野宿者への緊急支援実施の申し入れ

26日には「安曇野市緊急経済対策会議」を設置

 昨秋、松本で講演していただいた湯浅誠さんが、その著書『反貧困—「すべり台社会」からの脱出』で「大佛次郎論壇賞」を受賞したと聞きました。単に「受賞おめでとう」ではなく、この時期にこの本が評価されることで、貧困問題に関心が集まることになったのはよかったなと思います。
 そこに書かれている深刻な現状は、身近なところにも起こっているのではないかという不安は、松本での講演会場で現実のものとして目の前に現れ、ここ安曇野市も無関係ではないという切迫したものを感じたのでした。

 そこで、今日は「生存を支える会(仮)」の一員として、安曇野市へ野宿者への緊急支援実施の申し入れを行いました。事実上の代表といってよい八木さんと私、それにもう一人の会員と3人で、市民課、福祉課、商工課、総務部、企画財政部の5ヶ所をまわって、部長、課長に申し入れ書を渡し、話をしてきました。行政としてもできる限りの対応を考えなければいけないとの認識を持ち、検討しているところだとのことでした。

 松本市や、全国各地の取り組みが伝えられるなか、安曇野市としても「しっかりとした」「安心感」の持てる支援策をという思いもあってか、温かみのある積極的な姿勢が感じられました。
 明日26日の早朝8時から部課長会議で、市としての対策、支援策や、各部課での対応、連携など共通認識を固め、その後11時から市長が記者会見して発表することになっていると聞きました。

※26日の11時から市長が記者会見して発表するというので、記者会見に行ってきました。市長を議長とする「安曇野市緊急経済対策会議」を設置したということです。市長にも確認しましたが、「とにかく困っている人がいて、助けを求めている場合は、住民登録だとか手続きがどうこうとか言わずに、出来る限りのことをする。路頭に迷わせるようなことはしない」と、明言されました。
 27日の市民タイムスにも、市長が仕事納めで「弱い立場の人たちの話をしっかり聞き、できるだけサポートする。これまでの規則にとらわれず取り組まなければならない」と話した、とありました。

以下、申し入れ書の内容です。

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◆野宿者への緊急支援実施の申し入れ

 報道されているとおり、この冬、全国で数十万人といわれる人々が失業しようとしています。長野県は厚生労働省が把握しているだけでも1600名の解雇が決定しており、これは全国で4番目の多さです。しかも様々な資本工場における「削減」人数は、日を追うごとに増えています。

 とりわけ深刻なのは「寮完備」の条件で全国各地から集められた派遣労働者たちです。彼・彼女らは解雇と同時に住居を失います。また彼・彼女らは、そもそもの低賃金から高いマージンや寮費が天引きされることによって、貯蓄や所持金が殆ど無い場合も多く、個人の力で賃貸契約を果たすことが困難な事も少なくありません。

 今、この安曇野市の周辺地域でも、派遣切りで住居を失った労働者が現実に私たちの目の前に現れ始めました。松本市においては、すでに神林の雇用促進住宅は受付開始からたったの3日間で満員となっており、今後、民間住宅を利用した入居支援が開始されたとしても、入居までには一定の時間がかかるものと思われます。
一方で、セイフティーネットの最後の砦である生活保護も、申請から開始までには1か月近くかかることが多く、「今日からの屋根」を確保するための力とはなっていないのが現状です。

 それらに要する期間の居住ないし宿泊が、いまのところどのような制度・組織によっても保障されていません。現在、失業・失宅した人々に与えられた選択肢は、路上で凍死する危険か、残り少ない所持金をネットカフェやカラオケボックスに費やすことで餓死する危険か、の二者択一しかありません。

 住宅への入居が困難な仲間が「今日から」宿泊できる施設の確保は、今や行政以外には実施不可能な急務となっています。それでも彼・彼女らをこのマイナス10度にも及ぶ信州の路上に放置し、凍死させるわけにはいきません。

そこで私たちは、この冬に解雇され、住居を失う人々への緊急支援を、市に対して求めます。取り急ぎ、以下を提言し、実施を要請します。

1.失業によって住居を失った人に市の管理する施設の一部を開放し、他施策による入居までの宿泊に供すること

2.これが困難な場合は宿泊可能な民間施設(カプセルホテル・サウナなど)の宿泊券を配布すること

3.上記「1」「2」の利用にあたって利用資格審査や手続きに日数を要しないものとすること

4.12月27日から1月4日までの閉庁期間において、上記の取扱いを可能とし、かつ生活保護申請を受理可能な臨時相談窓口を設置すること

5.生活保護申請があった場合、従来以上に迅速な審査により保護開始日までの期間短縮を図ること

6.生活保護法第19条に則り、野宿者を生活保護の対象として認めること

7.「4」の期間に食糧の配布を行うこと

8.市内の職業安定所に対し、民間住宅を活用した入居支援の早急な実施を求めること

9.その他、必要な措置を取るため、部局を横断した対策本部を設置すること

10.さらに、以上のような必要な措置を取るため近隣市町村との連携を深めること

2008年12月25日
生存を支える会(仮)           
小林 純子 0263−83−4387
八木 航 080−5141−4694