安曇野市議会9月定例会・小林じゅん子の一般質問(2)

情報公開請求して入手した判決文

~住民訴訟と訴訟費用原告住民負担について~

 住民訴訟は地方自治体の行財政をめぐり、その違法な行為によって自治体の損失阻止や損害の回復について、直接住民に訴えの権利を認めたものである。住民には住民訴訟提起の権利を公共の福祉のために利用する責任があるが、その権利は尊重されなければならないという認識により、住民訴訟で敗訴した原告側に訴訟費用を請求する例は非常に稀である。
 しかし、2012年安曇野市議会3月定例議会の一般質問において、宮澤市長は「自治体が勝訴して相手方に訴訟費用を請求できるにもかかわらずこれを請求しないのは、自治体としての権利の放棄であり血税を無駄にすることになるので、今後も法の判決に基づいて請求をする」と答弁があり、どのような裁判かに関わらず判決に基づき訴訟費用の請求をすることが市の方針となった。

1、本庁舎建設に係る住民訴訟(公金支出等差止請求事件)の原告敗訴が確定したが、安曇野市はその訴訟費用を原告市民に請求するのか。

【市長】 判決に従い請求の権利は行使するという基本姿勢は変わっていないが、市議会が訴訟費用請求の見直しの請願を採択した経過もあり、今回の訴訟費用の請求については熟慮中である。

【質問】 私としては請求すべきでないという立場なので、市長が請願の採択も受けて熟慮中だということは有り難いが、実際に今回の訴訟費用について請求金額はいくらになるのか。その訴訟費用の請求の手続を代理人弁護士にお願いする費用は幾らかかるのか。そして、500名余りの原告の方々に、訴訟費用請求の手続のお知らせをする費用等々、全体でどの程度の費用がかかるか。

【総務部長】 日当・旅費が3,950円の7日分。旅費が1,470円の7日分。各書面等の作成が2,500円。あくまでも試算だが合計で4万440円となる。代理人の手続費用はまだ未定。500余名の原告団に対して確定処分の正本を送る費用が、1通1,072円として502名分で53万8,144円。この費用は訴訟費用に含めて確定処分をすることになる。

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2、訴訟費用の請求について市の方針の見直しが必要ではないか。

【質問】 訴訟費用の4万円等を請求するために、それ以上の経費がかかってしまうこともあり得る。これについては、金額の多い少ないではなくて、公平性ということで言えば金額の多寡にかかわらず、訴訟費用が請求できる場合はしていくのだという考え方もある。その一方で、市の弁護士は請求はしないと言っているとも聞いた。担当職員が訴訟費用についてよく理解していないという状況もあり、これで適切な訴訟費用の請求ができるのかという問題もある。市長の見解は。

【市長】 訴訟費用は原告の負担とするという判決が出ている。住民訴訟は住民の権利であり、また訴訟費用は裁判所の判決に基づいて、原告に請求する権利が行政側にもある。住民から市が訴えられる、市が住民を訴えるというような対立関係は、できる限り避けていくべきだ。

【まとめ】 市長からは、いたずらに住民訴訟で市民と行政が対立するようなことがないようにという発言があったが、市民と行政との対立と捉えてしまうことが、そもそも住民訴訟の趣旨から外れた考え方だと思う。住民監査請求や住民訴訟は市政への住民参加であって、対立ではない。よりよい市政を目指すために行う行為であるから、対立関係という考え方をまず無くしていただきたい。
 今回、市側の弁護士が「訴訟費用の請求はしない」とさらっと言ってのけたと聞いたが、この先生は住民訴訟の意義をよく理解しておられる。市長は「熟慮する」という答弁のとおり、この安曇野市の代理人弁護士とよく相談し、敗訴住民に訴訟費用を請求するようなことは行わないよう要望する。

※訴訟費用について参考記事
 2012年9月7日 訴訟費用の請求問題で共同通信の取材を受けました
 http://junko.voicejapan.net/blog/2012/09/07/4167/