訴訟費用の請求問題で共同通信の取材を受けました

~共同通信配信記事-焦点特集「住民訴訟の訴訟費用」~
 先月末、共同通信社の原真記者から電話取材を受けました。訴訟費用の請求問題です。宮沢市長や安曇野市議会は、「判決に書いてある通りで、取り立てて考えるほどのことではない」という判断ですが、はたしてそれでいいのか再検討していただきたいものです。
 信濃毎日新聞にはまだ掲載されていませんので、(掲載されないかもしれませんので)ここでご紹介します。

◆2012年08月31日共同通信配信記事 焦点特集「住民訴訟の訴訟費用」
           自治体が敗訴住民に請求/提訴しにくくなると反発
 地方行政をチェックする住民訴訟で敗訴した原告住民に、自治体が訴訟費用を請求する例が相次いでいる。訴訟費用は弁護士報酬を除く、証人の交通費や印紙代などで、原則として敗訴した側が負担する。比較的少額のため請求しないのが慣例だったが、財政が厳しい中、支払いを求める市が出てきた。住民らは「住民訴訟を起こしにくくなる」と反発している。

 長野県安曇野市。合併前の旧三郷村が設立した第三セクターへの融資について、市が金融機関に損失補償を約束したのは違法だとして、小林純子(こばやし・じゅんこ)市議が提訴した。
 東京高裁は2010年、小林市議の主張を認め、市の補償を差し止めた。その後、三セクが清算され融資も弁済されたため、最高裁は「市が公金を支出する可能性はなくなった」と訴えを却下した。
 すると、市は訴訟費用約11万円を小林市議に請求。これを歳入に含めた補正予算を今年6月の市議会に提案し、可決された。宮沢宗弘(みやざわ・むねひろ)市長は「弁護士報酬だけで約720万円かかった。請求しないのは血税を無駄にすること」と説明する。  小林市議は「高裁判決が出たことで、三セクの清算が促され、市の損害を減らせた。住民訴訟は市政を良くするための仕組みだから、訴訟費用は自治体の必要経費」と支払いを拒否している。

 京都府木津川市も4月、市議選などの公費助成をめぐる住民訴訟で、大阪高裁で敗訴した呉羽真弓(くれは・まゆみ)市議らに訴訟費用約7万円を請求した。この訴訟では、京都地裁が一部の候補者らについて、余分に受け取った計約9万円を市に返すべきだと判断、その部分は一審で原告勝訴が確定した。呉羽市議は「住民訴訟の原告は勝っても利益はない」と指摘。逆に、勝訴部分の弁護士報酬を市に請求している。
 青森県弘前市が10年、訴訟費用を敗訴住民に請求したことが報道されてから、各地で同様の事例が続く。既に支払われたケースもあり、その額は大阪府枚方市で約20万円、裁判の対象となる市職員約1600人に書類を郵送した兵庫県宝塚市では約260万円に上る。  自治体関係者からは「住民訴訟が公務員バッシングに使われることもあり、負ければ訴訟費用を負担するのは当然」との声が上がる。
 一方、弘前市は住民らの抗議を受けて請求を撤回。長野県松本市では7月、「住民訴訟は住民の権利で、市が萎縮効果を考慮して訴訟費用を請求しないのは裁量の範囲内」との住民監査結果が出た。
 全国市民オンブズマン連絡会議の新海聡(しんかい・さとし)事務局長は「公益を図る住民訴訟の訴訟費用は原告に負担させないよう法改正が必要だ」と訴える。
 九州大大学院の木佐茂男(きさ・しげお)教授(行政法)は「訴訟費用の請求が許されるのは、原告が自己の利益を実現するために提訴したなど、不法行為といえるような場合に限られる。自治体側に襟を正す面があったときは、請求するべきでない」と話している。(共同通信編集委員 原真)

◎住民訴訟とは

 住民訴訟 地方自治法によると、自治体が違法、不当に公金を支出したり、財産の管理を怠ったりしたとき、住民は監査委員に是正を求めることができる。この住民監査請求の結果に不服があれば、裁判所に住民訴訟を起こせる。例えば、市長が公費で不要な接待を行った場合、裁判所はその費用を市に返すよう市長に命じる。勝訴した住民は、原告側の弁護士報酬を自治体に請求できる。被告側の弁護士報酬は勝敗にかかわらず自治体が負担する。