないが、レストランという地域住民に開かれた形の活動で、地道にやってきた経過が目に見えたことで理解が広まり、第2クッキングハウスのオープンに当たっては、市民協力債券71口(710万円)で自主運営にこぎつけることができた。

(研修項目4)民間の施設としてのクッキングハウスが、現在に至るまでに行政に対してどのような支援を求めたか。また、実際にどのような支援があって今日に至っているか。
 先駆的、開拓的在宅福祉サービスとして公的に認められ、東京都社会福祉振興財団より助成金交付や東京都及び調布市より補助金交付を受けている。クッキングハウス施設の家賃相当分(月額50万円ほど)の補助があるので助かっているとのこと。

・『不思議なレストラン』『続・不思議なレストラン』『私もひとりで暮らせる一心の病気をしたって大丈夫一』『統合失調症を生きる』等の出版販売。『見て学ぶSST』ビデオ出版に協力。テレビ番組でも紹介され、精神障害を隠さない生き方をしていこうと呼びかけ共感と感動をよんでいる。

・1998年 キワニスクラブ(ロータリークラブ、ライオンズクラブに並ぶ、世界三大社会奉仕団体の一つ)社会広益賞受賞。2005年 精神障害者自立支援活動賞(リリー賞)受賞。 ・現在20歳代から70歳代までの62名が施設利用している。
(続く)