3、まとめと感想
○このセンターには多くのボランティアが係わっており、ガイドや語り部として活躍しておられたが、その方々の実体験に基づいた話が非常に有益であった。震災当時、芦屋市の建設部長であったという語り部の方は、自治体職員として目の当たりにした市長や助役のリーダーシップについて語られたが、じつに説得力あり考えさせられた。首長や職員の持てる資質に頼るだけではなく、地震災害、自然災害にあたっての危機管理のあり方を学ぶ研修など、積極的に活用すべきだと感じた。
○2期工事として61億円をかけた「ひと未来館」の方は、ムダな施設との批判もあったと聞く。震災の記憶を風化させないために、また防災意識を高めるために「いのちの尊さと共生の素晴らしさ」を伝えていくことは難しいテーマだ。ジオラマ・映像・音楽・遊び・ゲーム等、とってつけたような内容では、目的達成には程遠かったと思われる。一度一通り見れば、また来ようとは思わないし、入館者数が低迷していたのもうなずける。
今年新たに「環境・防災」をメインテーマとして再スタートしたということだが、それが本筋であろう。阪神・淡路大震災という大きく重いテーマが明確にありながらも、「ハコモノ行政」になってしまう危うさは、普遍的な問題として受け止めなければならない。まちづくりも危機管理もハードよりソフト、人づくりと哲学の方がより重要。
○センターのあるこの場所は、震災前には神戸製鋼所や川崎製鉄など大規模な工場があった臨海地区である。震災復興のシンボルプロジェクトとして、住宅街や防災施設、健康・福祉施設を備えた21世紀のモデル都市として整備され、現在は「HAT神戸」東部新都心となっている。「HAT」は「Happy Active Town」の頭文字を組み合わせで、誰もが幸福で活気あふれる街になるように、との願いが込められているという。
周辺には・兵庫県立美術館・兵庫県災害医療センター・神戸赤十字病院・日本赤十字社兵庫県支部・兵庫県こころのケアセンター・神戸防災合同庁舎・JICA(国際協力機構)兵庫国際センター・IHD(国際健康開発センター)ビルなどの建物があり、国際的な防災研究の拠点となっている。
○そんな説明を聞きながら、ぐるりと周囲を見わたしてみると、町並みや道路は整備され整ってはいるが、これが「Happy Active Town」かといえば何か違う感じがした。ここでは人の生活・日々の暮らしは見えないから無理もない。そもそも震災後のライフラインの復旧、まちづくりや都市計画という大きなテーマで視察するならば、「人と防災未来センター」を見ただけではダメだということだ。しかし、わずかながらでも得たことは、何らかのかたちで安曇野市の防災にも活かせるよう考えていきたい。