【 質問 】
合併前から継続されている三郷地域のバイオマスタウン構想は、地球温暖化防止や資源循環型社会をめざし、ゴミをゴミとせず資源として有効利用する、いわばエネルギーの地産地消ともいうべきもので、全国的にも注目される安曇野市の取り組みです。
しかし、現時点ではその利点ばかりが強調され、安全性や環境に及ぼす影響についての検証が不充分のまま計画が進んでいるように思えてなりません。そのうえ、計画の前提になる間伐材やりんごの剪定木などのバイオマス資源の見積もりが甘く、安定的に必要量が確保できるかどうか疑問です。そもそも木質バイオマスのガス化技術からして、まだ実証実験の段階であり、技術的にも採算的にも確立しているとはいえません。「絵に描いた餅」といってよいレベルです。事業費の50%が国から補助されるとしても、あえて市が積極的に行うべき事業とは思えません。
また、すでにこのガス化施設の事業運営会社は設立されており、住民との合意形成を後回しにするような市の対応を見るにつけても、補助金を巡る市と民間会社の関係に疑問をいだかざるをえません。
このような市の一方的な判断で進めようとしている木質バイオマスガス化施設の建設は、ゼロから見直す必要があると私は考えています。
そこでお伺いします。
1点目として、計画がかなり進んでいるのに、近隣地域で説明会が行われただけで、広く市民に対してきちんとした事業計画や事業内容について説明がなされないのは問題ではないか。
2点目として、施設の安全性や環境に及ぼす影響などについて、どのように考えているか。
3点目として、すでに水素を製造する会社(安曇野ブルー水素有限会社)が設立されているが、いったい事業実施主体はどこになるのか。また、市はこの事業にどこまで関与するのか。
【 産業観光部長の答弁 】
①合併前の三郷村時代から木質バイオマスの利用について検討し、調査や研究会を行い住民の意見も聞きながらここまでやってきた。これからさらに充分な説明を行い、広く理解を得ていきたい。
②安全性については、事故があったとか何か問題があったとは聞いていない。有害なタールが発生するというが、きちんと処理するので心配はないという話である。
③事業主体は安曇野ブルー水素有限会社になる。この会社が施設建設や運営、水素の製造販売をする。民間企業であり、市は出資しない。
【 再質問 】
充分な検討がなされているのか疑問、甘い計画ではないか。
①と②に関連して、調査・研究してここまで計画が進んできたというが、1年前に提出された三郷バイオマスタウン構想に書かれた数字と、今年5月の住民説明会で示された数字が、すでに変わって下方修正されている。さらにその数字も今後の社会情勢で変わってしまう可能性が高い。
バイオマス資源の調達に関しては、りんごの剪定木は近年の薪ストーブの普及により薪として捌けてしまうので、それほどの量は出ない。間伐材についても、中国の経済的活況を受けて安価なロシア材が中国へ流れてしまい、日本に入らなくなったため、構造材合板用に国産材(間伐材で充分)の需要が急速に伸びている。1t/8,000〜10,000円で取引されるようになっている。したがって、1t/3,500円で間伐材がたくさん出てくるとは思えない。
連続運転を原則とするこの施設で、原材料が不足するようになったらどうなるか。民間企業のことだから、お金を払ってでも引き取ってもらいたいという「建築廃材」があればそれを入れてしまうだろう、その恐れは充分ある。建設廃材が入れば、純粋な木質バイオマスだけを使うのとは違って、より多くの有害物質が排出される可能性が高くなる。市が関与しない私企業となれば、安全確保はさらに難しくなる。
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