安曇野市は上告申し立て方針〜市議会に提案、可決

高裁判決は自治体、三セク、金融機関に「影響大」

《「三郷ベジタブルの経営改善を望む市民の会」の横地泰英さんのレポート》
   
 トマト栽培第3セクター安曇野菜園(旧三郷ベジタブル)をめぐる行政訴訟で安曇野市は9月8日、3金融機関と市が結んだ損失補償契約を違法無効とする東京高裁判決を不服として最高裁に上告する申立て案を開会中の9月市議会に提案、市議会は賛成多数で可決した。
 上告期限は判決後2週間の9月13日。原告側の小林純子市議や市提案に反対する議員は①高裁判決は画期的な内容で、安曇野市は判決に従い、上告すべきでない。②上告提案は判決内容を精査したうえで慎重審議すべきだ。などと主張したが、宮沢市長は「高裁判決は、自治体、3セク、金融機関に重大な影響を与える。このまま確定すれば、安曇野菜園は倒産に追い込まれかねない。最高裁の判断を仰ぎたい」と述べ、一気に本会議で採決した。
 
 市議会はこの日、午前10時の開会直後に暫時休憩となり、議会運営委員会、10時40分から全員協議会、11時20分から本会議再開と、立て続けに市の上告受理申立て案を審議した。いずれも宮沢市長、細川農林部長らが提案理由を説明した。
 それによると①損失補償契約による債務支払いは支出してはならないとする高裁判決は、安曇野菜園や金融機関に重大な事態を招く。②損失補償契約の違法性については福岡高裁で2件の判決があり、最高裁で上告が棄却され、損失補償契約が違法でないという高裁判決が確定している。③1審の長野地裁、2審の東京高裁とで判断が分かれ、高裁の中でも判断が分かれ、これまで最高裁で実質審理がなされていない。などの理由で最高裁の判断を仰ぎたいと説明した。

 上告に反対する無所属や共産党らの市議は①判決と菜園の経営問題は同列に論じられない。②高裁判決をどう受けとめているか。③判決は3セク問題について新たな判断を示した。④上告して勝訴の見通しはあるのか。⑤市側代理人(弁護士)はどう考えているか。⑥財政援助制限法に反し違法とする判決は時代の流れ、上告せず従えば負担はかからない。などと質した。
 宮沢市長は「菜園は市の支援なしに成り立たない。上告・支援の要望書を安曇野菜園から受けた。再建は容易でなく経営を引き継ぐ農業法人も模索中だ。判決受け入れは、市、菜園、金融機関に大きな影響を与え、全国自治体にも波及する。勝訴を目指すが、市の負担をどう軽減するか。菜園をいま倒産させるわけにはいかない」などと述べた。細川農林部長は「高裁判決は損失補償契約の内容に入り込んで判断した事例であり、深く切り込んでいる。上告すれば勝つとは弁護士もとらえていない。損失補償契約がどういうものなら財政援助制限法に合致するのか、明確な判断を得たい」と上告提案趣旨を説明した。

 本会議では質疑の後、上告申立て案について、賛成、反対それぞれ5人ずつの議員が意見を述べた。賛成議員の意見は①金融機関が手を引けば菜園は破綻し10数億円の負担がのしかかる。上告して結論が先延ばしになるなかで負担軽減をさぐる。②三郷村議として2.5億円の損失補償契約にかかわった。当時総務省や県にお伺いを立てて議決した。こうした経緯、地裁・高裁の判断が分かれていること、司法の3審制を踏まえ、最高裁に最終の判断を求めたい。高裁判決がすべてというような言い方は納得できない。など。

 反対議員の意見は①「判断が分かれている、とにかく上告してみよう」では無責任。②財政援助制限法は自治体の税金の使い方に厳しい判断を求めている。東京高裁判決はその最新判断。受け入れるべきだ。③公益性ありで菜園事業を進めてきたが、公益性はないとの判決だ。経営は別途考え、まず判決尊重。などだった。
 賛成起立による採決は、賛成18、反対8。反対の内訳は無所属4、共産3、その他1。訴訟の当事者(原告)小林純子議員と議長は採決に加われないので数に入っていない。
(報告・横地泰英)