環境経済委員会視察報告~その2~

▲地産地消振興公社による農業研修の圃場

4、まとめ(研修の成果と所感など)
○公社は県単事業の耕作放棄地支援事業や耕作放棄地復旧活動支援事業を活用し、中間保有する農地の管理をするなかで、露地栽培野菜を中心とする実技研修を行うなどの人材育成事業に取り組んでいる。長崎市の農業事情をふまえてきめ細かく事業を展開している。たとえば、びわ畑、みかん畑は山の斜面に多く、もともとトラクターが(使えないので)持たない農家が多いので、トラクターによる耕転作業の受委託の斡旋など特徴的な取り組みが多い。
 もともと合併前の三和町の公社であった。長崎市と合併したことで、消費地であった長崎市街地と一体化し地産地消が拡大、活発化した。長崎市の食文化と観光振興の取り組みと相まって地域内流通システムが構築されつつある。
 長崎市の農業の実情、課題解決に向けては、公社の役割は大きいし効果的なやり方であるが、安曇野市の農業政策として取り入れるには無理があるのではないか。

 ○学校教育における食育も、これら地域の農業振興の取り組みの中で、大地に根ざした生き生きとした食育になっていた。

 ○長崎市水産農林部ながさきの食推進室の活躍ぶり、長崎市農業振興課のホームページ(ながさきのうりんウェブhttp://www1.city.nagasaki.nagasaki.jp/nogyo/index.php)の充実ぶりからして、情報発信の意気込み・熱意が感じられた。農業者向けの情報しかない安曇野市のホームページとは大きな差がある。農業生産品の消費地が市外や遠隔地にウェートがある安曇野市の地産地消の取り組みは、その広がり深まりに比して市民向けの情報発信やアピールが弱い。長崎市の情報発信、農業者と市民をつなぐ取り組みは大いに見習わなければならない。
 直売所運営に関しては、長崎市の「みさき駅さんわ」に勝るとも劣らないのが安曇野市の「旬の味ほりがね物産センター」だと再確認。

▲左手奥には地元農家の茂木ビワ栽培のハウスが見える。公社の中間保有は3~5年契約のため果樹栽培の研修ができないことが課題。

○今回の視察研修で長崎市を選んだのは、新規就農率84%という数字にあった。農業技術研修修了者76人のうち64人が就農している、というその就農率の高さにに着目したのである。実際にその数字の実態がわかって、安曇野市の新規就農率を向上には直結しないし、あまり参考にはならないように感じた。ようするに、新規就農の目指しているものが長崎市と安曇野市ではかなり違うのである。(長崎市が都市型近郊農業として、主業農家に限らず女性や中高年者の副業的農家も視野に、多様な担い手育成を目指しているのに対して、安曇野市は恵まれた農業条件のもと、農業を産業として確立し農業を「経営」として成り立たせることを前提とした新規就農・担い手育成である。)
 しかし、長崎市の農業政策=水産業、林業も含んだ農業振興と六次産業化(農業本来の第一次産業だけでなく、他の第二次・第三次産業を取り込む一次+二次+三次=六次産業)の取り組みとその方向性には見るべきものが多かった。ブランド力の強化という面では、観光関連部局との連携を密に進めている長崎市に学ぶところ大であった。

▲右手奥が農業研修の拠点となっている農業倉庫。圃場での実地研修が主体なので、施設としてそれほど不自由はない。