安曇野菜園が使っているトマト栽培施設は、今から6年前、旧三郷村が国庫補助事業として20億円かけて建設しました。一般会計の予算規模が60億円程度の村で、20億円とは桁外れに大きい事業であったはずですが、その半分の10億円は国が補助てくれる。トマトはカゴメが10年間買い取る契約だから、確実に収益が上がる。毎年7000万円の施設使用料が村に入る。三郷村が負担する10億円のうち9億1000万円は借金になるが、国からの交付税措置などあるので実際の負担は6億8000万円ほど。利息を入れて7億円。毎年7000万円の施設使用料が村に支払われれば10年で元が取れる。など、いい話ばかりの見通しの甘い杜撰な計画はどんどん進んでしまいました。
第3セクターとして株式会社三郷ベジタブルを設立したものの、三郷村以外の出資者がなかなか決まらず、会社は始めから借金体質でスタートしています。トマトが出荷できるようになるまでの運転資金が足りないので、三郷ベジタブルは金融機関と三郷村との間でさっそく2億5000万円もの損失補償契約をしました。
安曇野市に合併した翌年の第3期決算は見かけ上は黒字でしたが、経営実態は赤字で施設使用料7000万円が払えないということで問題が表面化しました。市の監査が入ったのはもちろん、住民監査請求もあり、それに続く住民訴訟は今も係争中です。
現在7期目に入りましたが、経営改善はまったく進まず、累積赤字3億円以上で大幅な債務超過、危うい経営を続けています。企業として当然支払うべき施設使用料7000万円は、いまだ一銭も支払われておらず、今後も支払い困難であるとして2500万円に減額したうえさらに支払いを猶予してもらっています。
また、2億5000万円の損失補償契約については、自治体が借金の保証人になるのと同じことであるにもかかわらず、安易に使われてきました。そのことが、安曇野菜園の経営に対するチェック機能を低下させる要因ともなっています。結局、会社が借金を返せなくなれば、その借金の負担は行政に押し付けられ、行政が責任を取らされ、肩代わりしなければならなくなります。それは、ほかならぬ私たちの税金です。
今後もまったく使用料が支払えない経営状況であり、このまま漫然とした経営を続けていくならば、市に生ずる損害は大きくなるばかりです。
そこで質問です。
1、経営改善の正念場と位置付けた第6期の決算予測について
安曇野菜園の第6期決算は、3,800万円の赤字となる見通しが、09年8月18日開かれた安曇野市議会全員協議会で報告された。08年9月〜09年8月の同社第6期は、第1次中期経営改善計画の初年度として、省費用型生産で初めて黒字化する計画だったが、スタートからつまづいたかたちである。これまでの経営状況と決算内容をふまえて、第6期の決算をどう分析・評価するか。
2、安曇野菜園の今後の経営方針について
平林市長の最後の施政方針によれば、「第6期の決算予測は赤字。非常に残念だが、継続することを基本に経営や栽培技術の刷新のため市が支援をしていく。初期の目的達成を目指す。」と述べているが、のトマト栽培事業を継続するという判断をした根拠はどのようなものか。
3、経営責任、行政責任、政治責任について
09年6月17日の市議会一般質問で、市長は「経営責任と行政・政治責任は同列ではない」と答弁しているが、この三セクの成り立ち、構造上の問題から考えれば経営責任と行政・政治責任は不可分である。責任を明確にすべきではないか。
以上の3項目を基に、市長、副市長、産業観光部長と1時間をかけて議論しました。相変わらずの「噛み合わぬ議論」「すれ違い答弁」でしたが、まともに議論したら市長は安曇野菜園の三セク問題とその責任を認めざるを得ないので、論点をずらして「すれ違う」しかなかったのでしょう。
その「論点ずらし」の発言には首をかしげるような内容が幾つかありましたが、特に気になったのは「トマト栽培施設は、旧三郷村が村議会の議決を経てつくったもので、民意である。」という答弁。
当時の三郷村では、村長も議員も無投票で決まった人たちでした。選挙を経ていないのですから、民意だの住民の総意だのと言えるものか?強いて言うなら「無関心という民意」と言うことはできるかもしれませんが。
三郷村議会の議決も、議事録を見る限り、民意を意識した議論が行われた形跡はありません。そうであっても、いったん議決されてしまえば、それが「民意」ということになってしまうのです。
安曇野菜園の問題は、単に三セクの経営破たんの問題ではないということに気付いていただきたい。