無料低額診療事業と国保法第44条の「一部負担金免除」の運用について
~安曇野市議会12月定例会
小林じゅん子の一般質問(2)~
無料低額診療事業とは、低所得者などに医療機関が無料、または低額な料金によって診療を行う事業で、社会福祉法に定められているものです。低所得者、要保護者、ホームレス、DV被害者、無保険者などの生活困難、生活困窮にある人たちがその対象です。困っている人ならば、外国人であっても対象になります。
しかし、現在安曇野市内にこの無料低額診療を行う医療機関はないことから、安曇野市として国民健康保険法第44条の「一部負担金免除制度」の運用を検討する必要があると考えます。
気がつかないうちに貧困はすぐそこにある、そんな時代になってしまった現在、無料低額診療や、国保法第44条の一部負担金免除の制度を必要とする人にすぐ届くようにしておくことが大切です。
国保は社会保障です。経済的に困難な人に対する救済制度であるこの国保法第44条を、「命綱」の医療制度として使えるものにしておくこと、自治体の務めだと思います。
【小林質問】 市内には無料低額診療を行う病院がないので、国民健康保険法第44条の「一部負担金免除制度」の運用を進めるべきではないか。
【福祉部長】 生活保護などの既存の福祉制度の中で対応していくので、困ったときには先ず相談して欲しい。
【小林質問】 相談するにも、この減免制度は知られていない。必要とする人に届くように、広報や要件緩和の検討が必要ではないか。
【保健医療部長】 制度を周知するため市のホームページ等に、現状より具体的で分かりやすい内容を掲載していく。
【市 長】 減免の適用基準の緩和については検討していく。
《まとめ》
無料低額診療事業については、松本圏域では塩尻協立病院、松本協立病院の2カ所がありますが、安曇野市内には残念ながらありません。無料低額診療をするかしないかは、あくまでも医療機関の自主性に任されており、今のところ安曇野日赤病院には期待できない状況です。
それでは、次の救済策として医者にかかったときの一部負担金(1割~3割)免除制度はどうかというと、これを利用した事例は、過去5年間ではゼロだというのです。合併後、リーマンショックを経て生活保護世帯が急増した経過があり、経済格差が拡大する中で、生活保護に至らないまでも、ぎりぎりの生活だという人は増えているはずなのに、なぜこの利用がなかったのか非常に不思議に思います。
やはり基準が厳しいのではないか。とりわけ、保険料の滞納がないことというのはハードル高いです。経済的に困っているときに、保険料を納めなくてはいけないと思っても、やはり目の前の病気の治療のほうにお金が必要になるわけです。ですから、滞納があればだめという基準は緩和すべきだと思います。
国保法44条の「一部負担金免除」の運用については、市町村が独自にルールを決めてよいことになっていますから、この保険料の滞納がないことという条件を設けていない自治体は、実はたくさんあるのです。また、この一部負担金減免を行った場合、国から2分の1を特別調整交付金で補填することになっているということからも、適用基準の緩和を強く求めました。
そして、何より問題なのは、この制度がほとんど知られていない・知らされていないということ。かくいう私もこの無料低額診療の調査の中で初めて知りました。一般の市民の方はほとんど御存じないかと思います。いくらこういう制度があったとしても、知らなければ使えないということで、それはもう制度がないのと同じです。「制度を周知するため市のホームページ等に、現状より具体的で分かりやすい内容を掲載していく」との答弁がありましたので、注目していましょう。