代理人が行けないならということは、原告本人が出廷しなければ判決文がもらえないということ。つまり、私が行かなくてはどうにもならない。しかたがないので、議長宛て本会議の欠席届を提出して、東京高裁まで行ってきました。 聞くところによると、本会議冒頭で議長が「小林純子議員が、所用のため欠席する旨の届け出が・・・」と言ったとたん、場内がザワザワっとして、どこからか「(そんなことで欠席するなんて)オカシイヨ」という声もあったとか。「議員が市を訴えるとはなにごとだ」という意識の議員が多いようなので、さもありなんと思いました。
以下、控訴審判決言い渡しの報告です。「三郷ベジタブルの経営改善を望む市民の会」の横地泰英さんがレポートしました。
「三郷ベジ」住民訴訟/安曇野市の損失補償は違法
東京高裁 一審判決を変更、「無効」と認定
2010年8月30日(月)13:10開廷 13:20閉廷
東京高裁:加藤新太郎裁判長
控訴人側:(原告)小林純子 傍聴人2名
被控訴人:(安曇野市)側:傍聴人2名(市職員)、メディア 2社
安曇野市のトマト栽培第3セクター安曇野菜園(旧三郷ベジタブル)をめぐる住民訴訟は10年8月30日、東京高裁で判決があった。同社に融資した3金融機関と市が結んだ損失補償契約を無効とする小林純子市議の訴えについて、加藤新太郎裁判長は「財政援助制限法に違反し、無効」と認定。契約に基ずく補償支払いをしないよう市に命じた。この部分について一審・長野地裁判決を変更、住民側請求を認めた。トマト栽培施設の使用料徴収を猶予などを違法とする部分については、「施設使用は指定管理者として行われたもの」として、一審同様に却下した。
安曇野市は、3金融機関が損失をこうむった場合、計3億5000万円(契約時)まで元本を補償する契約を結んでいる。安曇野菜園はこの損失補償契約に基づき、今年6月には計3000万円を借入、さらに来期にも4000万円を借入ることを予定している。経営不振が続く安曇野菜園はやりくりが苦しく、給与支払いさえままならぬ状況。損失補償契約による支出を差し止めた今回判決で、市は対応に苦慮することが予測される。判決は「市は各金融機関へ任意の履行をすることは許されず、金融機関による強制執行の方法によるべきもの」と、行政の対応がいい加減で済まされぬことを、厳しく求めている。
財政援助制限法は、自治体が会社などの債務を肩代わりする「保証契約」を禁じているが、これに基づいて支出を差し止める判決は異例。判決は「本件損失補償契約の締結当時、財政援助制限法が適用されて無効になる裁判例はなく、行政実例上も損失補償については財政援助制限法が規制するものではないという自治省指導(昭和29年)が行われ、多くの地方公共団体が損失補償契約を結んできた」とこれまでの経緯を述べている。今回判決の「画期性」を自認した形だ。
加藤裁判長は「損失補償契約は保証契約と同様の機能であり、地方自治体が法人の債務を保証する契約を結ぶことはできないとする財政援助制限法に違反し、無効」と判決理由で述べた。
トマト栽培施設の使用料相当額の不当利得返還請求権については、「三郷ベジの使用は指定管理者として行われたもので、賃貸借契約に基づくものではない」という市側主張を認めた。起債償還と施設使用料とには直接の法的関係はなく、三郷ベジへの不当利得返還請求権が発生する根拠とならないと、住民側主張を退けた。ただ、判決は「三郷村ないし安曇野市が賃貸借契約なる名称を用いてきたことにより、住民に疑念と誤解を生じさせ、本件紛争を増幅させてきたことに反省が求められる」と軟らかな表現ながら、釘を刺した。
この日、加藤裁判長は午後1時10分から立て続けに計9件の民事判決を言い渡した。三郷ベジ訴訟までは「本件上告を棄却」の連続。1件1分足らずだったが、三郷ベジ住民訴訟でがらりと変わった。加藤裁判長は「議論がかみ合った。正面から判断した」と、異例ともいえるコメントを付けた。
判決後、小林議員はメディア各社に「市民の主張が認められた。安曇野菜園を民間譲渡するという市の判断を後押しするはずだ」「3セクの損失補償の問題は全国の自治体にあり、波及する影響は大きい」と述べた。宮沢市長は「判決を読んで今後の対応を検討する」とコメントした。
(報告・横地泰英)
◆安曇野市の損失補償契約「違法で無効」 東京高裁判決(信濃毎日新聞)
◆三セクの損失補償は無効 長野・安曇野市側が敗訴(中日新聞)
◆損失補償契約は無効=金融機関への支払い差し止め−三セクめぐり安曇野市に(時事通信)
◆三セクの損失補償は無効 長野・安曇野市側が敗訴(共同通信)
◆安曇野市:三セク損失補償「違法」…高裁が差し止め命令(毎日新聞)
●裁判の経過はこちらからご覧ください。