現在の経済情勢は依然として低迷しており、穂高町においても厳しい財政状況に変わりはありませんが、限られた財源のなかで経費の節減、健全財政の確保に向け努力している点は評価します。また、住民サイドに立った新たな事業への取り組みにも積極的であり、全般的に妥当な決算であったと認めます。しかし、行政の仕事においては、何につけ、これで良いと言う事はなく、常により高いレベルを目指すなかで、さらに努力が必要な点も目に付きましたので、いくつか指摘しておきます。
合併に関する情報提供について。任意合併協議会の負担金が13,197,000円に対し、穂高町の自立に向けた調査研究に予算付けはなく、合併推進に偏った情報提供が行われ、公平性を欠いたと言わざるを得ません。
住基ネットについて。これまで再三指摘したとおり、その安全性確保と維持管理費用を考えると費用対効果の観点から大いに疑問が残ります。しかし、住基カード発行にあたっては窓口で「町外へ転居する場合は穂高町の住基カードは無効となり、転居先の自治体でまた手数料を払って再交付してもらわなければならない」ことを伝えるなど、住基カードの普及には慎重な姿勢であることは評価したいと思います。
林道北沢線について。これまで行ってきた補修や舗装工事の無駄を見直し、森林整備のための林道として最小限の維持管理に切り替える時期が来ているにもかかわらず、当初の計画通り進めているのは問題です。加えて、工事現場に数年にわたって廃棄トラックや燃料タンクが放置され、オイル漏れなどで環境に悪影響を及ぼしかねない状態であったのに、そのことに気付かずにいたことは、漫然と工事を進めてきたことを物語っており、反省を促すものです。
常念いこいの広場センターハウスは、今年になって烏川渓谷緑地公園のトイレとして活用される見込みとなりましたが、使用目的が明確でないまま町がこの施設を買い取り、維持管理にお金をかけているのは納得しかねることです。
町の環境基本計画策定について。2年計画の事業ということで初年度は1300万円、そのほとんどがコンサルタント会社への委託料です。穂高町の環境基本計画の策定をするのですから、本来は住民と職員の英知が結集できる体制をつくり、住民の要望に応えられる事業として、委託に頼る部分は極力少なくすべきべきです。
常念ふれあい公園について。穂高町の地域性や子どもたちの現状をふまえて、どのような公園が求められているかといった基本理念や構想がないまま建設を進めたため、出来上がった後になって住民から疑問や不安が出てくる事態になってしまい残念に思います。住民参加の公園づくりと言うならば、お金をかけるだけでなく、もっと時間もかけるべきです。(写真は常念ふれあい公園のせせらぎで遊ぶ子どもたち。)
以上いくつか指摘しましたが、今や右肩上がりの経済成長を前提にした財政運営、税金の使い方はありえません。これまでも批判が多かった土木事業、箱物行政はもちろんのこと、一見は正しい事のように思える福祉事業であっても、さまざまな要望に応えようとするだけではダメで、その中身が問われる時代になったのだと思います。本来のまちづくりのあり方、税金の使い方、行政機能の見直しなど、すべきこと、課題は山積みであり、なお、一層の努力を求めた上で、2003年度穂高町一般会計歳入歳出決算に対して賛成の討論とします。