建設水道委員会視察報告〜その1〜

阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター

阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター
阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター
 安曇野市議会の建設水道委員会では、13日から15日までの二泊三日で視察研修に行ってきました。市のバスを利用しての大遠征でした。岡山県笠岡市は広島県との県境、バスで行くには気が重くなるような遠いところでしたが、学ぶところ多く考えさせられた三日間でした。

10月13日(水)
 神戸市 人と防災未来センター
10月14日(木)
 真庭市 町並み保存事業について
 笠岡市 線引き制度の廃止の状況について
10月13日(水)
 倉敷市 倉敷美観地区

 今回の視察の眼目は「笠岡市の線引き制度の廃止の状況について」、したがってどうしても広島県との県境まで行かねばならない。目的地が決まれば、あとはその周辺で見るべきところをピックアップしてまとめたのが今回の視察コース。
 7人の委員(議員)が、4カ所の視察地を分担してレポートすることになったので、私は神戸市の「人と防災未来センター」についてまとめました。2回に分けて報告します。

建設水道委員会視察報告 〜人と防災未来センター〜

はじめに
 神戸市中央区脇浜海岸通、ガラス張りの外観の中に透けて見えるコンクリートや金属の構造体が、無機質な幾何学形態を成す「人と防災未来センター」は、遠目にはまるで「建設中の建物か」と見えたが、ぐるっと正面に回ってみるとその設計のコンセプトが分かるような気がした。
 建物の周りに水を巡らせ、地震発生時の午前5時46分を指し示す時計を思わせるオブジェを沈めたそのたたずまいは、あの日、炎に包まれた街や人々を鎮魂するかのように見えた。燦々と太陽に照らされて在る今の姿は、近代的な都市の脆さを象徴しているようでもあり、暁のなかに浮かび上がってくる淡い光をイメージしながら、その時にこそ1.17被災者への追悼の思いが深まるのであろうと思いながら入口をくぐった。

1、「人と防災未来センター」の概要
 この施設は震災後7年を経た平成14年4月にオープンした。阪神・淡路大震災の記憶を風化させることなく伝え、そして災害の被害をできうる限り軽減する=「減災」の考え方を研究・普及すること、世界的な防災研究の拠点として、災害全般に関する有効な対策の発信地となること等を目的として設置されたものである。国の支援を受けて兵庫県が建設し、財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構が運営を行っている。

 一般市民向けには、映像や写真、ジオラマ、その他の膨大な資料により、阪神・淡路大震災と防災に関する情報を伝えている。たとえば「1.17シアター」は阪神・淡路大震災発生時の激しい揺れと、地震破壊のすさまじさを、最新の調査・研究に基づくコンピューターグラフィックス画像により、迫力ある大型映像と音響でリアルに再現している。「震災直後のまち」では地震直後の破壊された街を実物大のジオラマで再現し、実際に歩いて体感できるようにしている。「大震災ホール」では、地震から復興していく街を、被災し、姉を震災直後の火災で亡くしたある少女の目を通して描いたドキュメンタリー映像で伝える。

 隣の「ひと未来館」とは2階ブリッジでつながっている。こちらの施設は、入館者数の低迷により昨年3月に一旦閉館し、今年新たに「環境・防災」をメインテーマとして再スタートした。

2、「人と防災未来センター」の現在の状況

 「記憶し、学び、伝える活動体」をテーマに、吹き抜けのある5階建(5階は資料室)とし、1階吹き抜け→4階へ、1.17シアター・震災直後のまち・大震災ホール・復興への様子・震災を語り継ぐ・震災の記憶を残す・震災から学ぶ・防災情報→1階へと降りる構成で、震災の記憶や震災への心構えを学ぶことができる。

 阪神・淡路大震災から15年、すでにこの震災を実体験として知らない子どもたちが生まれ、その子どもたちに伝えなければならないという思いがこの施設に凝縮されている。
 地震は避けられないとしても、できる限り被害を少なくするための「減災」の研究を進め、さまざまな知恵や知識をわかりやすく発信し、災害に強いまちづくり、地域づくり、そして地震や自然災害等に対する備えに役立つ取り組みを行っている。防災や減災は政府や自治体の取り組む問題にとどまらず、私たち一人ひとりの地域コミュニティの大きな問題であり根源的な課題である。

 人と防災未来センターは、研究調査部、こころのケアセンター、学術交流センターと共同するだけでなく、国連をはじめ、いろいろな防災・減災に関係した組織とも連携している。つまり、日本はもとより世界で大きな災害が起こったとき、いち早く駆けつけ、何をするべきか助言と支援を行い、世界の一大拠点として役に立つ新しい情報をどんどん発信していくことを目指している。地方公共団体首長や職員を対象とした、自然災害を中心とした危機管理のあり方を学ぶ研修など、災害に関する実践的な人材の育成でも成果をあげている。

 その一方、2期工事として61億円をかけた「ひと未来館」の方は、過大な集客を見込んで建てたムダな施設との批判も強く、今年から「防災未来館」と「ひと未来館」は統合されることとなった。

(次ページへ続く)