「福祉のまち」地域包括ケアシステム

広島県御調町への研修視察報告

(1)広島県御調町(みつぎちょう)7月9日訪問
 御調町は尾道市の北側に位置し、町の中心部を芦田川支流の御調川が流れ沿川一帯には田園地帯が広がる。自然環境や人口 8158人でその産業構成から見ても、穂高町をそのまま小さくしたような町という印象である。しかし人口減の傾向や65歳以上の人口が増加傾向にあることなどから、早くから日本の少子高齢化への対応を図り、福祉施設の整備や在宅ケアに力を入れ「福祉のまち」として全国に知られている。
 御調町では病院と行政が一体となり、それに老健施設、在宅介護支援センター、訪問看護ステーシヨン、ケアハウスなどの諸施設、さらに住民が加わっての地域包括ケアシステムを構築し、保健・医療・福祉の統合を進めている。ハードがこれらの保健医療福祉の総合施設群であり、ソフトとして在宅ケア、健康づくり、住民参加などがある。総合施設群には在宅ケア支援機能をもたせ、施設サービスと在宅サービスがうまく連携がとれるようになっている。一例を挙げると、脳梗塞で入院し治療を受け退院できるところまで回復したが、障害が残り介護が必要になったという場合、福祉のサービスを利用しようとすれば役場へ行って各種の申請や手続きをしなくてはならないのだが、御調町では退院と同時に在宅介護がスムーズに進むように、病院と行政(福祉)が連絡を取り合って手続きも進めてくれているのである。
 ここで忘れてはならないのは、御調町に病院を作るということで36年前に赴任し「寝たきりゼロを目指す医療」をずっと進めてきたという山口医師の存在である。熱意とやる気のある人材を大事にしながら医療機関と行政が連携し、ボランティア活動や地域住民が加わり、いわゆる地域ぐるみで行われる理想型が、まさにここにあると思われた。この理想型と穂高町の現状を比較すると、その隔たりの大きさに戸惑うばかりだが、先ずは一つでも出来そうな事からやっていくことだ。私は、御調町システムが医療と福祉の壁をとっぱらうことからスタートした、その発想転換に最も学ぶべきであり、今ある穂高町の医療と福祉の現状を捉えなおし発想転換することが今できる最大の課題と考える。「穂高町には御調町のような大きな総合病院はないから無理だよ」ではなくて「まとまれば総合病院に匹敵する機能をもった優秀な医療機関がいっぱいある」と考えれば、なにかできることが見えてくるのではないだろうか。