安曇野市議会3月定例会 小林じゅん子の一般質問(まとめ)
~香害=シックスクールに踏み込んだ対策を~
「香害」の問題を初めて一般質問したのは2018年6月議会。当時の教育部長の答弁は「香害の啓発活動といたしまして、議員ご指摘のように、保護者や業者の方など来校される方へ呼びかけるポスターを学校の玄関へ掲示すること、また保護者向けのチラシを作成し、配布することなどを検討してまいります。」というもので、行政答弁の「検討します」は、「検討した結果、できません」ということと理解していたので、その後一カ月もしないうちに保護者向けの香害啓発チラシが配布されたことには本当に感謝しました。
このチラシのおかげで、「においのことだし、個人の好みのことにはなかなか口出しできない、話題にするのも気が引ける・・・」と思っていた方々から、「香害で困っています」と口にできるようになってよかったと、そんな声が多く寄せられました。
2022年3月議会には、化学物質過敏症の市民の方から「化学物質過敏症の認識を広め、香害対策を求める陳情書」が提出され、市議会がこれを採択したことで香害の問題がより認識されるようになりました。この機を逃さず、私も香害をなくし空気環境をよくして健康被害を防ぐことに取り組んできました。
これら香害の健康被害は、建築材料等に由来する化学物質によって室内空気が汚染されることで発症するシックハウス、シックスクール症候群の枠組みで捉えることができます。以前は建材や備品等から放散するVOC、揮発性有機化合物が原因物質となっていましたが、これらの主要規制が徹底されてきた現在では、人の体や衣類等に付着して屋内に持ち込まれる柔軟剤、合成洗剤、除菌剤、消臭剤、制汗剤等の成分から揮発する数多くのVOC、揮発性有機化合物がシックハウスやシックスクール、そして今どきの香害の原因となっています。
従来の室内環境の検査では測定していない、TVOC、総揮発性有機化合物について、昨年11月から12月にかけて市役所本庁舎と香害で校舎内に入れない生徒が在籍する中学校で、参考測定値としてデータを取ってみたところ、いずれも厚労省の暫定目標値を超えており、シックハウス、シックスクールの危険性が危惧される状況が見えてきました。簡易測定器で測ったので、あくまでも参考データということですが、安全基準値の2倍、3倍出ているところがたくさんありました。そこで、今回の一般質問では、簡易測定ではなく正確なデータが取れる方法で検査をすべきだと訴えました。
【小林質問】 前は建材や備品等から出る揮発性有機化合物(VOC)がシックハウス・シックスクール・香害の原因物質だったが、規制が徹底されてきた現在では、人の衣類等に付着して屋内に持ち込まれる柔軟剤、合成洗剤、除菌剤、消臭剤等の成分が原因となっている。市役所と化学物質過敏症の生徒がいる中学校で、TVOCの簡易検査をしたところ、いずれも厚労省の暫定目標値を超えており、シックハウス等が懸念される状況だ。正確な検査をすべきでは。
【教育部長】 従来の基準に基づいた検査を実施し、学校環境の維持に努める。
【総務部長】 市役所では法定の検査を2カ月ごとに実施。適正基準に納まっているので現時点では考えていない。
【小林質問】 香害の影響で登校困難な児童生徒がいる学校では、健康的な環境で教育を受ける権利を守るため、教職員には柔軟剤と合成洗剤を使わないよう教育委員会として指導すべきではないか。
【教育長】 香害について皆が理解を深め、一人ひとりの思いやりが集まれば、柔軟剤や合成洗剤を使わないようになるのでは。一律に「柔軟剤等を使わない」という指導はしない。
【小林質問】 香害やシックスクール等の予防のための基本的な取り組みは。
【総務部長】 学校で使う手洗用洗剤は、ここ数年で天然由来成分の石けんが増えており、今後も石けん使用を進めていく。
【総務部長】 本庁舎では、可能な限り人体に影響を及ぼさない製品(天然由来成分で無香料・無着色のもの等)を使っている。
こうしてみると、ただちに香害の啓発チラシを配布した2018年と比べると、香害やシックスクール・シックハウスを防ぐための教育委員会や市行政の取り組みは、空気環境の悪化を直視しようとせず、後退しているとしか言いようがなく、非常に残念です。