保育行政の不手際認め和解金

~議会だよりには掲載されなかった和解議案の審議~

安曇野市議会だよりの編集原稿あれこれ

議案書によれば、平成30年の初夏のころ、市立認定こども園(保育園)の教室で、こども同士のいたずらによって一方の園児が精神的な被害を受けて退園を余儀なくされ、その後市外へ転出する事態となった。市は関係者と協議し、被害を受けた園児や保護者への対応を図ってきたが、精神的苦痛は現在も続いているということで、令和元年9月に市に対し早期解決のための慰謝料の請求があった。
市は、このような事態を回避しえなかったことについて深く陳謝し、解決金として200万円を賠償することで、和解することとなった。

市は、この議案書に書かれた以上の詳しい説明を拒否したため、実際に保育園で何があったのか明らかにされなかったので、判断のしようがありませんでした。責任能力のない子ども同士のトラブルということで、どちらの園児にも不利益が及ばぬよう配慮したためと思うのですが、「市は、このような事態を回避しえなかった」ということでは、全面的に市の保育の落ち度を認めたかたちです。

私は質疑で、市の落ち度を認めるのであれば、関係した保育士や職員の処分と再発防止策が必要ではないかと質しました。懲戒処分については、市の分限懲戒検討委員会で審査するが、この和解議案が議決されたのちに審査するとの答弁。再発防止策については、各園でこの事件について検証し整理している。ハード面ソフト面からのチェックを常に行いながら保育をしていく。といった程度の内容で、事の重大さが伝わってこない答弁でした。

問題が起こってから和解に至るまでに、1年以上もかかったのはなぜなのか。当初は問題の認識がなかったのか。保護者との見解の相違があったのか。そもそも、損害賠償が必要なほどの事件だったのか等々、わからないことばかり。当事者双方の園児に配慮するような体裁をつくろって、市の落ち度が表沙汰にならないようにしたのでは、との疑念も頭をよぎりました。

福祉教育委員会では、個人情報に配慮しながら議論ができるよう、秘密会にして審査したいという意見もありましたが、反対する委員が多く公開で審査されました。結果、委員会でも議論は深まることはなく、市側の釈然としない説明を受け入れて和解議案を可決したのでした。

以上のような審議の経過から、和解金200万円が妥当かの判断は、私にとっては非常に困難であったため、採決に際しては退席しました。ほかに増田議員も退席しましたが、賛成多数で和解議案は可決となりました。

さて、その後日談として、~議会だよりには掲載されなかった和解議案の審議~について、書いておきます。
議会だよりは広報特別委員会の編集会議を数回へて発行となるのですが、1回目の紙面構成の段階では「和解議案」の記事はないまま終わり、次の2回目の編集会議では「市民の関心も高いと思われるし、本会議質疑も行われ、賛否が分かれた議案なので、掲載した方がよい」という意見が大勢を占め、「和解議案」の記事が追加されることになりました。

ところが、またその次の第3回目の編集会議では、追加された「和解議案」の原稿を見て、「書き方に気をつけないと園児や関係者が特定され、興味本位に話題になったり、心無い噂が流れたりなど、再び子どもたちや関係者が傷付くようなことになりかねない。議会だよりに載せるのは止めた方がいい」という意見が上回り(掲載すべき4人に対し掲載しない5人)、「和解議案」の記事は姿を消すことになったのです。
私は、記事の書き方に充分に配慮すれば、議会の説明責任をはたすレベルの記事は掲載できると考えたのですが、掲載すべきでないと考える議員がこんなに多いことに驚いたというのが正直なところです。