「三郷ベジ」住民訴訟控訴審レポート〜その2

三郷ベジタブル関連住民訴訟の控訴審第2回口頭弁論

 控訴審第2回口頭弁論の報告です。「三郷ベジタブルの経営改善を望む市民の会」の横地泰英さんがレポートしました。

◆住民訴訟 控訴審第2回口頭弁論
 市側、行政裁量を主張/「三郷ベジ」行政訴訟控訴審

 09年12月21 日(水)14:00開廷 14:15 閉廷
 東京高裁 加藤新太郎裁判長
 控訴人側 小林純子 中島嘉尚弁護士 傍聴者3名
 被控訴人(安曇野市長)側 宮澤明雄弁護士 傍聴者2 名

 経営不振にあえぐ安曇野市のトマト栽培第3セクター・安曇野菜園(旧三郷ベジタブル)をめぐる行政訴訟は09年12月21日、東京高裁で第2回口頭弁論が開かれた。控訴人側は論点を絞った準備書面(9)を提出。被控訴人側はこの準備書面に反論する準備書面(1)を提出した。この中で被控訴人側は、①トマト栽培施設の使用料徴収は、徴収しないことも含めて、行政裁量にゆだねられる②指定管理者の施設管理費用負担、さらにそれによる利益を地方公共団体に納付するかどうかも、行政裁量によって決まる③安曇野市は起債者として元利金の支払いをしており、安曇野菜園が得ている(使用料不払いによる)利得との間に因果関係はない—など、建物使用が指定管理制度によるものであることを根拠に、行政裁量を幅広く認める法律論を展開した。これまで三セク側が認めていた行政への使用料支払い義務を帳消しにしかねない内容だ。三郷ベジタブル発足以来の経緯から見ると「後付け」「後知恵」の論理といえる。

 控訴人が準備書面(9)で強調したのは、賃貸借契約の違法性。「議会を無視した悪質な潜脱行為である」としている。施設使用料はもともと7138万円。三郷村と三郷ベジタブルが平成16年に締結した建物等賃貸借契約書でも賃貸借料を7138万円としていた。三郷村(安曇野市)は年額7270万円の起債償還をしなければならず、使用料を徴収しなければ、償還財源は失われてしまう。議会の議決を得るべきであるのに、使用料が賃貸借契約という形態をとっていたことから、議会議決を経ることなく、徴収を据え置き、猶予し、減額。さらに19〜21年賃料を平成26年まで徴収しないことを平成20年2月5日の「建物等賃貸借変更契約」で安曇野市と三郷ベジが勝手に取り決めた。

 建設に20億円もの巨費を投じた事業にもかかわらず、議決を経ないで執行できる賃貸借契約。平成20年2月5日の「建物等賃貸借変更契約」締結後の安曇野市一般会計には三郷ベジタブル(安曇野菜園)から入るはずの使用料は計上さず、支払猶予になったことも減額になったことも読み取れない予算となっている。被控訴人の反論準備書面(1)は、これら「からくり」の指摘に正面から答えていない。

 平成19年に出た三郷ベジタブル経営改善計画には冒頭「できるだけ早く市の損失補償契約による借入を返済し、併せて市への施設賃借料支払いを実現させる」と計画目的を説明。平成20年1月の「経営改善計画書」では第4期末(19年7月)債務として合計5億3630万円、うち使用料未払い金を2億6230万円とした。「債務弁済については、債権者の同意を得たうえで将来にわたり返済する額を確定する必要となる」としたうえで、施設使用料を「施設の減価償却費相当分とする」とし、10年間は年額2500万円、それ以降は1700万円とし、第8期(平成22年度)から利用料を支払うとした。これらの経営計画は議会の全員協議会で報告されただけだったものの、少なくとも「未払い金」が三郷ベジタブルの債務として累積していることは認め、平成48年に完済する計画としていた。

 しかし、今回市側が出した準備書面(1)では「使用料徴収は、徴収を行わないことも行政裁量で認められるべきだ」とし、指定管理者が施設の管理を行うために要する経費は Ⅰすべて指定管理者がまかなう Ⅱすべて施設設置者の地方公共団体の支出金でまかなう Ⅲ経費の一部を指定管理者が、残りを地方公共団体の支出金でまかなう、のいずれかの方法がとられる、としている。そして「本件においては指定管理者に対する管理業務の対価としての支出金が支払われないばかりでなく、会社から安曇野市への金員支払いが予定されている」とし、被控訴人訴訟代理人の意見として、「現時点から見るならば、三郷村・安曇野市が支出金を一切負担せずに会社から納付金を支払わせるという条件は、指定管理者である会社にとって達成が著しく困難なもので最善の制度設計であったとは言いがたい」としている。
 しかし、村や市が支出金を負担する計画であったならば三セク・三郷ベジタブル(安曇野菜園)の発足はありえなかったろう。そして、使用料ではなく納付金であると説明したところで、その納付金なるものが支払われる保証は、いまのところ見当たらない。

 安曇野市が出資している会社(第3セクター)の経営目的、内容はさまざまだ。「あり方検討委員会」が20年21年と続けて、これら三セクの経営の見直しをしている。指定管理の中身、市の支出金、利益の納付などはさまざまだ。「ほりで〜ゆ〜」のように、市に対して毎年かなり多額の納付をしている会社もある。三郷ベジタブル(安曇野菜園)には、そういった納付金という考え方はなく、自治体が整備した施設を使用するのだから使用料(借りるのだから賃貸借料)を支払うと考えていたのである。

 そもそも、三郷ベジタブルの発足当初は、指定管理制度そのものが、根付いていない部分があった。被控訴人側はこの訴訟の1審準備書面で「施設使用料の協定書等が一般的でなく、やむを得ず賃貸借契約という形式で使用料を定めた」と主張している。しかし、控訴審の加藤新太郎裁判長が第1回口頭弁論で賃貸借料の“読み替え”を「ナンセンスだよね」と辛口の評価をしたことから、指定管理の考え方について改めて全体をまとめ、一般論として本件にも当てはめたようだ。しかし、三郷ベジタブル発足以来の経緯からみると、後付けの感は否めない。

 今回の被控訴人は、安曇野市の宮澤・新市長。準備書面には新市長の意思、考え方が投影されているのだろうか。これでは、市が安曇野菜園の運営管理経費も支出することにもなりかねない。毎年7千万円を超える金額を起債償還に充てているにもかかわらず、施設使用料は一度も払われないまま、さらに税金を投入するなど考えられない。破綻処理には20億円を超す財政負担が掛かるとされる。三郷村との合併は、おそろしく高いものについたことになる。安曇野市民は、この状況を直視しなければならない。

※控訴審の第3回口頭弁論は3月10日(水)16時〜東京高裁