安曇野市三郷温の太陽光発電施設の特定開発事業に関する公聴会

~会派「民心・無所属の会」は公聴会の開催を要望~

特定開発事業に関する市のホームページ 三郷温(ゆたか)の元SEIKOプレシジョン工場跡地に太陽光発電施設を建設するという、特定開発事業に関する公聴会が、さる1月23日に開催されました。特定開発に関する公聴会としては、安曇野市で初めてのこと。

今回、公聴会の開催について市民からの要望もあり、会派「民心・無所属の会」でも公聴会開催の申し込みをしました。この経緯については、増田望三郎議員のブログに詳しいので、下記リンクからご覧ください。

◆1月23日、太陽光発電の特定開発事業の公聴会を行います
http://bouzaburo.blog.fc2.com/blog-entry-190.html

◆太陽光発電施設の特定開発事業公聴会の報告
http://bouzaburo.blog.fc2.com/blog-entry-191.html

ここでは、私がこの公聴会で話した内容を報告しますが、最終的には市の土地利用審議会でこの開発事業の可否の判断がされます。

◆太陽光発電施設の特定開発事業認定について、小林純子の公述
事業者に意見を述べる前に、太陽光発電施設の建設に対する安曇野市行政の認識の甘さを指摘しておきたいと思います。
2011年の東日本大震災による原発事故の衝撃を受けて、再生可能エネルギー特別措置法が制定されました。この固定価格買取制度を機に急速に拡大しているのが太陽光発電施設です。

安曇野市においても、大規模なメガソーラーは、まだ少ないとはいえ、太陽光発電施設が次々と建設されようとしています。太陽光発電施設に関しては、都市計画法や市の土地利用条例には特に規制はなく、特定開発事業の認定を受ければ建設可能となっています。また、クリーンなエネルギーというイメージが先行しており、残念ながら安曇野市行政においても太陽光発電施設に対する問題意識はまだ薄いように見受けられます。

そんな市の実情がよく現われているやり取りが市議会でありました。東日本大震災直後の当時、2011年6月議会でのことです。宮沢市長は阿部知事が表明したメガソーラー事業の誘致に適した候補地が市内にないか、検討中であると県内77市町村長アンケートに答えたことについて、市民環境部長が県内でも屈指の日照量を誇る安曇野市としては、県の条件と合う適当な土地があれば誘致をしていきたいと市議会で答弁しています。

そこには、自然保護、景観や住環境の保護などの観点から、検討が必要だという慎重な姿勢は感じられず、市の土地利用条例の制定作業の中でも太陽光発電施設に関する検討はほとんどなされませんでした。そのため、固定価格買取制度が導入されてからというもの、安曇野市の豊かな自然環境と快適な住環境のなかに、野放図に建設されているようにしか見えない太陽光発電施設の実態は、非常に憂慮されるものです。

安曇野市では、2012年(平成24年)に初めて申請が出て以来、これまでに30件ぐらいの申請が出ていると思われますが、立地の適切性が問われる場所が多いように思います。太陽光発電事業は、短期間に建設でき、維持管理が比較的に容易であること、建設用地の原状復帰がしやすいことなどの利点があり、遊休地の活用策として注目を集めていますが、それだけに無秩序に開発が進んでしまう恐れもあります。導入には慎重な態度で臨む必要があります。

地球温暖化の問題もあり、自然エネルギーの期待というのは高まっていますし、また、市の後期基本計画の中でも自然エネルギーの活用を具体的な施策としてあげています。そういったことを踏まえれば、太陽光の開発をすべて否定するわけではありませんが、その手続において現状では特定開発事業の認定によることがほとんどです。素案の公告、縦覧、あるいは説明会を開催する、また、説明会の報告書も縦覧、また、意見書を提出といったような、丁寧な手順を踏んでいるように見えて、実際には「こんなところにどうして太陽光発電所ができてしまうの」と困惑せざるをえないようなケースも出てきています。市は、地域との調和を図りながら進めていくということが基本だとして、説明会を重視し市民に理解と判断を預けているかのようです。行政としての責任を果たせているとはいいがたい状況です。

そのような中では少なくとも、1件1件きちんとした審査を行い対応をしていただきたいと思います。
次に事業者に対する意見に移ります。
そもそも、わたしが今回の公聴会を願い出たのは、身近に思いがけない太陽光発電施設ができてしまったからです。それも、周囲に水田や安曇野らしい景色が見渡せる住宅地のまん前に建設されたのです。その場所は、市の土地利用の基本区域の設定では、田園環境区域とされているため、本来であれば太陽光発電所は建設できない地域です。

そこで、太陽光発電所を「特定開発事業」としての認定手続きが行われ、建設が許可されたわけです。その穂高有明立足地区に建設された太陽光発電施設の住民向け説明会に出席していた私の実感から、太陽光発電施設の開発一般にわたる問題として指摘しておきたいと思います。

事業者は温水プール施設を30年以上経営し地元に貢献してきたという強い自負心を持ち、クリーンでエコな太陽光発電は受け入れられるはずだという思い込みからか、非常に強気な姿勢で、説明会を進めました。住民からの疑問、質問に対して、誠実に回答する態度はあまり感じられず、「安曇野市の「特定開発事業」の手続きは松本市にはない、こんな規制をかけているようでは安曇野市はダメだ。自然環境や景観で食っていけるのか。」という発言もありました。わたしの個人的な感想としては、固定価格買取制度を当てにした駆け込み事業としか思えませんでした。

参加者のなかにはハッキリとした反対意見はありませんでした。といいますか、ハッキリ反対意見が言える雰囲気ではないという感じでした。それでも、景観への配慮、緑地帯の設置、発電施設内の環境維持(広大な施設内の除草をどうするか)、周辺道路の安全性確保、キュービクル(変電施設)等の騒音対策、そのほかいくつかの要望が出され、業者側からは「対応する」との一応の返答をもらいました。実際にどう対応してもらえるのか、しっかりと見届けなければと思っていたところ、なんと建設が始まってみると、事業申請した業者ではなく、今回三郷で事業展開しようとしているコムシス・クリエイト株式会社が事業主になっているではありませんか。

これはいったいどうしたことかと疑問に思い、調査してみたところ、先に公述をされた方の発言にあったような、不正の手段によって特定開発事業認定を取得したのではないかという疑義が生じています。コムシス・クリエイト株式会社は、そういった疑惑を知らずに事業承継したのか、非常に気になるところです。建設地の選定にあたってのコムシス・クリエイト株式会社の基本方針、当該地を建設地に選定した経緯と、当該建設地の土地利用権についてどうなっているのかを聞きたいと思ったのは、そういった不透明な経過があったからです。

今回お話した事例の真偽のはまだ分かっていませんが、そのことを別にしても、残念ながら、現行制度のなかでは無責任な事業者が参入してくる余地があるということです。「地域からのエネルギー転換」を推進するという国のうたい文句とはまるでちがって、太陽光発電事業が安曇野市にとっては単なる土地貸しで終わってしまう事態にならないように、しっかりと事業者の見極めをしていただきたい。