明けましておめでとうございます

冬青によせて新年のご挨拶

 冬青(ソヨゴ)は、この辺りの雑木林にはいくらでも生えていて、森の下支えをしてくれているような地味な木です。真っ直ぐに伸びたものもあれば、曲がって地を這うような姿もあり、野生の生命力の強さを感じます。風にそよぐと、そよそよと音をたてることからソヨゴ「冬に青い」とはよく名付けたものです。
 夏場はほかの木々の緑にまぎれてあまり目立ちませんが、冬枯れのこの時期はつやつやした緑の葉が実に清々しく目に映ります。ところどころに揺れる赤い実の鮮やかなこと・・・ 写真は私のお気に入りの大きな冬青の木、鈴玲ヶ丘の森で写したものです。

 この冬青、松本から安曇野にかけての地域では、古くから染色に使われてきました。橙(だいだい)色から赤に近い臙脂(えんじ)色を染めたのです。赤や紅色は紅花を使って染めるのが一般的でしたが、紅花はとても高価でしたから、この地域では豊富にあった冬青を使うようになったのです。濃い緑の冬青の葉っぱで橙色が染まるなんて不思議に思い、試してみたことがあります。
 赤い実のなっている時期が最適ということで、寒中の葉っぱをグツグツと煮出しました。草木染では、すぐにその煮汁を使って染めますが、冬青の場合は特別なやり方をします。すぐには染めずに、煮汁を10日から2週間寝かしておくのです。煎じ薬のようだった汁が、日毎に赤みを増して最後には冬青の実のような深い紅色になったのには驚きました。神秘的ですらありました。この紅の汁に浸して染めたのが、冬青の写真の背景になっている橙色がかった桃色の和紙です。こんな優しい暖かい色が冬青に秘められているなんて・・・ 自然の素晴らしさと先人の知恵に心打たれた経験でした。

 森の下支えになっている地味な木、冬枯れに灯をともす生命力の強さ、秘められた優しく暖かい色、そんな冬青の木のように私も歩んでいきたい・・・ 大好きな冬青の大木の下でしみじみと念じたお正月です。
 そのあとネットで冬青の花言葉を調べてみたら、なんと「先見の明」だという。私の「先見の明」は、とてもじゃないがまだまだですが、日々努力を怠らず頑張ってまいりますので、本年もどうぞよろしくお願いいたします。