太陽光発電施設の乱開発 規制できるか

2018年8月31日 23時56分 | カテゴリー: 活動報告

~山梨県北杜市を視察しました~

Wさん宅に近接して設置されたソーラーパネル。単管パイプを組んだだけの危険な施工。

山梨県北杜市は、早い時期から大規模太陽光発電に着目し、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構 New Energy and Industrial Technology Development Organization)の委託事業でメガソーラー発電の実証研究に取り組んできましたが、東日本大震災後の旧FIT法(再生可能エネルギー特別措置法)をきっかけに、太陽光発電施設の乱開発が進み社会問題となっています。条例での規制を議員提案で検討してきた経過もあり、現状と規制の方向性について学ぶことを目的に視察しました。

 

《視察概要》
実施日:2018年7月17日
視察地:山梨県北杜市

10:40     小淵沢駅着
11:00~11:40   太陽光発電施設の不法建設問題で業者を訴えている北杜市民Wさんを訪問し、現場視察。

12:00~13:50   昼食~移動しながら太陽光発電施設の設置状況を見る。
14:00~14:45   北杜市役所にて、明野町で太陽光発電の勉強会を主宰してきたSさんと懇談。

15:00~15:40   明野町の太陽光発電施設の現場をSさんの案内で視察。(急斜面に設置、事業者が住民協定拒否等々の問題を抱えている)

16:15          視察終了・小淵沢駅発

※北杜市議会の野中真理子議員と栗谷真吾議員、知人のFさんに案内をお願いしました。

最初に伺ったWさんは、南アルプスと八ヶ岳の素晴らしい眺望と、豊かな緑に恵まれたこの地に魅せられ、10年ほど前に移住してきたということです。ところが、3年前のこと、隣地で太陽光発電の事業が持ち上がり、そればかりか次々と周囲の土地に拡大し、庭の境界のぎりぎりまで高さ3メートルはあろうかというソーラーパネルが並んでしまったのです。大自然の景観、眺望は台無しとなり、通風や日差しも遮られ、パネルによる熱輻射は夏場には耐え難いほどだといいます。

北杜市まちづくり条例に基づき、開発事業については一定の手続きにより規制がかかるようになっていますが、この事業者は法令遵守の意識無く条例無視で工事を進めているため、Wさんは、眺望権、財産権、平穏生活権等が侵害されたとして提訴、裁判はまだ続いています。

明野町の太陽光発電施設の現場を案内して頂いたSさんの話にも、「まちづくり条例はあれど、太陽光発電事業の規制ということでは機能していない」ということがありました。じっさい、良識のあるまともな事業者であれば、こんなヒドイ施設は作るはずがないというような、危険な立地、杜撰な施工の太陽光発電施設がわんさとあって、ほんとうに驚きました。「北杜市まちづくり条例」がちゃんとあるにもかかわらず、太陽光発電施設のこの惨状。太陽光発電施設のこれほどの乱開発を想定していなかったのかもしれませんが、条例の運用にも問題があるのではないかと、Sさんのお話を聴いていて思いました。

北杜市まちづくり条例(平成23年10月1日施行)の第1条(目的)には、北杜市のまちづくりについて、その基本理念を実現するための施策の策定、土地利用及び建築等に関する事項を定めることにより、秩序ある土地利用及び市民参加によるまちづくりを推進し、もって優れた自然と美しい風景に調和した北杜市の創造に資することを目的とする。とあり、「市民参加によるまちづくり」が強調されているのですが、Sさんのお話を聞く限り、市民参加する場面(住民への説明会や意見聴取、開発事業者との調整など)が、充分に確保されているとは言えないようです。

安曇野市では、安曇野市の適正な土地利用に関する条例(平成23年4月1日施行)がありますが、この条例で太陽光発電施設の開発規制ががっちりできるかといえば、やはりそう簡単ではありません。しかし、住民への説明会や意見聴取など市民参加する機会が確保され、開発事業者との調整ができる場合もあり、ムチャな事業計画には(ストップとはいかなくとも)ブレーキをかけることができていると見ました。

北杜市では、太陽光発電の乱開発に憤る市民たちが議員を動かし、昨年の6月議会に議員有志が「太陽光発電設備に関する条例」を議員提案にこぎつけたのですが、しかし、審議未了で制定には至らず。現在も研究、検討中とのことです。もうすでに乱開発で痛い目にあっている市民にとっては、土地所有者にも公共性への配慮を求めることは必須なのですが、これは土地所有者の権利を侵害し憲法違反となりかねず、条例化はなかなか難しいようです。

現在稼働中の太陽光発電施設は約1,500件、今後稼働が予定されているものに至っては3,500件以上あると聞けば、市民でなくとも大きな不安と憤りを感じます。これが「自分の土地に何を建てようが勝手でしょ」の行き着いた先の姿だとすれば、それに対抗して土地利用の公共性についてもっと考えなければならないと思います。

さて、この視察から1ヶ月ほどたちましたが、北杜市議の野中さんからニュースが入りました。「31日、太陽光等再生可能エネルギー検討委員会で、条例化が答申に明記されることが、誰からの異議もなく決まりました。各会派から選ばれた議員もメンバーなっていますので、この決定はこれからの議会にも大きく影響すると思います。禁止区域や後退距離、高さ制限等について次回議論され、答申がまとめられる予定」とのことですので、注目していきたいと思います。