SL機関車移設訴訟(公金支出金返還請求事件)から見えてくる市政の課題について

2019年6月29日 23時28分 | カテゴリー: 議会報告

~安曇野市議会6月定例会・小林じゅん子の一般質問~

平成28年(行ウ)第17号公金支出金返還請求事件の判決書

SL機関車移設訴訟と言われている裁判は、正式には、平成28年(行ウ)第17号公金支出金返還請求事件という住民訴訟のことです。原告は、私、小林純子と増田望三郎議員の2名です。穂高有明の立足区に展示されているデゴイチをご存知の方には、どうして裁判になったのかわけがわからないという声をお聞きしています。簡単に説明をいたします。

これは、市の機関車を展示していた土地の所有者が、太陽光発電所を建設するので邪魔にならないところへ移動してほしいと、市に申し入れたことに始まります。この場所は、住宅団地を控えた美しい田園風景の中にあります。なぜ農地法に触れることなくメガソーラーができたのか疑問に思いました。

調べてみると、この機関車が農地転用が完了していない土地に移設され、農地法違反の状態になっていること。加えて、太陽光発電所の建設も違法な農地転用により行われたのではないか。そこに、安曇野市行政が関与したのではないかということで、住民訴訟に発展したものです。

平成28年11月の提訴から2年、9回の口頭弁論を経て、本年3月8日、長野地裁において判決が言い渡されました。安曇野市が勝訴し、原告は敗訴した形ですが、しかし、原告の訴えが認められた部分が複数ありました。原告としては、違法性が認められたものを大事にして、市政の改善につなげたいと考え、あえて控訴しない道を選びました。そもそも、機関車移設の問題や職員の賠償を追求するつもりはなく、市が事業の違法性を認めないので、やむなく住民訴訟の形をとったものです。

ところが、市の見解はあくまで勝訴であり、過失や故意によるものではなく、業者との共謀もなかったとして、違法性はないと主張しています。裁判所が市の事務事業の違法性を認めたにもかかわらず、市は勝訴したという形式的な受けとめで一件落着としたいようですが、事は重大で、市民の信頼を裏切るものであり、このまま見逃すことはできません。

なぜなら、市が勝訴したのは、市に損害はなく賠償の必要はないという点のみであって、市職員の違法行為そのものは、認定されているからです。市行政には言うまでもなく、広く市民の皆さんにも、正しくこの問題を理解してもらうために、事実に即した具体的な証拠書類や関連する公文書等をもとに、資料として提示しながら質問をいたします。
(以下、質問・答弁の概要です。)

【小林質問】 裁判所が認めた違法行為等について市の認識を、この議会の場で改めてお聞きする。

【総務部長】 原告側の賠償の請求は却下、違法とした請求をいずれも棄却、そして、訴訟費用は原告らの負担とするとの判決。2週間の控訴期間中に原告側からの控訴がなかったため、市の勝訴が確定した。裁判の争点として、原告の市民から異議を持たれたことについては、それを真摯に受けとめ、市職員が全体として適正な事務処理に努めていくべき教訓だと考えている。

【小林質問】 安曇野市は勝訴し、違法行為はなかったというのは、判決に対する理解(判決の読み方)が違っている。判決文には様式があり、第3に「当裁判所の判断」が書かれている。原告の主張を引用したようなものではない。裁判所の判断は、そこにはっきりと書かれているのであって、一言で言えば農地法違反を認めたということである。

【総務部長】 最終的な判断としては、違法性については認められないという表現であると認識している。

【小林質問】 判決について正しく理解しておらず、追求しても始まらないので次へ進む。判決の中から、安曇野市の違法性を認識してもらうために、1つずつ聞いていく。判決文42ページ、裁判所の判断は、農地法違反であり、法令や規則に従ってその事務を誠実に管理し、執行すべき義務を負う地方公共団体の行為として違法。これは、地方自治法第2条第16項、地方公共団体は、法令に違反してその事務を処理してはならない。これにも違反しているという裁判所の判断だが、市はこれをも否定するのか。

【総務部長】 判決文の中で最終的な裁判所の判断が表現されており、違法性は認められないというのが市の見解である。

※資料を示し、判決で認められた違法性や手続的瑕疵について次々と問い質すが、総務部長は「先ほどの見解のとおりでございます」を繰り返す。「資料の書類が存在することはわかったが、事務処理の内容については知らないので答弁できない」との発言も。

【小林質問】 資料1、2、3は安曇野市の公文書である。これを見れば、農地法違反は明らか。職員の故意か過失か、あるいは業者との共謀があったかは、この際問わないが、公文書から農地法違反の状態にあることは認めますね。

【総務部長】 公文書の管理はそれぞれの所管部で当たっているので、私が見解を述べることは不適切と思う。

【小林質問】 それでは、所管の農林部長にお聞きする。

【農林部長】 農林部で所管するのは、農業振興地域整備計画の変更に関する部分である。これについては、書面のとおりだと認識している。

【小林質問】 書面のとおりということは、違法性を認めるということでよいか。

【農林部長】 ここに記載されているとおりの事業変更があったものと思う。

【小林質問】 それでは、どのように変更がされたのか時系列で明確に説明を。

【農林部長】 ここの資料にある書面のとおりで、11月7日に転用事業の変更が提出された。スポーツ施設から太陽光発電と駐車場への事業変更である。

【小林質問】 それでは、この農振変更について本来ここに必要とされていた事業については、所管の商工観光部長に聞きます。

【商工観光部長】 SLの存続の地元要望、あるいはSL移設に要する期間等を鑑みながら、農地法の計画変更の承認申請と同時に土地使用貸借契約を結んだものである。

【小林質問】 商工観光交流促進課で進めていたのは機関車の移設事業、機関車の展示場をつくりますということで使用貸借契約を結んだ。ところが、農振変更届では、駐車場にすることになっている。(機関車の展示場では農振変更は認められないので、駐車場にするという虚偽の変更申請をしたことになる)おかしいでしょ。
※このあと、数回にわたり質疑応答を繰り返しましたが、商工観光部長からはあやふやな発言や「すぐお答えができない」という言葉が続き、逃げの答弁に終始しました。

市は勝訴したわけですが、それは機関車の移設事業そのものは違法ではなかったので、損害賠償の必要はないというものです。しかし、事業を進めるにあたり手続きのあちこちに農地法違反があったことを裁判所は認めているのです。今回の一般質問では、関係する公文書からも、農地法違反は明らかだと追及しましたが、市は「勝訴したのだから、農地法違反はなかったという判決である」と根拠なく言い張っています。ようするに、問題はまったく解決していないということになります。
そこで、宮澤市長に提案しました。

【小林質問】 市は勝訴したが、しかし、全く問題は解決していない。この農地法違反の問題について、第三者委員会の調査、検証が必要ではないか。

【宮澤市長】 裁判が確定をして勝訴している以上、第三者機関の調査、検証を行う必要はない。

【小林質問】 三セクトマト栽培施設の問題では、市長が率先して第三者委員会を立ち上げ、徹底的に検証を行い、成果を上げた。豊田市でも安曇野市と同様の事件が起こったため、調査委員会を設け報告書を出している。第三者委員会による調査、検証を検討すべき。

【宮澤市長】 第三者委員会を設置する意思はない。

市長は「裁判が確定をして勝訴している以上、第三者機関の調査、検証を行う必要はない」と答弁しましたが、三セクトマト栽培施設の裁判でも市は勝訴しています。それでも、第三者委員会を立ち上げ、調査・検証したのです。なぜか?それは、トマト栽培施設の問題は前任の市長と副市長の失敗であり、自分には責任がなかったということを示したかったのでしょう

それにくらべ、今回は、宮澤市政下において、市職員や事業者に農地法違反、農地の違反転用があったということになれば、機関車展示場だけでなく太陽光発電所も原状回復を命ぜられ、事業承継した現在の事業者から損害賠償請求ということになりかねない。これ以上の調査・検証はしたくないというのがホンネ、組織防衛に走る行政の姿と見えました。市民としてこれほどの失望はありません。