あづみ野ランドの大規模改修計画に住民監査請求するも却下

~却下とは「訴えの要件を満たしていないので監査しない」ということ~

穂高広域施設組合監査委員から届いた通知の一部

2022年7月15日に提出したあづみ野ランドの大規模改修計画に住民監査請求(穂高広域施設組合職員措置請求書)について、2022年8月26日付けで「本件措置請求を却下する」との文書が届きました。

要するに、訴えの要件を満たしていないので監査しません、というもので、「門前払い」と言ったら分かりやすいと思います。

却下の理由としては、監査の対象とする「財務会計上の行為」にあたらないというのですが、あづみ野ランドを運営する穂高広域施設組合の財務状況では、7億円の改修費が賄えるのかどうか分からないにもかかわらず、さっさと設計業務委託費を支出しようとしているのですから、財務会計上の行為そのものだと考えるのですが・・・。私は却下の理由に納得がいきません。

市民のみなさんはどう思われるでしょうか。
監査委員と同じ判断をされるのでしょうか。
ということで、ぜひ、今回の住民監査請求(穂高広域施設組合職員措置請求書)に目を通していただきたい。


          穂高広域施設組合職員措置請求書

穂高広域施設組合管理者(安曇野市長)に関する措置請求の要旨

1 請求の要旨

(1)対象となる財務会計上の事実

穂高広域施設組合(以下、「組合」という。)による「余熱利用施設あづみ野ランド改修事業」(以下、「本件事業」という)に関し、穂高広域施設組合管理者(安曇野市長)が提案した事業費は7億3,150万円で、その関連予算である大規模改修実施設計業務委託料3,878万6,000円が、令和4年度穂高広域施設組合一般会計予算に計上され、2022年2月18日に穂高広域施設組合議会で議決された。現在、本件事業予算は執行段階に入っている。

 

(2)その行為が違法又は不当である理由

①本件事業の推進・計画にあたって、平成30年度に48万6,000円【第1号証】で実施された公共建築物総合点検(あづみ野ランド建物調査)の結果報告書(以下、あづみ野ランド建物調査結果報告書という)【第21号証】には、44ページにわたって、あづみ野ランドの修繕改修の概算工事費がまとめられており、プールも浴場も残した現状の形での必要最小限の補修・改修工事で、総額3億1,814万4,000円となっている。

 

②上記のあづみ野ランド建物調査結果報告書に関する資料(「あづみ野ランド」建物調査結果について)【第2号証】は、平成30年10月23日の組合理事者会議【第3号証】に報告・説明され、同日開催の組合議会全員協議会【第4号証】にも報告・説明されたが、これといった議論はなかった。

翌年の令和元年11月11日の組合議会における、平成30年度穂高広域施設組合一般会計決算審議では、決算添付書の事務・事業に関する報告書の中に、あづみ野ランド建物調査結果報告書について1ページ程度の報告【第5号証】はあったが、これに関わる質疑、討論等はなく、平成30年度の決算は認定されている。

③令和元年12月23日、組合は本件事業の推進のため「あづみ野ランド運営検討委員会」(以下「検討委員会」という。)を設置し、組合が運営するあづみ野ランドの経営改善を目指し、施設の今後について検討を行うことになったが、あづみ野ランド建物調査報告書に関する資料(プールも浴場も残した現状の形での必要最小限の補修・改修工事が総額3億余であることを示すもの)は提供されていない【第6号証】

 

④組合を組織する6市町村をはじめとする地域住民が利用する、公共性の高い施設・あづみ野ランドの存続にも関わる重要な事業検討を行うにあたって、組合も検討委員会も、関係市町村住民や施設利用者へのアンケート調査等の意向確認を行っていない。令和3年11月11日の組合議会・全員協議会において、その事実が明らかになった【第7号証】。施設の今後について検討を行うにしては、甚だ不十分な対応と言わざるをえない。

 

⑤令和2年3月27日、検討委員会は5回の委員会を開催してまとめた「あづみ野ランド施設運営検討委員会検討結果について(報告)」【第8号証】を組合へ提出した。組合は、これを意見書と言っている。

 

⑥上記の意見書は、令和2年10月23日の理事者会で報告されているが、会議録によると、「意見書の内容を精査し、財源等を検討し具体策を講じたうえで、議会へも報告したいと考えている。」と事務局長が発言している。続けて、「(事業費は)概ね、どのくらいの金額になるか。」との質問に、事務局長は「個人的な意見として、最大で3億円くらいになるのではないかと思われる。」と答えている【第9号証】。同日開催の組合議会全員協議会でも報告されたが、これといった議論はなかった【第9号証】。

 

⑦令和3年度当初予算に、あづみ野ランド基本構想策定の業務委託費用803万円が計上された【第10号証】ところ、令和4年1月11日に(仮称)あづみ野ランド大規模改修工事基本計画(案)【第11号証】(以下、「大規模改修工事基本計画」という。)が、あづみ野ランド基本構想策定の業務委託の成果物として組合に提出された。しかし、この大規模改修工事基本計画は令和4年2月18日の組合議会の当日まで明らかにされなかった。

 

大規模改修工事基本計画には、プールを廃止する7億3,150万円の改修計画と、プールを存続する10億7,800万円の改修計画の2案が示されており、15ページにわたる詳細な内容であることから、議会当日に見てすぐに判断することは困難である。通常、議会招集通知とともに議案書や予算書は議員に送付することになっているので、議案書、予算書と同様に審議に必要な大規模改修工事基本計画を送付しなかったこと【第12号証】は、過失か意図的か不明だが看過できることではない。

 

令和4年2月18日の組合議会においては、大規模改修工事基本計画に関する資料が当日配布であったため、充分に検討する時間もないまま、議会審議も尽くされることなく、プールを廃止する7億3,150万円の改修計画を前提とする大規模改修実施設計業務委託料38,786,000円【第13号証】を含む令和4年度穂高広域施設組合一般会計予算は賛成多数(賛成15、反対3)で可決された。

 

⑩本件事業は、大規模改修工事基本計画に示された2案のうち、工事費7億3,150万円の計画案が採用されることになったが、その財源については組合議会全員協議会【第14号証】においても、本会議【第15号証】においても説明がなかった。後日、小林純子安曇野市議が組合関係者に確認したところ、「組合の現在の基金残高6億円【第16号証】と新しいゴミ焼却施設の余熱発電収益から1年分の1億円程度ある【第15号証】ので、関係市町村に追加の負担を求めることなくできると見込んでいる」との説明があった。

 

組合の基金は将来のゴミ焼却施設更新に備えるものであって、現在ある基金すべてを使うことは許されない。余熱発電収益についても、まだ始めたばかりの時点で毎年1億円の収益を見込むのは甘い計画である。また、古いゴミ焼却施設の解体費用は地上部分だけでも5億円を下らない【第15号証】とされる。財源が乏しく、組合を構成する市町村に追加の負担を求めることが困難な財政状況で、本件事業に工事費7億3,150万円の計画を採用することは不適切で、財政規律に反する。

 

⑫令和4年2月18日の組合議会では、「あづみ野ランド」のプール施設を含めた改修と良好な維持・運営を求める陳情書【第17号証】の審議も行われたが、審議は全員協議会で行われ、採決だけが本会議で行われるという変則的なもの【第18号証】であった。結果として審議の経緯が議会本会議の議事録に残っていない。この陳情書が提出された背景には、地元住民はじめあづみ野ランドの利用者の多くは、プール存続を望んでいるという実態があったが、そのことを訴えている陳情者の意見陳述や質疑応答の内容は、本会議の議事録では窺い知ることができない。

 

⑬上記の令和4年2月18日の組合議会に先立って開催された組合理事者会の会議録には、「あづみ野ランド施設運営検討委員会で約2年間(実際には約3カ月間であって2年間ではないので、疑問が残る)かけて検討してもらったものを、陳情が通ると、話を地元にもう一度戻して、最初から検討をしてもらうことになる。そうなると地元への説明が難しくなる可能性もある。」という副管理者(安曇野市副市長)の発言【第19号証】があった。陳情審議の中で、プール存続を望んでいる市民の実態が明らかになり、「陳情が採択されるようなことになれば困る」という心情が滲む発言である。理事者会がこのような変則的な陳情審議の手法を考えたところには、そのような副管理者の意向も影響したのではないか。疑問が残る陳情審議であった。地域住民や利用者市民の意向調査もしていないことと合わせると、プール廃止の7億円改修計画が組合側の意向で動かしがたく決まっていたことをうかがわせるものである。

 

あづみ野ランド建物調査の報告書は、小林純子安曇野市議による情報公開請求により令和4年3月16日に開示された【第20号証】。これにより、ようやく「プールも浴場も残した形の必要最小限の補修工事費は3億1,814万4,000円」であること【第21号証】が公然となった。プール廃止が前提の7億3,150万円の改修計画の妥当性が問われる事態となっている。

 

⑮地方公共団体は、その事務を処理するにあたって、自治法第2条第14項で「最小の経費で最大の効果をあげなければならない」、地方財政法第4条第1項で「経費はその達成するために必要かつ最小限度をこえて支出してはならない」と規定していること、及び自治法第2条第12項及び第16項「地方公共団体は、法令に違反してその事務を処理してはならない」の規定からも、本件事業予算7億3,150万円と、その関連予算である大規模改修実施設計業務委託料3,878万6,000円は、支出根拠が不明瞭で財政規律に反する放漫な支出であるので、これらの規定に違反する。

 

(3)その結果、穂高広域施設組合構成市町村に生じている損害

本件事業予算7億3,150万円と、その関連予算である大規模改修実施設計業務委託料3,878万6,000円は、前項(2)で述べた通り、違法無効な予算であるので、損害が生じているのと同等である。

 

(4)請求する措置の内容

①本件事業は、自治法第242条第1項の括弧書に規定する「当該行為がなされることが相当の確実さをもって予測される場合」にあたるものであるから、穂高広域施設組合管理者(安曇野市長)に対し、本件事業のための大規模改修実施設計業務委託料38,786,000円の支出の差し止めを勧告することを求める。

②穂高広域施設組合管理者(安曇野市長)に対し、本件事業計画の見直し・変更と、それに伴う大規模改修実施設計業務委託の見直し・変更を勧告することを求める。

 

2 請求者

別紙請求者一覧記載のとおり(省略)

 

3 事実証明書

別紙事実証明書一覧に記載、添付のとおり(省略)

 

地方自治法第242条第1項の規定により、別紙事実証明書を添え、必要な措置を請求する。

2022年7月15日

 

穂高広域施設組合監査委員 様