安曇野市の三セク8社の経営内容を点検(2)

安曇野市出資法人あり方検討専門委員会を傍聴して

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◆安曇野市に対する提言◆
《短期対応の必要事項》
①経営計画の進捗管理体制強化
②施設使用料7,100万円は支払い不可能で10年間は年2500万円、11年目以降1700万円として経営を成立させる計画。市の対応は存否にかかわる重要事項である。市の農業政策との関連性や適法性、財務制度上の妥当性などの観点から市が総合的議論をへたうえで判断するべきものだ。

《中長期対応の必要事項》
①事業経営 経営不振の背景に三セクのぬるま湯的体質がある。計画が達成できなければ、現法人による事業の継続は断念するべきである。事業内容の転換可能性を関係機関と協議した上で、可能ならば新たな企業を求めるなど、最大限の努力が求められる。
②施設 将来、施設の更新などで新たな公費負担も想定される。施設を行政財産として持ち続ける可否も検証しなければならない。 

◆検討委のおもなやりとり◆
佐々木委員 新計画は資金がタイトだ。農地を借入で買うといっても、市は債務保証をしない。10期が終わっても長期借入2億円以上。生産計画がうまくいかないと大変だ。賃借料2500〜1700万円も本当に払えるのか、危惧する。

河藤委員長 7100万円から落とせるのか。財務関係上、適法か。市民に対して理解を求めることが必要だ。経営改善計画が俎上(マナイタ)に乗る。市としてまず判断しなければならない。きびしい状況にあり、客観的事実に立って政策を講じないと。

花村委員 付加価値やコストダウンなど、三郷ベジタブルのマネージメントは弱い。現場が甘い。ふつうなら、とっくにつぶれている。どう強化するか。収品とかモノづくりの力をつける基本強化が求められる。可能性はある。いままで何もやってないから。現状では前向きの話はしにくいが、現場は気概をもってほしい。

平尾委員 ぬるま湯的体質。出口がカゴメ1社。マネージメント不在。綱渡りの第1次計画の改善版が出た。再度の改善版というようなことはあってならない。まずカゴメと対等交渉が必要だ。新品種キャンディースイートは大切。入札制度など、できるものは実行にうつすよう。

佐々木委員 農地取得は県と協議が必要だ。できれば賃借の継続、あるいは先延ばしを、市に間に立ってもらって…。

花村委員 むずかしい。経営改善はお金をかけずにできることも考えたい、キャンディースイートにいいネーミングをして販路を確保、拡大する。宿泊施設や学校給食でも安曇野トマトを使う。

平尾委員 三郷ベジタブルの名称変更を考えたい。市の基本計画に位置づけ、あらゆるところで売るとか。三郷でなく安曇野の重要施設とする。計画はきついが、経営陣が退くことも含め「新生○○」にする。

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 検討委は、安曇野市の三セク8社を対象に、あり方を検証した。㈱ファインビュー室山、㈱ほりでーゆー四季の里、社団法人豊科開発公社、財団法人豊科文化財団、三郷農業振興公社、財団法人三郷開発公社、㈱三郷ベジタブル、穂高温泉供給株式会社。
 経営不振が深刻なのは、三郷ベジタブルと三郷農業振興公社。なかでも三郷ベジタブルは事業規模が大きく、累積債務も巨大、カゴメとの関係など複雑で解決困難な問題を抱えているのが際立つ。三郷農業振興公社も恒常的赤字で資本を食いつぶしている状態。危機的な経営で、市から多額の補助を受けながら、一部農家にたい肥を無料還元するなど「著しく公平を欠く」経営をしている。

◆傍聴しての感想◆
 三郷ベジタブルについての検討委報告書案、それについての議論は多岐にわたり、絞りきれていない。施設使用料の減額問題、県公社の農地取得、累積赤字の処理、新品種キャンディースイートをはじめトマト生産性の向上、カゴメ㈱との関係修復、これまでの不振に対する経営責任、行政責任。どれも簡単には答えが出ず、経営改善計画はあらまほしき姿を描いたもので、実現可能性は高いとは到底いえない。

 検討委の分析や考え方も問題ごとブレがあり、「雇用創出などで一定の公益性は果たしている」などと、三セクとして持続・存続を匂わせるような方向の発言もあった。
 カギを握るのはカゴメかもしれない。トマト栽培、プラント経営のノウハウを持ち、三郷ベジタブルについても相当に知り尽くしているはずだ。そのカゴメと元社長はうまくいっておらず、技術的な援助や秀品の受け入れなどギクシャクが目立ったという。安曇野市の最高幹部は、高度の政治性を発揮し、カゴメと突っ込んだ協議するべき時期ではないか。