産廃施設めぐる請願が採択されるも意見書の提出ならず

意見書に代えて要望書提出、意見表明権を放棄する議員

市民タイムス2010年6月19日記事
市民タイムス2010年6月19日記事
 「㈱あずさ環境保全」の産業廃棄物中間処理施設の稼動に反対し、その許可申請を不許可処分にするよう、安曇野市議会として県に要請することを求める請願書について、その審査は市民タイムスにも報道された通りの異例の展開でした。特に「請願が採択されると議長名の意見書が議決され、議会の意思として関係先に提出するのが通例だが、今回は要望書にとどめる」や「施設をめぐる裁判で県の不許可処分を取り消す判決が確定しており、意見書で司法や県の判断に踏み込めない」という判断に関しては、私はまったく理解できません。 今日は6月定例議会の最終日、採決の日でしたが、この請願については3人の反対討論がありました。いずれも三権分立(権力分立)という基本、議会の意見表明権(注1)を忘れてしまったかのような内容でがっかりしました。
対する賛成討論は、私も含めこれまた3人が行いました。最終的には賛成20、反対7でこの請願は採択されましたが、意見書提出には至らなかったことは非常に残念でした。 以下は、私の賛成討論です。

◆請願 第10号「㈱あずさ環境保全」の産業廃棄物中間処理施設の稼動に反対し、その許可申請を不許可処分にするよう、安曇野市議会として県に要請することを求める請願書の採択に賛成の討論
先ほどの反対討論ですが「本請願は、懸念される、危惧される、おそれがある、可能性がある等の表現ばかりで、科学的、具体的根拠に欠けているので、採択出来ない」というものでした。
しかし、よくよく考えていただきたい。我が国の廃棄物処理問題、公害問題、環境汚染問題を振り返ってみれば、その全てと言っていいほど「懸念され、危惧され、おそれがある、可能性がある」という住民の訴えがありながら、放置された結果生じたものです。今ある環境基準は、それら多くの人々の犠牲の上に定められたといっても過言ではありません。つまり、行政が定めた基準は目安でしかなく、何か被害が出なければ変わらないという後追いの基準であり、絶対に安全というものではないのです。

ですから、基準を定め、許認可権を持つ行政庁とは独立した機関である議会は、その基準を鵜呑みにするのではなく、市民の立場に立って不安や懸念を取り除くために働かなくてはなりません。それこそが議会の務めです。権力分立の基本を言うまでもなく、行政と議会は独立した機関です。それぞれの持つ権限により、互いに抑制均衡がはかられることで、市民の生活が守られる仕組みになっているのです。
許可するかしないかは、県がその権限において判断することですが、県が判断するにあたっては、地元住民の思いや願いに耳を傾け、参考にすべきであり、請願というかたちで意思表示することはむしろ必要なことと考えます。

もうひとつ、反対討論のなかに「裁判において不許可処分は違法であると判決が下ったので、県は許可せざるを得ない状況にある」という意見がありましたが、この点についても必ずしもそうではないことを指摘しておきます。
裁判所は県の不許可処分が「違法」だと判断しましたが、それは、不許可にするべき理由について、業者側に対し説明や指導するなど、「申請者に補正等をする機会を与えなかった」ことに違法性を認めたからにすぎません。判決をよく読むと分りますが、「(県が)不許可処分にするのに相当な理由」、つまり「許可できない理由」がいくつかあることをはっきりと認めています。不許可処分は取消だが、申請書を出した時点にまで戻り、業者側を指導し、改めて審査し直し、許可・不許可の判断をしなさいということなのです。

したがって、「県は許可せざるを得ない状況にある」と決めてかかって、議会として意見すべきことを怠るようなことがあってはなりません。そのために、自治法99条には議会の意見書提出権を認めているではありませんか。今回、この請願が採択されれば要望書が提出されることになっていますが、要望書と言った曖昧な形ではなく、自治法99条に基づく意見書として提出されることを強く訴え、採択に賛成の討論といたします。

(注1)普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の公益に関する事件につき意見書を国会又は関係行政庁に提出することができる。(地方自治法第99条)