安曇野市議会9月定例会・小林じゅん子の一般質問
~安曇野市の債権管理や収納体制の現状と課題について~
今回の一般質問は持ち時間が40分しか確保できなかったこともあり、質問は1件に絞りました。9月議会にはこれを取り上げようと考えていたテーマもあったのですが、議会開会直前に明らかになった下水道受益者負担金の不能欠損のことが気になって、考え直しました。債権管理については2年前に一度取り上げた問題でもあり、その時は中途半端に終わってしまったという反省があったので、このタイミングを逃すまいと思ったのです。
以下、私の一般質問(原稿)と、安曇野市を考える市民ネットワークの横地泰英さんから届いた傍聴記です、ご覧ください。
~安曇野市の債権管理や収納体制の現状と課題について~
自立した財政と市民負担の公平性を確保するため、安曇野市では収納体制の強化に取り組んできました。コンビニ収納、催告コールセンターの設置、地方税滞納整理機構との連携などにより成果をあげていますが、その一方で下水道受益者負担金5200万円余が、事務手続きミスにより時効で徴収権が消えるなどして不能欠損となったことが、この8月明らかになりました。
ミスはなぜ起こったのか下水道課に聞き取り調査をしたところ、日々の滞納整理事務に追われて、消滅時効や滞納処分に関する認識が甘かったこともあり、問題を先送りしてきた結果であることがわかりました。特に、収納課や収納対策会議に相談し連携して徴収にあたった経過がなく、職務怠慢としか言いようがありません。
自治体の有する債権(滞納債権等)は多種多様で、その取り扱いの根拠となる法律や徴収方法はそれぞれ異なるので、各所管部局の職員が根拠法等を熟知して運用することはもちろん、部局横断的な共通認識を持ち情報共有して職務にあたることが肝要です。
本市ではH18年から市税等収納連絡調整会議を、H20年からはその上部組織となる収納対策本部会議を設置し取り組んできました。これが機能していれば、今回の不能欠損にもっと早く的確に対応できたはずですが、それができませんでした。
その原因としては、各所管部局に徴収担当専任がおらず他の業務と兼務しているなど、徴収業務を行うための十分な体制がないため、「あなた任せ」になっていたことが考えられます。
これを解決するためには、業務分担の見直しや組織体制の強化に向けて債権回収対策室の設置が考えられます。また、滞納整理に係る情報やノウハウの共有化ということで言えば、「債権管理に関する基準」や「債権管理条例」の整備が必要です。
そこで以下に質問します。
1、収入未済に対する対策、管理体制について
2、滞納整理事務について
3、滞納処分(差押等)又は民事上の強制執行について
4、不納欠損処分の事務手続について
5、債権回収対策室の設置、債権管理条例の制定について
◆下水道負担金の時効欠損/徴収職員に職務怠慢/小林純市議が追及
(まとめ・安曇野市を考える市民ネットワーク 横地 泰英)
安曇野市議会は19日、本会議で第1日目の一般質問が行われた。6人目で質問に立った小林純子議員は23年度の市下水道事業と農業集落排水事業で受益者負担金の収入未済額が3億3千万円で、うち徴収の時効で不納欠損となっている分が5,200万円余にのぼっている問題を取り上げた。
市民負担の公平性は自治の根幹であり、小林議員は独自調査をもとに正面から実務に沿って宮沢市長はじめ関係部長らを質した。宮沢市長は「大変市民にご迷惑をかけた。もっと早く気づき、傷を浅くすべきだった。要項などを確認させ、再発を防止する」などと陳謝した。
小林議員は「安曇野市の債権管理や収納体制の現状と課題」を、5項目に分けて質問した。 1.収入未済に対する対策、管理体制について 2.滞納整理事務について 3.滞納処分(差し押さえなど)または民事上の強制執行について 4.不納欠損処分の事務手続きについて 5.債権回収対策室の設置、債権管理条例の制定について
小林議員は「自立した財政と市民負担の公平性を確保するため、安曇野市では収納体制の強化に取り組んできた。コンビニ収納、催告コールセンターの設置、地方税滞納整理機構との連携などにより、成果をあげているが、その一方で下水道受益者負担金5,200万円余が事務手続きミスにより、時効で徴収権が消えるなどで不納欠損となったことがわかった。下水道課に聞き取り調査したところ、職務怠慢とも言えるものだった。
自治体の有する債権(滞納債権等)は多種多様であり、その取扱いの根拠となる法律や徴収のシステムはそれぞれ異なる。したがって、各担当課の職員が根拠法等を十分認識して運用することは言うまでもなく、関係部署間で共通的認識を持ち、情報共有して職務にあたることが不可欠であるが、その点が不十分であったためめ今回のような多額の不納欠損という事態に至ったのではないか」と前置きして、上記5質問をした。
宮沢宗弘市長は陳謝の後「賦課、徴収にはもっとしっかり共通認識を持って当たるべきだった。監査委員にも内容を精査してもらい、原因を洗い出したい」と結んだ。
宮田総務部長は質問1~4について、市税、国保、私債権などについて、各課の収納態勢を具体的に説明。国保や後期高齢者医療保険、介護保険などが収納課に一元化し、電話催告などで滞納額が減っていると説明した。保育料も園長とともに滞納を整理し、効果を上げているという。「いかに滞納させないかが大切。早期解決には弁護士とも連携している。早期は電話や催告、だめなら面談、分納も勧める」。H23年は9,100万円の滞納を縮減。滞納処分などについては「収納課を除いて強制執行はしていない。差し押さえも一部を除いて行ってない」という。 課題は滞納を減らすこと。「収納課だけでなく、ヨコの連携を密にする。還付金を滞納に充当するなど機敏に処理する」などと説明した。
小林議員は「1~4の説明だけでも10分かかるほどの内容。ひと口で徴収業務と言っても、複雑で大変。2年前にも同様の質問したのに、こういう事態は残念」と述べ、上下水道部長の答弁を求めた。中野上下水道部長は、適正徴収への取り組みについて「①時効を迎える人に催告②組織改正が急務担当者を充実③税金など他の未納と重複をチェックする」と説明した。
小林議員は「職務意識が甘かった。収納連絡調整会議、収納対策本部の記録をざっと見たら、下水道関連の事例が2回あった。19年3月、上下水道に専任の収納員を置きたい。20年3月、催告に応じず、分担金徴収に苦慮。という報告が会議であったのに、埋もれてしまった」、「総務部長の言うせっかくの収納連絡調整会議、収納対策本部会議も機能は不十分。『部内で頑張る』だけでは解決しない。債権回収対策室設置、債権管理条例の制定を考えないか」と質した。
宮田総務部長は「収納対策本部は、声があがってきても自分の滞納処理だけで精一杯だった。お互いにアドバイスしあい、まっすぐ見るだけでなく、両サイドも見るという配慮が足りたかった。債権回収対策室や条例については、取り組んでいる他市もあり、前向きに検討する」と答えた。
小林議員は「そうはいっても、すぐにはできぬ。目前のこととして担当部課でマニュアル的なものをつくったらどうか。全庁で債権管理マニュアルを」と実戦的な即応策を提案。総務部長も「一部では基本方針をつくっているが、できていないところもある。早急に検討する」と述べた。
小林議員は最後に「この事態を招いた原因をどう考えるか」「職員の仕事ぶり、職務怠慢のほかにもうひとつ、重要ファクターがある。市長、感じているものがありますか?」と質すと、宮沢市長は「やはり職務怠慢・・・ ぜひ小林議員、ご指摘を」とたじたじ。
小林議員は考えながら言葉を選ぶ。「下水道事業がどのように事業採択されたかという問題。バブルの頃この地域で計画が始まり、環境が整備され衛生的になると一気に進んだ。よくよく考えてみると、田園・農村地域に下水道事業を広げることが良かったのかどうか。穂高は流域面積が広大で莫大な費用がかかり、受益者負担金は1㎡270円、豊科140円に比べ高額となった。そういうことを住民は理解していたのか。気づけば本管が自宅前まで通じたが、年金暮らしの高齢夫婦でとても負担金など払えない。合併浄化槽があるから下水道には接続しない。さまざまな事情があるなかで配慮がないまま進んだ。そういう事業ではなかったか」
宮沢市長は小林議員の指摘にうなずいた。「記憶をたどると、穂高は穂高、豊科は豊科の計画だったが、安曇野流域下水道になった。10万人以下は第1種とされていたが、採択されたときは第2種。南安曇全体を見ると負担金はすでに徴収されていたところもあった。1㎡あたりの単価は公平か。平等性に欠けるのではないか。個々の家庭につなぎこむ時に負担金を徴収できればいいのだが。合併浄化槽があるのに一律徴収はむり。人口密度も穂高散在、豊科は都市型。完全な制度でなく、矛盾がある。もう一つの制度設計を考える必要があるかもしれない」。小林議員は「そこに触れずいままで通り支払いをいただくのは難しい状況が続く。既に支払った者と不公平にならないよう、減免とか賦課徴収の仕方を見直したらいかがか」。
中野上下水道部長は「負担金についていままで説明会でお話ししてきた。穂高での工事が残っているだけ。ほかは整備されている」と事業の〝進行度〟を匂わせ、かわそうとした。小林議員は「ぜひ検討していただきたい。自治体の債権管理を、今回の不納欠損を糧として、しっかりした態勢で臨むようにすること。民間企業の債権管理とはわけが違う。自治体は市民の福祉向上のためにある、生活困窮者の生活再建につなげながら進んでほしい」と結んで質問を終えた。安曇野市議会ではあまり見られない緊張感のあるやりとりの40分だった。