このところ山麓の牧から有明にかけて、猿が農作物を荒らす被害がますますひどくなっています。そうした猿による害、猿害対策として即効性のある電気牧柵を導入する動きが急ですが、この方法はは対症療法にすぎず、電気牧柵で猿害の根本的な問題が解決するとは考えられません。
本来は奥山にいる猿が里山に出てくるようになった原因は、人間の側にあります。第一にサル本来のすみかである森林の環境や生態系の破壊による食物の減少、第二に人間が猿にえさ場を与えてしまったこと、この二つが根本的な原因です。猿にえさ場を与えたといってもピンとこないかもしれませんが、穂高町でいえば山麓の別荘地に放置された生ごみ、キャンプ客が捨てていったバーベキューの残りもの、山間にあるお墓の供え物、転作したものの収穫されず放置されたままの大豆など、猿にとってはこの上ない餌場なのです。環境が悪化した山から仕方なく下りてきたら、こんなに美味しいものがある。おそるおそる食べていたが、誰にも怒られる気配がない。「サルだサルだ」と喜んだり、わざわざ餌をやる観光客もあり、こうしてサルたちは「人間なんて、それほど怖いもんじゃないな」と学習していくわけです。こうして栄養状態がよくなった猿は出産率が上がりどんどん増え、人間に対する畏れもなくなって、ずうずうしい猿に育ってしまったのです。
このような根本原因を押さえた上で対策を講じなければ、いくら電気牧柵が効くからといっても、その場限りの対策であり、電気牧柵によって猿を山へ帰すことはできません。電気牧柵にのみ頼っていれば、延々と電気牧柵を張り巡らしていかなければならず、そのことで逆に様々な悪影響が出ることも予想されます。
電気牧柵自体は、人が誤って触ったとしても危険はないとのことですが、柵に蔓や草がからまると、電気の効き目が落ちるので除草剤を撒いている所が多くあり、環境汚染・水質汚染につながるおそれがあります。安全基準に合った薬で心配ないというのでしょうが、10年後20年後わさび畑に湧き出す水が安全だという保障はありません。また、山麓地帯の景観は大切な観光資源ですが、電気牧柵に仕切られた景色は安曇野のイメージを台無しにしてしまうのではないでしょうか。また、森の子野外保育園から陳情がありましたように、子どもを育てる環境としても、好ましいものではありません。ものごころついた時から、自然と人間とは相容れないものだという印象を植え付けることになてしまうからです。
猿による被害がひどく、緊急措置的に電気牧柵が必用だということは理解しますが、それでよしとせず、電気牧柵に頼らない猿害対策にもっと力を注ぐべきではないでしょうか。
最も基本的な対策は、とにかく里に下りてきたサルたちを、山へ帰すこと。「里はいいエサ場だ」と認識しているサルたちに、「うーん、ここはやっぱり怖いところだな」「労多くして益少なしだな」と思わせることだといいます。そのためには、農家の人だけでなく、地域の人々はもちろん、たまたま訪れた観光客までもが、猿を見たら追い払うくらいのところを目指してやっていかなければダメでしょう。これは、まさしく行政と地域住民とが協働する取り組みになると思いますが、町として猿害対策の研究会、対策会議といったものを作り、行政と地域住民、農業者、林業者、猿害対策の専門家など、多くの知恵と力を合わせ協働して取り組む考えはないか、町長の見解を伺います。
(答弁を含めた報告は後日に)