「車の両輪」も近づき過ぎると倒れる
豊科の大型パチンコ店出店~増田議員の一般質問をめぐって~
9月16日、安曇野市議会一般質問で、増田望三郎議員は市長に次のような主旨の質問をしました。「市長が大型パチンコ店の出店について知ったのは、本当に3月28日が初めてだったのか。市長の支持者から聞いた話では、市長は昨年10月の選挙前後から話していたとのこと。事実はどうか確認したい」
市長は激昂し形相を変えて一言(「何を言ってるんだ!」と聞こえたような気がしましたが)発した市長は、“断じてそういうことはないと断言できる。公の議場であるから事実に基づいて、噂でものを言うのでなく、誰がそういうことを言ったのか具体的に名前を明らかにせよ”と反問権を使って増田議員に迫ったのでした。
増田議員は、「“噂”ではない。出店のことを調べていて『市長から直接聞いた話』ということで、市民から得た情報である。その人の名は情報提供者の立場を守る必要があり、明らかにできない」と答えました。
その間、議場には多くのヤジが飛び交いましたが、議長はじめ誰からも増田議員の発言に異議の申し出は無く一般質問は終了。しかし、私は、騒然とした議場の様子から、これは議員の誰かから、あるいは市長から、発言撤回か懲罰の処分要求が出るかもしれないと、そんなことを考えていました。
その直後の昼休み、急遽、議会運営委員会(議運)が招集され「増田発言」が取り沙汰されることに。誰か議員が、あるいは議長が、「あの反問権でのやり取りは問題ではないか。発言を撤回したらどうか・・・」と、まず個人的に声を掛けてくるのが通常の対応なので、いきなり議運という展開に首を傾げました。そして、その議運が昼休みのうちには終わらず、なんと午後の一般質問を中断してまで再開され、それも秘密会で行われたというのですから、議運の混乱ぶりがうかがえるというものです。
ここで、まず私の見解を述べておきます。
今はなぜか一方的に増田発言だけが非難されていますが、増田議員は「早い時期に知った市長は、それを表沙汰にせず一気に承認してしまった、これは穿った見方でしょうか」、「事実はどうか、確認したい」、「(市長か自分か)どちらがうそつきかということですね」と、決して市長だけを断ずる言い方はしていません。
対する市長発言は「知らなかった」、「断じてそういうことはない」というものでしたが、いくら市長が「知らなかった」と言っても、その発言には何の証拠も裏付けもありません。
増田発言の情報源が確かなものか証拠を出せというならば、市長にも同じように議会として確認をしてからでなければ、どちらが問題発言なのかも決められないのではないでしょうか。また、市長も公の議会の場で増田議員の発言を嘘だ噂だと決めつけているわけで、問題発言というならお互いさまです。
議長はじめ多くの議員は市長寄りの姿勢で、市長の立場を守ることしか考えが無いようでした。増田発言は大問題だ、大変なことだ、重大問題だ、等々、発言の中身にふれずに決めつける発言ばかり。議会として、市長に投げ掛けられた疑惑についても明らかにしなければいけない、というような発想はみじんも感じられませんでした。
さて、16日の議会運営委員会に戻ります。いったい何でこんなに混乱しているのか、「議運の都合で議会を放ったらかして何をしているのか」と、私は市民に対して申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
夕方、議運の委員から「議長がこれから記者会見して経過や対応を説明する」と議運の決定を伝える電話があり、あれよあれよという間に「増田発言」のみを問題視するような記者会見が行われました。二元代表制の一翼を担う議会の立場と権威はどこにいってしまったのか、市長にモノ申す議長はいないのかと、非常に残念に思いました。
翌17日、本会議の冒頭、市長は前日の増田議員の質問について「増田議員はウソをついていると捉える」と発言。ここでも、増田議員を「ウソつき」呼ばわりします。
さらに次の18日、市長は議会に対し異例の申し入れを行なうことなります。「増田望三郎議員の一般質問の中で、市政に対し疑念・疑惑を持たれるような内容があり、市長の尊厳を著しく毀損される発言があった。二元代表制による議会という神聖な場所において、事実無根の極めて不適切な発言である」と、一方的に増田発言を事実無根=嘘だと断定しています。
19日の議運では、この市長の一方的な申し入れを無批判に受け入れてしまいます。増田議員から回答書を提出させ、増田発言のどこを取り消させるか、お詫びをさせるか等々の議論に終始しました。議運としては、全面的に発言取り消ししない増田議員に対し不満なようでしたが、「それでも増田議員がこの内容で提出するというのなら、市長に対してもこれで報告するしかない」というところに落ち着きました。
ただ、議会としてはこれ以上の追及はできないので、これで終わりにしたいが、それでも議会から市長に報告された増田議員の回答について、市長がさらに突っ込んでくるならば、議会としては対応せざるを得ないということも確認していました。
市長も言及している二元代表制ということでは、議会は市長と対等なのですから、「市長がさらに突っ込んでくるなら、議会として対応せざるを得ない」ということではなく、議会が市長に突っ込んでいく場面もなくては議会のチェック機能は果たせないのではないでしょうか。
一般質問の「増田発言」をめぐって、市長と議長が、市長と議会が接近し過ぎて、公平・公正な判断ができにくくなっているのではないか。「車の両輪」も近づき過ぎるとバランスを崩して倒れてしまう、私が危惧しているのはそこです。