あづみ野ランドのプールを救って!住民訴訟の判決

~2023年9月15日 判決の報告~

9月15日(金)、あづみ野ランドのプールを救って!住民訴訟(正式名称は令和4年(行ウ)第13号 公金支出差し止め等請求事件)は、判決言い渡しの日を迎えました。午前中は9月定例会の経済建設委員会を傍聴し、安曇野市役所から長野地方裁判所へ。原告3名は現地集合で、いないと思っていた傍聴の方々も各地から6人も駆けつけてくれ、なんだかずいぶん気持を楽にして、判決を受けることができました。

※どんな裁判だったのか知りたい方は、こちらからどうぞ。
あづみ野ランドのプールを救って!住民訴訟
~6月16日長野地方裁判所にて住民訴訟は即日結審~

「あづみ野ランドのプールを救って!住民訴訟」と銘打っているように、もともとこの裁判は、あづみ野ランドのプールを廃止しないで・つぶさないでという訴えでした。市民が「あづみ野ランドのプール廃止」のことを知ったのが遅かったので、というか、もとはと言えば行政側が市民に知らせようとしていなかったので、プールを廃止しないでと声をあげた1年10カ月前すでに手遅れだったのです。それでも、そこであきらめて黙っていたのでは、これからも市民の声は無視されることになってしまう。穂高広域施設組合には、誰のために仕事をしているのか、目を覚ましてほしいとの思いで、住民監査請求や裁判にまで訴えたわけです。穂高広域施設組合の管理者は安曇野市長。太田市長には、そこのところをしっかりと受け止めていただきたいです。

以下、備忘として書き写した信濃毎日新聞の記事。これを読んでいただくと、裁判がどういう結果であったか、お判りいただけると思います。


安曇野市の健康増進施設「あづみ野ランド」のプールを廃止し、浴場移設拡張する改修事業決定過程に問題があるとして市民有志が施設を運営する穂高広域施設組合管理者の太田寛市長に設計業務委託費3800万円余の損害賠償を求めた訴訟の判決で、長野地裁は15日、原告の請求を棄却した。
判決は委託に関する予算が同組合議会で賛成多数で可決されていることなどから「財務会計上の義務に反する違法な行為に当たらない」とした。
原告側は、施設利用者の多くが存続を望んでいるプールの廃止は住民の意思に基づかないなどと主張していた。原告代表の小林純子市議は「控訴に向けて弁護士と相談する」、市長は「主張が正しく認められた」とした。(信濃毎日新聞2023年9月16日朝刊より)


「支出の差止めと違法の確認を却下」「原告の請求を棄却」、この判決をきいて「却下」(門前払い)はありえないと思ってしまったので、信毎の取材には控訴を考えていると答えたのですが、一夜明けて(昨日はもう疲れ果てて、負けた判決全文を読む気力なく)、今日になってやっと判決文をしっかり読み込んだところです。

まず、よく読んでみたところ、被告の本案前の主張に対する判断で、私が納得できずにいた「第1回目の住民監査請求を穂高広域施設組合の監査委員が却下したこと」については、却下は誤りだと判断していました。また、第2回目の監査請求を一事不再理に反するとして却下した」ことについても、一事不再理にはあたらず適法であると判断し、住民訴訟を提訴したことも認められていました。2度の住民監査請求とその後の住民訴訟の提訴について、判例をあげて全面的に認めていただいたので、私としてはもう控訴する必要はないと判断しました。

市民の真摯な思いがこもった住民監査請求を、意味不明な理由であっさり却下した穂高広域施設組合と監査委員、それでも食い下がって再び住民監査請求したことも否定して、まるで「住民訴訟なんかできるわけがない」と言っているかのような被告の主張を、裁判官は認めませんでした。これは、住民監査請求を起こした市民の意図と思いが認められたということですから、そのことを大事にしたいと思います。

「原告の請求を棄却」については、「穂高広域施設組合の議会が予算を可決したから」という記述が3か所にあり、議会が可決・議決しているのだから、穂高広域施設組合の財務会計上の行為の違法性を基礎付けるものではないと判断していました。

原告側が意見陳述で述べた「公金支出の不透明さ」と「民主的手続きの省略」を同時にやってしまえば、誰にも訴えられない」という行政の手法の嘆かわしさを、「穂高広域施設組合の議会が予算を可決したのだから、それがすべて」と裁判所が判断したことには、予想はしていましたが、やっぱりそうかとがっかりしました。

「議会が可決しているから違法性はない」という建前的な判決は、行政(組合)と組合議会の独立性(なれ合い・癒着は無いという建前)と自律性(自律性を有する議会が議決したことに、裁判所は違法か適法かの判断をすることは極々まれ)が尊重されている現状では、「議会が可決したからといって、それが正しいとは限らない」という私たち原告の主張を認めさせるのは、非常に困難だと思いました。

また、私たち原告側は、地方自治法だけでなく財政民主主義の原則を規定した憲法83条に違反するとも主張していましたが、これは憲法判断にまで及ぶので、仮に最高裁に上告するところまでやっても、三権分立の考え方から議会の議決や判断を最大限尊重することになりますから、違憲の判断は99.9%出ないでしょう。

以上のようなことから、私たち原告3名は控訴を断念しましたので、ここにご報告いたします。

それにつけても、この2年近くの間、市民が自主的にアンケート調査をしたり、議会や組合に陳情したり、住民監査請求や住民訴訟に訴えるも、プールの廃止を止めることができなかったのは、ほんとうに悔しく残念です。
こういうことが起きないようにするために、議会や議員が存在するのですが、これがしっかり機能していなかったということです。議員としては、自戒を込めてさらに市民サイドで取り組んでいきます。