波乱の議長選挙

安曇野市議会の常任委員会名簿

~数の論理で議会人事を牛耳る会派と
    そこに乗る会派~

 安曇野市議会議長選選挙(10月30日の臨時議会にて実施)は波乱の展開となり、結果として私が期待した「公正中立な職務の遂行と民主的かつ効率的な議会運営に努める」(議会基本条例第4条)議長は誕生することはありませんでした。

 今回の議長選挙の流れを振り返ってみます。
 そもそも市議会の議長の任期は、地方自治法の定めでは「議員の任期(4年)による」となっていますが、実際の運用についてはほとんどの自治体議会に「申し合わせ任期」という考え方があって、安曇野市議会では2年となっています。ちなみに長野県議会では正副議長は(できるだけ多くの議員がそのポストにつけるように)1年交代です。

 この申し合わせ任期(2年)満了に伴う議長・副議長選挙が迫った9月定例議会の会期中には、当然ながら次期議長・副議長を目指す議員の動きが顕在化するはずでした。しかし、宮下議長がもう2年続投の意思であるとの情報が流れ、ほかに議長選に立候補する者はなさそうだというのが、もっぱらの噂でした。
 本当にそのような状況であるなら、そして無投票で議長が決まってしまうようならば、無投票を阻止するためにだけ、それだけのために小林じゅん子が立候補することも「有り」かと考えていました。そのころまだ無所属議員だった4人は、「宮下議長が再度立候補すれば無投票になりかねない」「無投票は避けたい。荻原議員が議長選に立候補したらどうか」「じゅん子さんはどうなの」とか、「ここはぜひ女性議長ということもあるから平林徳子副議長に出てもらいたい」等々、話をしていました。

 10月に入って、市長与党的多数会派の信誠会では議長選に誰を推すか方針転換したとの情報があり、宮下議長は続投を断念し浜昭次議員が議長選に立候補することが明らかになりました。このあたりから第二会派の政和会が会派長の平林徳子議員(副議長)を議長候補へ押し上げる動きが見えるようになりました。
 しかし、10月22日正午の正副議長選挙の立候補届けの締め切りまでに、平林徳子議員は確実な票読みができなかったのか、立候補届けは残念ながらありませんでした。がっかりしたのは私だけではなく、少なくない人たちが「奥の手があるじゃないか」ということで、諦めずに票の獲得に動き出しました。
 「奥の手」というのは、こういうことです。正副議長の選挙は公職選挙法の規定による立候補制を準用しないので、立候補する・しないに係わらず誰に投票しても有効なのです。投票用紙に「平林徳子」と書く人が集まれば、当選もありうるというわけです。
 こういったやり方については、実は今回が初めてのことではなく、6年前の議長選挙で浜昭次議員が立候補届けがなかったにもかかわらず8票を獲得した、という前例がありましたから、あまり抵抗なかったと思われます。

 また、信濃毎日新聞の取材によれば「政和会によると、平林氏も(立候補の)所信表明を検討したものの、環境が整わず決断できずにいた。しかし、その後常任委員会の正副委員長人事などをめぐる水面下の交渉が『信誠会主導で進んだ』と主張。『平林氏の方が公平な運営ができる』と臨時議会前に各会派に伝えた」ということで、10月30日の臨時議会当日の開会直前まで票獲得の動きがありました。

 さあ、いよいよ臨時議会が開会し専決処分の報告や監査委員の選任と進み、ここで暫時休憩。これは、議長が「辞任願」を提出し副議長が受理するための休憩で、せいぜい10分ぐらいのもの。
 ところが、この暫時休憩が「しばらく」どころではなく1時間以上にも及び、議会が再開して議長選が行われたのは午後になってからでした。
 なぜ、こんなに長~い「暫時休憩」となったのか?
 確かな話は聞いてはいませんので推測の域を出ませんが、平林徳子議員を議長に当選させようという動きを察知した宮下議長が、「辞任願」の提出を一時棚上げし、信誠会が望むかたちの正副議長選挙の票固めをめぐり、常任委員会の正副委員長人事にまで及ぶ駆け引きが行われたのではないかと思われます。政治理念や政策が違っていても、優位なポストと引き換えにウラで手を握り合うようなことが行われたとすれば、市民を裏切る行為であり非常に嘆かわしいことです。

選挙結果は以下の通りです。

 議長選挙結果  浜 昭次議員(信誠会)15票(当選)
            平林徳子議員(政和会)10票

 副議長選挙結果 藤原陽子議員(公明党)12票(当選)
             荻原勝昭議員(民心・無所属の会)9票
             松沢好哲議員(共産党安曇野市議団)4票

会派の人数と得票数の関係、常任委員会の正副委員長人事の結果を分析してみると、見えてくるものがあります。

◆委員会名簿
http://www.city.azumino.nagano.jp/gikai/meibo/03.html

◆会派別名簿
http://www.city.azumino.nagano.jp/gikai/meibo/kaihameibo.html

浜議長は議長選挙の所信表明で「議長となったなら公平公正な議会運営のため会派を離脱する」と述べ、議長となった現在は無所属となっている。