乳酸菌の液体を畜糞に噴霧すると、確かに糞尿のイヤな匂い、悪臭は緩和された。糞尿のアンモニア臭が弱酸性の乳酸菌によって中和される(即効性)と、さらに糞尿と混じって発酵することで持続的な消臭にもつながるということらしい。畜舎に噴霧すれば当然のこと牛や豚にも乳酸菌がかかるが、乳酸菌は家畜の生育にも有効で消臭効果と一石二鳥だとの期待の声も聞かれました。
見学したあと、この地域の悪臭問題に取り組んでいる住民お二人の案内で、周辺の養豚場や乳牛の牧場や施設を見てまわりました。農林部長はじめ職員の並々ならぬ熱意と実効性への期待を感じたものの、三郷地域の畜産業の現状が見えてくるにつれて「乳酸菌の悪臭対策は対症療法」で終わってしまうのではないかという不安が頭をよぎりました。
問題山積だった三郷堆肥センターは、2年前に所長以下従業員をやる気のある人たちに総入れ替えしたところから、管理運営も格段に向上し製造する堆肥の品質もよくなってきました。でも、しかし、堆肥センターが改善されて、3年前の排泄物のヒドイ野積みも解消されて、ぱっと見「キレイになった」けれど、大っぴらに野積みができなくなった分、畜舎や施設周辺の環境を悪くしただけだったんだと、今日思い知らされました。
乳酸菌をジャブジャブ撒いて匂いが劇的に無くなったとしても、「匂いが消えればそれでいい」のだろうか。臭くなければ糞尿にまみれたような環境で牛や豚を育ててもかまわないのでしょうか。何か大事なことが抜け落ちていないでしょうか。
乳酸菌で匂いが消えるだけでは、三郷地域の畜産業の振興・発展にはつながらない、もっと畜産業の基本的なところを見直さないとダメではないでしょうか。これでは、だれも畜産をやりたいとは思わないし、牛も豚も浮かばれない・・・。
安曇野の地元産の美味しい牛乳、よい環境で育った牛の安全な牛乳、と言われて思い描く畜産業とは全くかけ離れた現実がそこにはありました。
これは何とかしないといけないし、乳酸菌消臭はともかくも、問題解決のスタートラインとして位置付けるべきだと思いました。