安曇野市「もらえるあてのない使用料」は債権放棄する方針

安曇野菜園の経営責任と行政責任の明確化は後回し

市民タイムス2010年12月17日記事
市民タイムス2010年12月17日記事
1、三セク安曇野菜園・トマト栽培事業の失敗と今後必要になる市の支援について
 宮澤市長は議会や市民説明会(三郷トマト栽培事業と安曇野菜園株式会社の現状と課題についての市民説明会)で「旧三郷村の事業計画は甘かった、トマト栽培事業は失敗だった」と認めているが、失敗を認めたからには行政の責任を明確にすべきである。そこで、以下の4点について質問しました。
1)安曇野菜園の第7期決算について
2)市が債権放棄することについて
3)安曇野菜園に対して今後必要になる市の支援のあり方について
4)安曇野菜園の事業展開における行政責任について

1)安曇野菜園の第7期決算について
【質問】先日発表になった第7期決算は待望の黒字決算だったが、実質的には赤字。それに、キャッシュフローは黒字とは別の話で、現金が手元にない状況は変わりない。つまり、損失補償で借りている借金の返済ができない、未払金はなかなか減らない、資金ショートのおそれも。会社の整理・清算、あるいは新たなる指定管理者の選定に向けてこの第7期の決算をどう評価するのか。

【副市長(菜園社長)】緊急雇用の補助金を計算に入れたうえでの数字で、実質は赤字ということになる。損失補償による借り入れができない現状では、来年1月から2月ごろには資金ショートのおそれもある。トマト栽培施設の使用料の債権放棄が認められ、今後の使用料も免除してもらえれば、引き受けようという農業生産法人もあるのではないかと期待する。

【質問】この決算内容で、思うようにトマトが作れない状況では、次の指定管理者の引き受け手があるのか疑問。目先のことでなく、長期的な視野に立てばトマト栽培施設を公の施設として市が保有し続けるより、思い切ってすべて手放し民間に譲渡した方がいいのではないか。

【市長】市民負担をできる限り少なくすることを最優先して考えると、施設整備のために借りた地方債を償還し終わる3年後までは指定管理者でやっていくつもりだ。(現時点で施設を民間へ譲渡すると、残りの債務を一括償還しなければならないので、一時的な負担が大きいということ)

2)市が債権放棄することについて
4)安曇野菜園の事業展開における行政責任について

 菜園は当初7000万円と決めた施設使用料を過去一度も支払っていない。今年度から減額して年2500〜3000万円、計7億5900万円を支払う契約だった。しかし経営不振の菜園が払える見通しはなく、農業法人など民間へ経営譲渡する計画に差し支えるとして、市は債権の全額免除方針を決めた。2011年度以降の使用料4億4000万円も指定管理契約の変更で免除する方針。

【質問】市の補足説明資料には「経過はともかく、現実的にはもらえるあてのないこの未納金が、手をあげようとしている農業生産法人を消極的にさせているとすれば、何とかこのような状況を改善したいと考えております」とある。「ともかく」ではなく、今こそ行政責任を認めて何らかの形で責任を取らないかぎり債権放棄はありえない。この事業採択をした行政責任や経営責任について、どのような責任が問われるのか真剣に検討したことがあるか。

【市長】今は菜園の民間譲渡を最優先させなければならず、この状況のなか責任問題を追及することは難しい。菜園の清算が終わり次第、弁護士、会計士、民間の識者による第三者委員会を設置し、責任問題についてしっかりと調査し、市としての対応を決める。

【質問】責任問題を後にして「債権放棄」はありえない。今ここで必要な最も明確な行政責任の取り方の一つは、損失補償契約は違法・無効とする東京高裁の判決を受入れ、最高裁への上告をとりさげることだ。市長にその考えはないか。

【市長】損失補償契約に関する高裁判決については司法の判断に委ねる。

【質問】司法の判断という前に、そもそもなぜ三郷村が損失補償契約をしなければならなかったか、市長はご存知か。

【市長】よくは知らないが、おそらく菜園が運転資金を借りるためではなかったかと思う。

【質問】それもあるが(内心、そうじゃないんですよ市長!と言いたかったですが)、菜園がトマト栽培施設の用地を買うための借金であった。当初、土地は三郷村が買うことになっていた。一度は村の予算に計上したが、3カ月後には減額補正となった。自治体は農地を買うことができないとわかったためで、用地購入費は三セクに借入させてということになってしまった。
 その後、予定した出資金6000万円が集まらないまま会社設立となり、第三セクター三郷ベジタブル(現安曇野菜園)は設立早々に2億5000万円の損失補償契約を結び、借金により土地を購入せざるをえなくなった。
 出資金は集まらない、会社の運転資金もない、それでも借金をして土地を買わなければならない。そこへもってきて、年間5億円の売り上げを見込み、施設使用料7000万円や将来の土地取得のために毎年4000万円の積立もできる、「儲かるよ」という甘く実現性に乏しいズサンな事業計画を提示していた。
 こんなイイカゲンな事業計画で損失補償契約が認められるはずがない。まさしく違法無効な契約だったということ。行政責任を取るために高裁判決を認め、上告を取り下げる考えはないか。

 この後、ぐずぐずと市長答弁が続いたのですが、そのなかで「当時の三郷村長と県の農業開発公社が取り交わした覚書」のことが出てきました。私も「覚書」など初耳で、これから調査するところですが、自治体が農地を持つことができないことがわかっていながら、何か約束をしていたということなのでしょうか。こうなると「三セクでトマト栽培」という事業展開は、やはり最初から無理があったということになります。
 おまけに、この土地は三セク安曇野菜園の所有財産になってはいますが、現在はある事情により根抵当権が設定されています。「根抵当」といい「覚書」といい、この期に及んでまだ隠されていたという事実。この隠蔽体質が菜園の清算に影響しないことを祈るばかりです。
 それにつけても、市が債権放棄や財政支援をするのであれば、その前にきちんと責任の所在を明らかにする必要があります。後からあとからポロポロと問題が出てくる現状では、債権放棄や財政支援などとても認めることはできません。