2年前に一人で訪ねた愛知川図書館、渡部館長のお話を聞いて、図書館を見て、図書館づくりの醍醐味というか、心浮き立つ、わくわくするものをたくさん感じて帰ってきのですが・・・。その後、能登川図書館、篠山市中央図書館など視察しましたが、安曇野市の図書館づくりにどこまで活かせたかといえば、心もとないものがあります。現在、着々と準備は進んでいるのでしょうが、図書館を作り上げていく「喜び」とか「熱意」とか、図書館が現実のものとなっていく「期待感」とか、そういったものを感じて活き活きと働く職員の姿が、市民にはなかなか伝わってこないのが残念。
工事はこんなふうに進んでいますよ・・・、こんな図書館にしたいんです・・・、みなさんからのリクエストは・・・ 等々、どんどん市民に向かって投げかけていかないと、せっかくの図書館が、「天から降ってきた」ただそれだけのものになってしまいます。
というわけで、わたしも「天から降ってくる」のを待っているだけではダメなので、自ら求めて高山市図書館へ行ってきました。今回は建物、施設面よりも、ソフト面を重視して勉強してきました。高山市図書館の職員研修で、浅川玲子さんが講師となってお話をするという情報を得たので、高山へ行くにはちょうどいい季節だし、「聞かなきゃそんそん」とばかりに出掛けたというわけです。
浅川玲子さんは、山梨県立図書館で長年にわたり司書として活躍、定年後も玉穂町図書館をはじめ三つの図書館で館長を務められました。現在はNPO法人山梨子ども図書館理事長。78歳とは思えない溌剌とした姿と仕事ぶりに、大いに触発されました。以下に、簡単ですが浅川さんのお話をまとめておきます。
◆図書館サービスは「おもてなしの心で」
「図書館は市民が自然に集まってくる場所、公共施設の中では最も利用の多い場所だと思っているが、そういう話をすると決まって『図書館を作っても、人が来るかは疑問』という声を聞く。そんなとき私は『必ず人は来ます』と答えるのです・・・」浅川さんの話はこんなふうに始まりました。安曇野市でも、読書離れのこのご時世に、図書館なんか建てたって誰が行くんだみたいなことを言う人は少なくない。浅川さんの『必ず人は来ます』という力強い言葉に、それまでの実践に裏付けられた自信と確信を感じ、すっかり話に引き込まれました。
これまで本格的な図書館のなかったところでは、市民は「図書館はタダで本を貸してくれるところ」ぐらいにしか思っていないので、まずは来てもらえるようにあらゆる努力をすることが館長はじめ司書の務め。図書館は、いつでも好きな時に来ていいし、一日いてもいいところ、使い方は人それぞれ、「来てみて初めてわかる良さがある」ことを市民に実感してもらうことが何よりも大事。
司書の役割は、人と本を結ぶこと、いい本との出会いを導くことであり、市民の暮らしぶりをよくするお手伝いをする仕事でもある。だから地域の人をよく知ること。子どもから高齢者、障害者まで、あらゆる人々を、一人のお客様(利用者)として、人間として対等に対応すること。お客様のプライバシーを守ること。等々、司書として心掛けるべきことなど、多方面にわたる話にいちいち頷きながら、共感しながら聞きました。
「図書館は館長・司書のやり方次第でいくらでも良くなる。行政の仕事のなかにあって、最も自由裁量の多いのが図書館の仕事だから」という言葉が一番印象に残っています。今は「安曇野市でも浅川さんの話を聞けないだろうか」と思案中です。
◆高山市図書館「煥章館」について
高山市は平成17年の合併により周辺町村を編入。なんと長野県境から石川県境までを占める面積2,177平方kmという広大な市となりました。面積では安曇野市の約7倍ありますが、人口94,897人、世帯数:33,950世帯というところでは、ほぼ同規模の市といえます。
高山市図書館「煥章館」は市立図書館の本館であり、旧煥章小学校の建物(明治の洋館建築)を模して建設されたもので、平成16年4月に開館しています。図書館、高山市近代文学館、生涯学習ホールの3つの機能をもつ複合施設となっています。広い市内には、合併前の町村にあった図書館(室)などを引き継いだ9つの分館室があり、資料の配送、巡回、読書推進事業の実施など相互に連携をとりながら、それぞれ地域に密着した運営を行っています。市の直営ではなく、指定管理者制度により ㈱図書館流通センターが管理運営しています。
※指定管理者制度による図書館運営という点では、賛否両論がありますが、高山市図書館では高い水準の運営がなされているように感じられました。モデルケースとして参考になると思います。
・蔵書数 約160,000冊(うち、AV資料 約3,000点)
・開館時間 9:30〜21:30
・休館日 土日を除く月末の最終日、年末年始など