議員間の討議による合意形成を阻む会派制
~土地利用の規制緩和求める提言書に至る
合意形成は十分だったか~
「安曇野市議会は30日、市が見直し作業を進めている市独自の土地利用制度について、人口増加や企業誘致を図る観点で、宅地造成などの規制を緩和するよう提言した。・・・」
これは、本日5月1日付け市民タイムス記事の冒頭の一節。見出しは「土地利用 規制緩和求める~市議会が市に提言書」となっています。
この提言書ですが、どのようにまとめられたか、そのプロセスを追ってみると「規制緩和の方向で議会の意見がまとまった」とは言い難いものがあります。どういうことかと言うと、議会基本条例の重点の一つである「議員間の討議による合意形成」、これが十分になされた上での政策提言ではなかったということです。
たとえば、第14条に、議会は言論の府であることを十分に認識し、議長は議員相互間の自由な討議を中心に運営しなければならない。とありますが、会派の代表者が集まって協議しただけで「議員相互間の自由な討議を中心に」話し合って決めたということではありませんでした。
また、第15条には、議会は、市政に関する重要な政策及び課題に対して共通認識を図り、合意形成を得るため、政策討論会議を開催することができる。ということになっていますが、これも省略して4月22日の全員協議会で議長が提言書の概要を説明して終わり。この条項は「開催することができる」=できる条項だから、やらなくても問題ないと都合よく解釈されたわけです。
無所属議員4名は、規制緩和には慎重な考えであり、社会情勢の変化に伴い新たな規制も検討すべきとの意見も提案したのですが、会派代表者会議では少数意見を尊重する雰囲気はなかったようで、議長は少数意見を切り捨てた形で提言をまとめました。
少数意見は議論と討論による説得の過程で多数意見に変わる可能性があるのですが、民主主義を「多数決主義」と勘違いしている人たちは数にものを言わせて、結論に至る過程を疎かにしているとしか思えません。
会派代表者会議は正副議長、会派の代表4人、無所属議員4人から代表1人、ということでたった7人の会議。そこで市の重要な政策である土地利用について、異論もあるなか提言をまとめてしまうなんて、論外だと思います。
今回の土地利用に関する政策提言に続いて、次は松本糸魚川連絡道路(地域高規格道路)の建設推進についても政策提言を検討していますが、これまた会派で意見をまとめるところから始めることになっています。
さすがに、今回の土地利用に関する提言のまとめ方に問題が多かったので、松糸道路については合意形成のための政策討論会議を開いて最終決定することになりましたが、これとて「結論ありき」(多数会派の意向)で進められているようで、私としては徒労感がつのるばかりです。
安曇野市議会は定数25人。議員が50人、100人いるような大きな議会ではありません。一人ひとり意見を出し合い議論できる規模です。始めから会派で意見集約してしまって、全員での話し合いもせず、少数意見や異論もろくにきかず、なんでもすぐに多数決で決めてしまうというのは、「民主主義」に名を借りた「多数決主義」の横暴、会派制の弊害ではないでしょうか。
本当の意味での民主主義を実現するためには、単に多数決で決まったことだからとするのではなく、判断のもとになる必要な情報を共有し、一人ひとりが自分の意見を持ち、発言する機会が確保され、少数意見も切り捨てず皆でよく話し合う努力をしていく必要があります。
それが「議員間の討議による合意形成」の基本にあるはずなのですが、条例施行から2年足らず、はやくも安曇野市議会の基本条例の空文化が懸念される状況です。