住民訴訟の敗訴市民に対する訴訟費用請求の撤回を求める請願

~安曇野市議会総務委員会は「不採択」~

 安曇野市を考える市民ネットワークの横地泰英さんから総務委員会の傍聴記が届きましたので、ご覧ください。

 安曇野市議会9月定例会は12日、総務委員会(松尾宏委員長・委員7人)を開き、「三郷ベジタブルの経営改善を望む市民の会」から出された住民訴訟の敗訴市民に対する訴訟費用請求の撤回を求める請願書を審査。市民の会の諌山憲俊代表世話人から請願の意見陳述を聞き、2007年から2011年にわたる裁判への取り組み、市民運動の展開などについて考え方などを聞いた。その後、宮田聡総務部長に市長の考え方、市としての対応決定などを聞いた。
 午後2時半過ぎ、採決。若干の曲折はあったものの、共産党市議団の委員が賛否表明に加わらなかったことから、請願採択に賛成は2人にとどまり、不採択となった。定例会最終日の9月25日本会議で採決となる。不採択の見通しだ。 

諌山氏への質問は主に次の通り。
① 意見陳述に「私達」とあるが、裁判に入る前の監査請求に加わったのは複数市民。地裁原告は2人、高裁からは1人。なぜ1人の市議にゆだねたのか。
② 原告は1名、しかも議員。議員にはさまざまな権限があり、議会という場で対応できる。裁判になったことで、議員が議会で質問しても答弁は「係争中」、情報公開しても真っ黒でわからないなど、議会の妨げになった。住民訴訟を起こすことをどう判断したか。
③ 戦術上1名に絞ったというが、議員として売名行為だという見方もある。

諌山氏は次のように説明した。
①について  当初第3期決算が仕掛品により黒字を生み出していること(粉飾決算)に気づき、小林純子市議に調べてもらい、住民監査請求となった。20人くらいだったと思うが市民が監査請求に名を連ねた。提訴時に原告を2名、その後1名にしたのは、戦術として絞った。
②について  議員は議会だけで活動するわけではない。市民運動や地域活動に活躍するのも議員の仕事。そういう議員は数多くいる。
③について 住民訴訟はやってみると、ハードルは高い。法律知識が要るし、弁護士との打ち合わせもある。監査請求から住民訴訟の提訴までの制限時間は短く、議員が先頭に立ってくれ力になった。

 午後1時から始まった委員会審査は午後2時すぎから反対・賛成の討論となった。
 請願に反対の意見は、「請求があれば予算に歳入として計上すのは理解できるし、すでに6月定例会で決まっている」、「6月定例会で訴訟費用の予算に修正案が出たが否決された。この問題は司法に裁かれたことで動いた。裁きに市が乗っただけ」、「どんな裁判であっても敗けた側には請求するというのはどうかと思うが、議員は議会という活動の場があり訴訟を起こすというのはいかがなものか」

 賛成意見は「監査、訴訟と一議員ができるかぎりのことをやった。予算審議や一般質問でもそれを説明した。損失補償を無効とした高裁判決は、影響力があった」、「住民訴訟が果たした役割は大きい。6月議会で訴訟費用請求の予算を可決したのは事実だが、執行部は市民の声を受けて考え直すことは可能」など。

 共産党市議団の委員は討論で賛否を表明する前に「まだ不十分不明確な部分が多い」と継続審議を提案。賛否同数となり、委員長が採決に加わり継続審査にはならなかった。再開した請願への討論でも同委員は採決に加わらず退席、結局反対が3人、賛成は2人で請願は不採択となった。
 請願反対委員がそろって主張した「議員には議会という活動の場がある」という論理は、きわめて分かりにくい。「だから、どうだというのか」、奥歯に何かが挟まったようなやりとりが続き、傍聴者には、次元の低い理屈が透けて見えるイライラ審査だった。
以上、横地さんの傍聴記でした。

 この委員会を私も傍聴していましたが、訴訟費用の請求はどうあるべきかということより、「議員が住民訴訟を起こすことはいかがなものか」というところに論点がずれてしまった(ずらしている)ように思えて仕方ありませんでした。
 特に、「議員にはさまざまな権限があり、議会という場で対応できる。裁判になったことで、議員が議会で質問しても答弁は「係争中」、情報公開しても真っ黒でわからないなど、議会の妨げになった」という趣旨の発言には、わが耳を疑いました。あまりにひどいので、以下、「議会の妨げになった」ことなどありませんという、わたしの反論を記しておきます。

1、 議会という場で対応できるのに提訴した→全員協議会、一般質問、予算審議、決算審議等、議会の可能な限りの場面で私は発言し問題提起しましたが、議会全体で取り組む動きには至りませんでした。本来ならば、議会の調査権で百条委員会を設置すべき事案ではなかったでしょうか。

2、  議員が議会で質問しても答弁は「係争中」→私は「係争中」と言われて引き下がったことはありません。きちんと答弁させてきました。「係争中」と言われて、質問しなくなったのはだれだったのか。

3、  情報公開しても真っ黒(非公開)でわからない→非公開に対して異議申し立てを行い公開させました。

※請願書には、井上善雄弁護士の論文「住民訴訟と訴訟費用原告住民負担判決」を参考資料として付けたということですが、私としては以下のくだりを強調しておきたい。

「住民訴訟と訴訟費用原告住民負担判決」 井上善雄弁護士の論文より

 1980年代以前は、弁護士のような職業人、自治体の議員、政党人又は政治家、社会活動家といった人々が住民訴訟の原告となって支えられていたのが実態である。1980年代以降の市民オンブズマンの運動により、報酬を求めず、実費レベルのプロボノ型弁護士が全国で活動を拡げた。

 それでも住民監査と住民訴訟への無理解や反感は自治体(首長、職員)から議員にも強かった。住民訴訟は「違法性」「不当性」があると指摘される首長以下職員、企業、個人からはもちろん、新法の下で相手方となる被告の行政の長からも疎まれることが多い。

 一般住民も司法(当局)の無理解、冷たさの下で「裁判沙汰」と怖れる感情が強い。わざわざ自ら「志願」する住民訴訟は、逆に少数者、あるいは「天の邪鬼」と誤解されてか「変人」扱いすらされてきた。