そこで、4月6日に情報公開について異議申立を行ったところ、5月16日の情報公開・個人情報保護審査会で審議されることとなりました。このときは「すぐには結論は出せない」ということで継続審査となったので、私はさらに口頭意見陳述の申し込みをしました。口頭意見陳述などというと難しそうですが、審査会に出向き委員の皆さんに対して自分の意見を話すことができるのです。
今日は午後4時から始まるというので、市役所本庁舎まで出掛けていきました。安曇野市情報公開・個人情報保護審査会の委員は5名。型通りの挨拶や自己紹介のあと、さっそく意見陳述。事務局の方からは「30分程度でお願いします」とのことばもあり、その場で自由に言いたいことを話してもよいのですが、ダラダラ話して焦点ボケしないようにと原稿を用意して臨みました。
以下がその口頭意見陳述で話したことです。
そもそも、なぜ、わたしが電磁的な音声記録を含む会議録の公開を請求したかというと、福井県生活学習館の性差書籍撤去:録音“公開”訴訟に関係しています。この訴訟は、福井市の県生活学習館「ユー・アイふくい」が上野千鶴子さんなどのジェンダー関連図書約150冊を撤去した問題で、これを議論した県男女共同参画審議会の音声記録(電磁的データ)を福井県が非公開としたのは不当だとして、上野さんら13人が福井県を相手取って、非公開決定の取り消しを求めたているものです。
福井県では「電磁的記録」は公文書とみなされず、非公開とされたのですが、他の県や市町村ではどうなっているかということで、私は原告団に協力して安曇野市で試しに情報公開請求してみたのです。
安曇野市男女共同参画社会形成推進委員会の会議録(電磁的な音声記録を含む)を請求したところ、会議録が出来上がった後に電磁的な音声データ(録音テープなど)は消去したので、ありませんと言われたいへん驚きました。
条例によれば電磁的な音声記録は公文書と見なされます。職員が言うには、ほんとに消去してしまってデータが無いということでしたが、公文書と見なされるのですから消してしまってはならないはずです。また、議事録、会議録などは、全文記録ではなく要約したものがほとんどなので、その元になっている音声記録は証拠書類としても重要なものです。
紙媒体の文字記録をもって公文書とする考えもありますが、その記録に疑義が持たれた場合、より再現性の高い録音テープなどの電磁的な音声データによって事実を確認するのはあたりまえの手続きです。「音声記録は議事録を作成するために、メモ的に利用したもの」との説明はありましたが、これは言い訳としか思えません。なぜなら、音声記録の作成にあたった職員の行為は、勤務時間中の公務であり、使用した機材も市の備品です。かつ録音は審議会委員のみなさんも承知のうえで行われているのですから、以上のような手続きで得られた記録を、メモ的なものとは言えないと思います。
安曇野市の男女共同参画にかかわる政策を方向付ける重要な会議の記録なのですから、要約した概要のみの議事録では記録として心もとなく将来に活きるものとなりません。委員や事務局の方々が真剣に議論を尽くされた、その貴重な発言の内容を余すことなく市民に公開することで、情報の共有がすすみ、それにもとづく合意形成が民主主義にとって最も大切なことです。
今回はたまたま安曇野市男女共同参画社会形成推進委員会の会議録でしたが、ほかの審議会などの会議録、議事録の録音テープや音声データをどのように扱うかは、特に規定はないとのことですので、今後このような事がないように、録音テープや音声データについても公文書としてきちんとした取り扱いがされるよう、安曇野市情報公開条例に基づいて適切な運用をしていただきたいと思います。
以上ですが、こうして口頭意見陳述したあとは、その内容について委員の方から質問などあるはずだと思っていたら、そうではなく意見を言うだけで終わりと聞き、ちょっと拍子抜けした感じでした。
それでも、委員長さんが「ほかに何か言いたいことがありますか」と聞いてくださったので、「住民のために住民の意を受けて行政は仕事をする。だからそのために集まってくる情報や必要となる情報は本来『市民のもの』。行政は自分のもののように思っているが、市民から預かっているにすぎない。情報公開請求があれば出すというだけでなく、行政側からすすんで情報提供するなど、積極的な取組みを望みます」と付け加えさせていただきました。公文書公開条例の目的に「市の保有する情報は市民共有の財産」と明記しているところもあるくらいですから。