近江町では、この惨状をなんとかしたいと考え、平成12年にまちづくり事業の一環として、松枯木の伐採を目的とした「山林整備プロジェクト」通称「松枯伐倒隊」を編成。その後の活動のなかで、松枯木の伐採は非常に危険で素人集団では無理だという森林組合の意見により、里山整備活動へと転換していったものである。
平成13年には、近江町以外の入会者を受け付けるために「やまんばの会」を別につくり、平成15年3月末で、まちづくり事業としての「山林整備プロジェクト」を廃止し、平成15年8月にNPO法人となった。
会の目的は次の4点が挙げられている。
1、里山の保全
不用木を伐った明るい森には多様な自然が蘇る。
2、資源の活用
伐った木など森の資源の活用。薪ストーブの燃料や、砕いた枝と落ち葉を混ぜカブトムシの寝床を作っている。
3、希少種の保護
ギフチョウやササユリなどの希少種の保護。それらの動植物が生きられるような環境づくりを行っている。
4、自然体験・環境学習の支援 【やまんばの森学園】
自然体験・環境学習のサポート。やまんばの会では、これを「やまんばの森学園」と名付け、子どもから大人までのグループを受け入れている。
以上のような説明を、「やまんばの会」事務局長であり、近江町の職員でもある北村さんから受けたあと、実際の活動フィールドである「やまんばの森」へ案内してもらった。
「やまんばの森」は、よく管理がなされており、実に気持ちのよい森になっていた。この「気持ちよさ」はどこから来るのだろうと考えたとき、木材生産のためだけではない、環境保全のための、人間をはじめ’いきとしいけるもの’すべてのための森づくりをしているからだと気がついた。
日本の全森林の4割以上がスギ・ヒノキの人工林で、林業の不振から手入れもされず、放置されたところが非常に多くなっているが、穂高町でも同じ状況である。手入れを放棄された里山は次々と別荘開発されて、私有林となったまま、森林整備からは益々遠ざかっている。このままでは、観光資源としての「豊かな自然」や「木々の緑」はその価値を失い、治山治水といった住民の生命・財産を守る機能にも不安が生じるおそれがある。
私がこれまで「いい森」のイメージしていた京都・北山杉のような均一な森林が、これからの目指すべき森の姿ではなく、近江町のこの「やまんばの森」のような多様な生態系を育む針広混交林こそが、新しい森林整備のモデルになるということがよく理解できた。
また、森林整備に絡めて、子どもたちの自然体験・環境学習の支援活動を行っていることも、大変参考になった。穂高町でも、私有林を開放して子どもたちに遊びと学びの場を提供しているグループや、有明地域のクヌギ林を子どもたちのプレイパーク=子どもたちの好奇心や欲求を大切にし、やりたいことが出来る限り実現される場にするために禁止事項をなくした「自分の責任で自由に遊ぶ」遊び場、として使えないか模索している人たちがいるので、近江町の「やまんばの会」の取り組みを参考にして、もっと具体的な動きにつながるよう、私自身も働きかけたいと思う。