その後、合併協議会はすべて傍聴し、また、できる限りの機会を捉えて住民の声に耳を傾け、合併や町づくりについて学びながら、このまま合併へと進んでよいものかと、ずっと考え続けてきました。わずかに期待も混じる複雑な思いで見守ってきた合併協議会ですが、回を重ねるにつれてそのわずかな期待もだんだんにしぼんでしまったというのが現在の心境です。
穂高町に限らず、他町村の住民の考えも真っ二つに割れているといってよい状態であるのに、町は、合併協議会は、一体どんな説明をしてきたでしょうか。合併協議会は情報公開に徹すると言い、テレビ放映までしましたが、実際には幹事会や正副会長会で意見調整されたものが合併協議会に降りてくるだけで、その結果、合併協議会の話し合いはどこか形式的で発展性に乏しいものでした。合併に反対する人々を納得させるに充分な議論がなされたとは言えません。合併を望む人々さえ満足していないのではないでしょうか。
以上は全体的な問題ですが、たくさんある個別の問題からは、具体的な反対理由を一つだけあげておきます。合併特例法によって、本当に新市が財政的恩恵を受けるのかという点です。合併特例債は有利といっても借金に変わりはなく、3割強は自治体の負担です。合併により新たな借金を増やすだけということにもなりかねません。
国は合併さえすれば合併特例債で新たなハコモノを造れますよ、とさかんにはやし立てました。しかし、国、地方合わせて900兆円もの借金を抱えるなか、日本中でこのまま合併が進めば、特例債の約束などいつ反故にされるか分りません。
合併協議会では、そのことを薄々感じてか、それとも合併前に揉めたらまずいと思ってか、特例債の使いみちについては新市建設計画の中に明確に示されることはありませんでした。
このように、これまでの合併協議の経過からは、合併によって期待されるほどの行財政の効率化はできそうもないこと、安易に合併特例債を当てにすることで長期的なまちづくりの視点が失われてしまうことなど、不安なことばかりが浮き彫りになりました。
加えて議員としては、議会改革に関する提案が何一つ取り上げられなかったことにも失望しています。このような状況では、現時点で廃置分合議案に賛成することはできません。