三セク三郷トマト栽培施設・安曇野菜園への損失補償
最高裁は、高裁の「無効」判決を破棄/自治体の運用を追認
原告・小林市議「後ろ向き、時代に逆行」と批判
安曇野市出資の第三セクター安曇野菜園(旧三郷ベジタブル)をめぐり市が金融機関と結んだ損失補償契約の違法性が争われた上告審で、最高裁第1小法廷(白木勇裁判長)は2011年10月27日、「財政援助制限法に違反し契約は無効」としていた東京高裁判決を破棄、原告・小林純子市議の請求を棄却した一審の地裁判決も取り消し、訴えを却下した。判決後小林市議は「三セクへの財政支援は反省すべきだという全国的な流れに対し、後ろ向きな判決だ」と語った。
安曇野菜園は旧三郷村が荒廃遊休農地の解消、雇用創出などを目的に2003年設立。トマトの生産・販売不振で赤字が続き、今年4月から指定管理者になった農業生産法人に経営や資産を売却し、3金融機関の借入金を返済し、現在清算手続き中だ。このため損失補償契約に基づいて市が支出する可能性はなくなっている。最高裁は「公金の支出差し止め」という原告訴えは、現時点で判決を求める意味が存在せず、「不適法」になったと判断。この訴えに基づいた昨年8月の高裁判決を破棄した。
小法廷は「損失補償と債務保証は地方自治法などで区別されている」として債務保証を禁じた財政援助制限法の規定を損失補償に類推適用できないと指摘。安曇野市の契約を「違法で無効」とした高裁判決を「相当ではない」と判断。補償契約に問題あるかどうかは「自治体による裁量権の乱用」の有無で判断すべきだとした。自治体が金融機関と損失補償契約を結ぶ例は多く、判決は現行の運用を追認した形だ。
宮川光治裁判官は補足意見で「(債務保証を禁じた)制限法3条はGHQの指令で緊急的に作られたが、その後戸別の立法で徐々に禁止が解除されてきており、同条の存在意義は薄れてきている」と指摘した。これまた高裁判決の前から存在する考え方で、最高裁判決は「高裁以前」へのタイムスリップした印象だ。
2008年1月18日、長野地裁で第1回口頭弁論が開かれてから3年9か月。東京高裁での原告逆転勝訴をはさみ、今回最高裁判決で(残念ながら)住民側敗訴が確定した。
《なお続く安曇野市の起債償還》
判決後小林市議は「後ろ向き判決」と話した後、「二審で契約の違法性が認められ、国や自治体、金融機関に『いい加減なことはできない』と周知させるきっかけになった。むだな訴訟ではなかった」と振り返った。
そして「市はまだトマト栽培施設に充てた起債の返済を続けている。市に支払われるはずだった施設使用料3億円余も債権放棄している。これらは市民にとって大きな損害だ。裁判は終わっても住民の目で責任を今後も追及して行く」と話す。
宮沢宗弘市長は「市の主張が認められたことでひとまず安心している」とのコメントを出した。
約20億円にも及んだ税金〝むだ遣い〟の経営責任はいっこうに明らかになっていない。責任問題を明らかにする第三者委員会設置のための補正予算が付いたということなので、早急に進めてもらいたい。
県市町村課によると、県内市町村で出資比率が25%以上の第三セクターは、昨年4月時点で145法人。このうち自治体から損失補償を受けているのは15法人、補償残高は42億2千万円。