福祉教育委員会・視察レポート〜その2〜

滋賀県・東近江市の能登川図書館

 ※視察レポート〜その1〜のあと、続きをアップするのを忘れていました。

 この図書館を視察したいと思ったのは、雑誌『世界』の記事(05年8月号)がきっかけでした。そこに紹介されていた愛知川図書館を個人的に訪問した際、館長の渡部さんから能登川図書館と館長の才津原さんの素晴らしさを聞き、これはぜひ視察したいと思っていたところ、福祉教育委員会での視察研修で実現することができました。

 この図書館は、能登川町が平成18年1月1日に合併により東近江市となるまでは、能登川町総合文化情報センターとして親しまれてきましたが、合併後は東近江市能登川博物館、東近江市立能登川図書館、東近江市埋蔵文化財センターとして、 それぞれが独立した組織に変更なっています。

 図書館行政の先進地である滋賀県では、図書館づくりに2つの大きな特徴があると聞いていたのですが、まずはその特徴=図書館建設の基本姿勢の素晴らしさを実感しました。つまり、1つに、図書館つくりに当たっては、準備室を設置すること。2つには、将来館長となる人を準備室長として招聘すること。
 この2つが基本に据えられ、そこに住民が積極的に関わりながら、時間をかけて「わたしたちの図書館をつくろう」という機運が盛り上がるなかで図書館が出来上がっていった、その典型的な例がこの能登川図書館といってよいでしょう。
 ちなみに、滋賀県は県民1人当りの公立図書館貸し出し冊数は8.4冊で県レベルでは全国一位、旧能登川町では1人当り12冊。全国平均では1人当り4.7冊。こんなにも違いが出ています。

 才津原館長さんのお話は、これまでの実践と自身に裏打ちされた実に熱のこもったものでした。これを一言にまとめれば・・・と考えたとき、これだ!と気がつきました。この館の設立の目標にありました。「このまちに暮らす住民一人ひとりがその暮らしの場で、真に豊かな、そして生き生きとした暮らしを実現するための多様な情報、知恵を得る場、また、先人から継承されてきた暮らしの知恵を学ぶ場となるとを目指す。」
 特に印象に残っているのは、日本の図書館は、3タイプに分類できるが①図書館という看板の下がった役所・・・全体の75% ②無料の貸本屋・・・全体の20% ③本物の図書館・・・全体の5%ほど、あまりにも①の図書館が多すぎるという分析。だからこそ、本物の図書館を育てていかなければならないし、それには一にも二にも「人材」だと力説され、安曇野市が作る図書館の方向性も見えてきたような気がしました。
 合併前の能登川町では一般会計の約1.5%の図書館費を確保していたといいます。合併後もほぼ同じ水準を維持しており、要求する図書館もそれに応える行政も大したものだと思ったが、なんといっても住民が十二分に図書館を活用しており、そこに予算を割くのは当然のことと理解していることが大きいのだろう。

 とにかく心地よく、楽しく、好奇心をかきたてる、素晴らしい図書館。
 書架は低く圧迫感のない見通しの良いレイアウトになっている。書架は様々な本の見せ方ができるように工夫された特注のもので、本も分類番号順ではなくテーマ別にまとめられており、思わず手に取って読みたくなるような工夫が凝らされている。
 児童書コーナーにも力を入れ、約25,000冊もの絵本児童書が並ぶ。表紙を見せて並べるように充分な展示スペースがあり、読み聞かせや紙芝居のための夢のある小部屋もある。
 基本的には広々としたワンフロアなのだが、「てんでに好きな場所」となるような設え(しつらえ)が各所に工夫されていて、市民のくつろぎの場所になっています。

 安曇野市に目を移してみれば、10万人都市の図書館としての建物の規模や蔵書数はどうするかなどハード面での検討が中心で、そこに密接に関係するソフト面からのアプローチが弱いように思われます。能登川図書館を視察して、ますますその感を強くしました。
 能登川図書館の取り組みを見るなかで学んだことを、できる限り安曇野市の図書館づくりに生かしたい、本物の図書館をつくりたい、今からでも遅くはないと自分に言い聞かせた視察でした。