穂高クリーンセンターのごみ焼却施設建て替え計画について
~安曇野市議会12月定例会
小林じゅん子の一般質問(その1)~
今回、この問題を取り上げた背景には、私自身が穂高広域施設組合議会の議員として8年以上関ってきたことと、新ごみ処理整備・運営事業に係る環境影響評価準備書の住民説明会に参加してわかったことがあったからです。「DBO方式だから、建設会社、運営会社がやるので組合では対応しない」というスタンスで、組合が事業者としての責任や当事者意識に乏しく、DBO事業の理解不足と無責任体質を感じたからです。
建設場所が現施設の隣接地ということで、狐島地区には受け入れを了解していただきました。建設地選定の心配がないため、組合としては、現状維持していけばよいという安易な意識が元にあるのではないでしょうか。DBO方式においては、そのような組合の姿勢は、業者との緊張関係を欠くことにつながり、よい結果を生まないと思います。
穂高クリーンセンターで焼却するだけが仕事ではないのです。より安全で安心なゴミ処理を目指すことは言うまでも無く、ごみの減量化と資源化リサイクルの推進に向けた取り組みを求められています。
以下に、一般質問でのやりとりを、市議会だよりに掲載する内容よりも詳しくまとめましたので、ご覧ください。
【小林質問】 安曇野市を含む6市町村で構成する穂高広域施設組合が運営しているごみ焼却施設、穂高クリーンセンターは、平成6年に稼働を開始してから22年余りがたち、施設や装置の老朽化が進行してきており、組合では施設の建てかえ計画を進めている。この秋、9月から10月にかけて新しいごみ処理施設整備運営事業にかかわる環境影響評価準備書の公告、縦覧、そして住民説明会も開催され、施設整備、運営事業の計画の全容が明らかになった。
建設用地は、現在の施設の南側隣接地で、穂高広域施設組合が地元狐島地区の理解により取得した場所である。先ごろ整備運営事業者が決定し、平成30年4月に実施設計に着手し、平成33年3月の稼働を目指している。
そこで、まず、穂高広域施設組合の管理者でもある宮澤市長に、事業の概要の説明をお願いする。
【宮澤市長】 穂高広域施設組合の新ごみ処理施設の建設整備については、本年(2017年)の10月4日に開催された新ごみ処理施設整備・運営事業者選定委員会において、落札者決定基準書に基づき審査を行った結果、代表のJFEエンジニアリング株式会社を落札者として決定した。
来年度当初には、建設工事請負契約書と運営業務委託契約書の締結を行う予定。供用開始は平成33年3月の見込み。炉の規模等については、現在50トン炉を3基の施設だが、ごみ減量化等に伴って、60トン炉2基で24時間稼働という体制で進める計画となっている。
【市民生活部長】 2社から提案があったが、落札した事業者の提案によると、意匠、外観、建築計画、施設の維持管理計画、余熱利用計画及び発電計画、また焼却灰排出量、飛灰排出量の低減対策などの項目で他社よりすぐれていたと聞いている。
建設費は100億4,400万円、向こう20年間の運営費が79億1,640万円、総額179億6,040万円での落札となり、予定価格の210億円を大きく下回っている。年間のごみ処理量の計画は、ごみ焼却施設が年間3万588トン、不燃物の処理施設が年間619トン。本年2月~3月ころ実施設計の準備に入り、設計が終了次第公表する予定である。
【小林質問】 本事業はDBO方式と聞いている。このDBOというのは、デザイン・ビルド・オペレート方式と言うが、設計、建設と運営、維持管理を民間事業者に一括発注するというもので、公設民営の一つの方式。今回、このDBO方式で行うことについてどのようなメリットを期待してこの方式にしたのかという点について再度お伺いする。
【市民生活部長】 建設から運営まで一括発注ということで、非常に効率的に行える。また、建設をする業者と運営する業者が同じということは、中身も十分熟知しているので、より効率的な運営が期待できる。
【小林質問】 メリットは理解するが、その反面、事業主(穂高広域施設組合)の主体性が薄れて、ともすると民間企業にお任せというような、いわゆる丸投げに陥りやすいというデメリットがあるのではないか。今回設備の更新に当たって、引き続き狐島地区の御協力がいただけたということで、この建設場所についての心配がないなかでは、組合の取り組みに緊張感を欠く部分が散見される。DBOといえども、あくまでも事業主、建設主体は組合である。民間はあくまでも請負である。発注主体である組合がしっかりとした環境保全の意識を持って、施設環境保全対策の水準を具体的に示して指示をしていかなければ、請負った民間企業はこの基準値を超えなければいいんだと、コスト優先といったプラントの設計にもなりかねない。したがって、組合の姿勢というのは非常に重要だと思うが、心配ないか。実際に私も、この地元説明会にも出席したが、組合の姿勢で一番問題だと思ったこととしては、「請負業者が決まらないとどういう設計になるかもわからない」、何を聞いても相手任せというような答弁が続き、非常に不安を感じた。
というわけで、2番目の質問になるが、この新ごみ処理施設整備運営事業に当たって、穂高広域施設組合としての環境保全の目標について、これがしっかりと守られ、市民の安心・安全につながるものかというところまで含めてお聞きする。
【市民生活部長】 いわゆる「事業者に丸投げ」、あるいは、全てお任せということが起きないかということについては、民間事業者が実施する業務と、組合が実施する業務、これを明確に示している。事業者は当然設計、建設業務、また運営業務をやっていくが、穂高広域施設組合の役割としましては、こうしたものの事業の監視をしっかり明確にしている。したがって、事業者と共同しながら、よりよい施設の運営に関与していくと考える。
【小林質問】 それでは次に、新ごみ処理施設整備・運営事業にあたり、穂高広域施設組合としての環境保全の目標についてお聞きする。
【市民生活部長】 新設する焼却施設の公害防止基準は、平成28年3月に策定した新ごみ処理施設整備基本計画に基づき設定している。この基本計画では、法規制値等の遵守を基本として、周辺環境等を踏まえ、技術的にかつまた合理的に可能な範囲で公害防止条例の上乗せを検討した。
穂高広域施設組合が設ける公害防止基準は、ごみの焼却に伴い排出する排ガスには、ばいじん、硫黄酸化物、塩化水素、窒素酸化物、ダイオキシン類の基準値を、また、排水、騒音、振動、悪臭、粉じん濃度の基準値を設けている。新施設におけるこれらの物質の計画値は、建設候補地に適用される法規制値、また他施設の事例や、最近の公害防止技術を考慮して施設整備基本計画で設定している。新ごみ処理施設整備・運営事業要求水準書において基準値として遵守することを民間事業者に求めている。
具体的な基準値をとしては、ばいじんでは法規制では1立米当たり0.08グラム以下を、計画値では0.01グラム以下に。硫黄酸化物では約80ppm以下を50ppm以下に。窒素酸化物では250ppm以下を100ppm以下に、塩化水素が430ppm以下を50ppm以下に、また、ダイオキシン類1立米1ナノグラム以下が0.1ナノグラム以下に。振動では法的な規制はないが、昼間で70デシベル以下、夜間で65デシベル以下とするなど、法基準よりもさらに厳しい基準値を定め、それらを遵守するという提案である。
【小林質問】 法基準よりもさらに厳しい基準値を定め、それらを遵守するということだが、「だから大丈夫」と皆さんそう単純に安心できるものではない。計画値の数字は幾らでも出せる。じゃ、実際にそれに見合った施設がきちっと建設され、運営上もその基準を超えることなく安全に稼働させていくことができるかというところで、DBO方式とはいえ、そこに組合が公としてかかわっていく。穂高広域施設組合の存在意義にかかわってくるところであり、その点が非常に重要になるが、非常に心もとない感じする。宮澤市長は管理者として、こういった基準値を示して、これが守られれば大丈夫なのだ、というだけのこの現状の組合の取り組みの実態ということについては、不安は感じないのか。
【宮澤市長】 私は業者が責任を持って仕様書に基づいた設計をされる、運営をされるというようには信じておりますけれども、担当部長のほうから詳しく説明をさせます。
【市民生活部長】 机上だけの数字だけで、それで安全が保たれるかというのは、それはなかなか信用できない部分がある。そのために、まず一つは今回の水準要求書に基づいた提案を出してもらったので、基本的にはそれをもとに審査を行う。穂高広域施設組合でこれからどうしていくかというところであるが、これについては常時監視と定期監視というのは当然やっていこうと、特に排ガスについては、定期的な観測もやっていくということを聞いている。
【小林質問】 組合は事業主体として事業運営の内容を細かくチェックする体制をつくって安全性への信頼度を高める、という大事な仕事がある。DBO方式だから全てお任せということでは決してない。先ほどから指摘しているように、組合の取り組みの姿勢には実に課題が多いと思う。
そこで、3番目の質問だが、ごみの減量化や排出抑制に向けた市民意識の喚起にも役立つ排ガス連続モニタリングシステムの導入についてはどうか。現状でも当然連続的に監視できるものはやっているが、特にダイオキシンについてはそれが難しいということで、そこまでやっている前例が少ない。今回の新しい施設については、ダイオキシンを含めた排ガスの連続モニタリングについて、しっかりとやっていただきたいということで、お聞きする。
【市民生活部長】 組合は、新施設の整備に向けて、先進施設の視察を行ったり、参考事例を研究しながら、排ガス連続モニタリングシステムの導入、また排ガス表示板の設置について、新ごみ処理施設整備・運営事業要求水準書に盛り込んだということである。具体的には、ばいじん、硫黄酸化物、窒素酸化物、塩化水素、一酸化炭素等の放出される排ガス中の大気汚染物質の濃度を測定して、その結果を排ガス表示板で見ることができるものであっる。ダイオキシン類の前駆体を測定する連続モニタリングシステムの導入については、現状では考えてないという報告があった。
【小林質問】 ダイオキシン類の前駆体を測定する連続モニタリングシステムを設置する考えはないということだが、組合は「測るのではなく、出さない施設をつくるから、モニタリングは必要がない」という姿勢。しかし、測るのではなく出さない施設をつくるんだと幾ら叫んでみても、これはできる話ではない。どうやってそれを管理して、しっかりと見届けて、いつもいい状態で焼却施設が稼動すること、そこに組合の大事な仕事があるので、そこで必要ないと言われてしまうと、非常に残念だ。
ダイオキシンの前駆体として発生するものをはかることで、ダイオキシンそのものの量を類推するということでは、ダイオキシンの前駆体そのもの(ひとくくりにすると有機ハロゲン化合物)これが近年問題になっている化学物質過敏症にも大いに関係しているので、ダイオキシン類の測定も連続的にできるシステムをぜひ入れていただきたい。
予定価格の210億円を大きく下回って落札されたということでいくと、このシステムをつけてもそれほどの負担にはならないし、むしろ新しい時代に向けたすぐれたごみ焼却施設としてはぜひ必要だということで、市長、管理者として再度この点について組合と協議をし、検討していただきたいが、どうか。
【宮澤市長】 このダイオキシン類の測定につては、先ほど部長のほうから答弁をさせたように、1ナノグラム以下というのを0.1ナノグラム以下に抑える仕様になっている。そんな中で、ダイオキシンも法定では年に1回測定のところ、組合では年2回行うこととしている。ダイオキシン類の前駆体を測定する連続モニタリングシステムの導入については考えていない。
【小林質問】 非常に残念な答弁だが、それでは、現在既に常時モニタリングしている施設の運転のデータや環境測定のデータを、先ほども表示板を設けて常時見られるようにするという話があったが、それを組合に限らず、安曇野市初め構成自治体の庁舎というところで、関係住民がいつでも運転状況や排ガス状況を見られるような形で情報公開していく、これを検討いただけないか。
【市民生活部長】 私の立場からは、この場で「します」とは言えませんが、組合の事務局の方に、そのような提案があったということをお伝えしたい。
【小林質問】 先ほど市長がダイオキシンについては、法の基準では年に1回の測定だけれども、念を入れて2回やっておるという、こういうお話でした。確かに1回のところを2回やっているわけですけれども、それはやはりスポット的ですね。それ以外ではやはり疑問が残ります。そういう点では、住民は不安を感じるわけです。ところが、今回の施設更新では、狐島地区の皆さんの理解と協力があって、建設場所が決まったことから、住民に対して細やかな安全性の配慮ということにまで、考えが及んでいないのではないかと思います。これは逆に言うと、広く関係自治体の市民、住民の関心も薄く、ごみの減量なり、リサイクルなり、そういったことへの関心まで薄めてしまっているのではないかと思います。ここでこういう施設が稼働し、こういう状態で動いているんですよ、ということを関係住民さんに知らせるという意味でも、ぜひ各市町村でごみ焼却場の稼働状況が見られるというシステムを入れていただきたいということで要望しておきます。
【宮澤市長】 先ほど部長が、組合の事務局の方に提案を伝えると発言したが、市民の皆さんに情報を伝えることは大変大切だと思っているので、リアルタイムで排ガス状況がわかる表示板を、市役所等にも設置することについては、組合理事会等で検討する。また、関係する委員会のみならず、地元の説明会等については、業者も交えたしっかりとした説明会が必要だと思っている。より要望に応えられるような体制をとっていきたい。