わかりにくい議会の表決~否決したのに同じような趣旨の要望書を決議

~良質の温泉で健康増進・老人保健センターの存続を求める陳情書~

 穂高にある老人保健センター(中房から引き湯した良質の天然温泉の施設)の存続を求める陳情書は、10,000筆の署名とともに提出されました。福祉教育委員会に付託された陳情書について、継続審査にという意見もありましたが、審査の結果は採択に賛成3名、反対2名ということで賛成が上回り、委員会では採択となりました。

 ところが、3月議会最終日の本会議においては、下記一覧(クリックすると拡大表示)のように退席して採決に加わらなかった議員が5名あったこと、そして採択に反対の議員が大きく上回ったことで、この陳情書は不採択となってしまいました。
 委員会中心主義(議案審査・審議は委員会を中心に行うとする考え方)の安曇野市議会は、委員会で可決したものを本会議採決で否決することはなかったのですが、3期目の議会がスタートした後のこの一年余を振り返ってみると、委員会の結論を本会議で引っくり返すことが度々起きているのです。

 そこへきて今回は退席が5名。いずれも穂高地域の議員で、中には陳情書に署名した議員もあります。さらに、不採択とした陳情の趣旨を補強するような内容を盛り込んだ要望書の決議案提出の動議まで出てきて、意表をつかれました。要望書を決議するなら、陳情書を採択した上で行うのがスジではないか。 
 こんな変則的な表決に至った背景には、会派拘束や地元有権者への取り繕い等があったのでしょうか。いずれにしろ良識ある議会とは言い難い状況です。

 さて、私ですが、陳情第1号 老人保健センターの存続を求める陳情書に賛成しました。
 反対意見の中には「廃止は公共施設の統廃合の流れの中で決まったことであり、毎年1,300万円ぐらい赤字になっている」という意見もありました。しかし、廃止の経過については、新しい「しゃくなげの湯」の姿が見えてくる中で、市民のための福祉の湯・健康増進のための温泉か、観光目的の「都会の人たちの非日常の湯」なのか、明確な位置づけがないままに進んでおり、中途半端なコンセプトが見えてきました。

 そういったことでは、この陳情にあるように、地域住民の皆さん、特に高齢者の皆さんが、これまでずっと福祉の湯として安い料金で利用できたこの温泉について、「しゃくなげの湯」の実態が明らかになり、高齢者の皆さんも心配なく利用できるような温泉になるのかということの見きわめの中で、5年をめどに存続するというのは必要なことではないかと思います。

 1,300万円もの赤字、廃止もやむを得ないということですが、これは逆の発想で、温泉の利活用、健康増進に温泉がどれだけ役立っているかということでは、2000年に行われた国民健康保険中央会の全国調査で、温泉のある自治体では、医療費が非常に減少しているというデータもあります。ですから、1,300万円を赤字と見るか、温泉が健康増進につながり医療費削減に役立っていると見るか、そんな観点からも、今後の5年間を調査期間と考えてもよいと思います。
 したがって、この5年をめどに老人保健センターを存続するというこの陳情の趣旨に賛同し採択に賛成します。