安曇野市国民保護協議会を傍聴

県の示した「モデル計画」とほぼ同じ内容

 安曇野市国民保護協議会を傍聴。国民保護協議会というのは、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(国民保護法)第39条第1項の規定に基づき設置されたものです。と、書いていても漢字ばかりが続いて、それだけでもう難しそうで「私には関係ないな」と思わせてしまいそう。
 私なりの解釈では、名前こそ「国民保護法」ですが、簡単に言えば「国民を保護する法律」というより、「国民を統制する」性格を持った法律だと思っています。国民保護といいながら、国民を戦争協力へと具体的に動員するする法律でもあります。

 そんな危うい「国民保護法」に基づいて設置された安曇野市国民保護協議会、どんな議論になるのだろうかと傍聴に出掛けました。
 今日は第1回目ということで、まずは委員の任命と自己紹介。こういう場面では、つい女性委員はいるかとキョロキョロしてしまうのですが、一見して女性委員の姿はなく、自己紹介で確認してもヤッパリ女性委員はゼロ人でした。松本市や塩尻市の国民保護協議会でも女性委員はゼロ。防衛・戦争・有事体制は「男の仕事」という発想なのでしょうか。国民保護と言いながら、保護される側の人間が一人も入っていないし、一般市民からの公募委員もいないのも気になります。

 ただし、自衛隊関係者を入れなかったことは評価します。近隣自治体の国民保護協議会を傍聴した人の話では、「安曇野市の場合、緊張を強いられる度合いが低い会議に感じられたのは、軍服自衛官がその場にいないことによるものかも」とのこと。自衛官が参加しているだけで、それほどに雰囲気が硬くなり、議論の流れを方向付けてしまいそうな威圧感が漂うのかもしれません。

以下、一緒に傍聴したY氏の報告を一部引用しながら報告します。

1.市長代理の挨拶
 他自治体と同様、計画の必然性説明のために引き合いに出されるのは「9.11」、「ミサイル日本海に落着」、スペイン等での鉄道「テロ」。引き合いに出されないのは日本国憲法と、その結果として長らく日本列島への武力攻撃など行われなかった点。

2.協議会設置までの経緯報告と根拠となる法令の紹介
 「武力攻撃事態法」・「国民保護法」成立過程紹介。
 述べられるのは成立の日時。述べられないのは、その都度あった「平和と戦争」を巡る議論・異論・反対運動。
 立法経緯の背景として語られるのは「9.11」。語られないのは日米同盟における米国からの「協働」の要請と、前大戦時の国家総動員体制。

3.素案の概要説明
「時間が無いので」と、たったの20分。この間、事務方が行った訂正点の説明に時間がかかっていたかもしれません。
 ○素案時点から、事態回避のための外交責任を必須とする「理念」項目が書き込まれている。
《「平和の尊さ」と「恒久平和の誓い」を新たにする。》なる、宣言的な文言が特色。

 ○素案本文中に「敵」表記1箇所、「敵国」表記2箇所発見。要確認。

 ○他、目次構成からフォントまで松本市、というか県の示した「モデル計画」と同じ。 ※この点については、さすがに気が引けるのか、「まあ基本的にどこもみんな同じ。ここだけ特別なことやっても、いざという時にモゴモゴ……」と、委員の誰一人気にも留めていない雰囲気のなか、自己弁護的説明が。本日一番の長セリフ。

 ○素案全文(全91ページ)はHPにて公開(予定?)、他数箇所で閲覧可。

4.パブリックコメント実施の主旨・要項説明
 ・素案公開に伴い、パブリックコメント実施。5月1日広報掲載から同31日まで。

5.質疑(質疑は2名からあったものの、10分もかかりませんでした)
 ・松本市、塩尻市の協議会では何の発言も質問もない議事だったそうですが安曇野市では2件ありました。一つは事務級要望といった内容の質問。もう一つは司会者からの確認・念押しといった内容のもの。質疑といったものではなかったですが、発言ゼロよりはまだましかと。それにしても、予め送付されていた素案に目を通していれば、もっと質疑があってもいいと思うのですが・・・

6.その他
 長野地方気象台から、「本件とは関係ありませんが」と前置きの上で、地震情報伝達システムの更新のお知らせ(?)がありました。(国民保護体制にも投入される予定で実験中のJ−ALERTの紹介含む)
 まさか狙ったわけではないと思いますが、次第の最後に防災畑の情報をさりげなく挿入することで、軍事的な国民保護計画を「防災」の延長線上に置こうとするイメージ作戦はかなり政治的で、協議会各委員は何の違和感もなく受け入れてしまっていたようです。

6.第2回協議会について
 6月中旬から下旬にかけて開催予定。

 さて、この先のスケジュールとして考えられるのは、下記の通り。
1.6月下旬の協議会にて、パブリックコメントによる批判に対する説明がなされ、事務レベルと誤字脱字レベルの修正を受けた「原案」が提案される。
2.同協議会もしくは、再検討の上、次回協議会において原案を「答申」。
3.県との調整期間(事実上は県と調整しながら原案をつくる)
4.計画確定・議会に報告(議会の議決は必要なのだろうか?確認してみます)
5.市民への「啓発」開始(松本では計画確定前から「印刷費」として予算計上済み)
6.翌年度以降、「訓練」開始(松本市は今年度は実施予定なし・但し県訓練に参加意向)

余談(Y氏よりお褒めの言葉)
 会議の次第A4版を1枚ピラっと渡すだけで資料を傍聴者に提供しなかった松本市国民保護協議会にくらべ、安曇野市当局は、次第・素案・訂正概要・総務省発行資料など、豊富な資料を傍聴者にも用意くださいました。おかげで議事内容を目で追いながら聞くことが出来ました。